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神の子 ゴットエンド・フォーカス


「ゴットエンドっていう僕の名前は、直訳しちゃうと『神の終わり』なわけで…………正直笑っちゃうだろう? 一人を除いて誰にも知られぬよう隠し通した神教最強の懐刀。そこに付けた名前が自分を殺すものなんだからさ」


 黒と白。それに両者の中間色である灰色で埋め尽くされた世界。

 そこで起きた爆発もまたその三色だけで形成されていたのだが、その世界で唯一紫などの色を取り込んでいる青年ゴットエンド・フォーカスが、消えゆく光を見届けながら言葉を紡ぐ。


「ただ僕の名前が示している神っていうのは、どうやら彼女の事を指してはいないらしくてね、実は彼女とは別にこの世界には全知全能という言葉では足りないだけの力を持った存在がいて、僕の名前はそいつを倒すためのものらしい」


 その顔には穏やかな笑みが浮かんでおり、十手を持った右手を掲げこめかみの辺りを軽く掻く。


「その人物がどれほど強いのかはわからないが………………貴方ほどではないだろうと思っているんだがどう思う?」


 するとその動きに合わせたようにガーディアが現れ、振り抜かれた一撃はこれまでと同じく十手の先端に衝突。反撃が来るよりも早くガーディアは僅かにだが距離を取った。


「後学のために教えてもらってもいいかな先輩? 銀河に挟まれたら人は死ぬと思うんだが、どうやって生き延びたんだい?」


 つかず離れず。何かあればすぐに攻撃にも回避にも転じられる、まさしく『ガーディア・ガルフにとって最適な距離』が二人の間には広がっているのだが、その中に足を踏み入れていると理解してなお、ゴットエンド・フォーカスには余裕がある。

 自分は決して負けないという自信が見て取れる。


「スケールの大きさは認めるが単純すぎだ。『挟んでぶつける』とは言うが、銀河自体は個体じゃなくいくつもの星と光の集積体なんだ。あれでは『挟んだ』ではなく『一部が接触して爆発した』だ。もし対象を圧死させたいのなら、あの二つの巨大な銀河を固体化させるべきだろう」

「………………そんな事をせずとも普通なら二つの銀河の接触によって起きる爆発で死ぬと思うんだが…………まあいい。その点は後世に語り継がれている無駄な足の速さが活きたとでも思っておこう」


 対するガーディアの姿は彼らしくもない。

 本来ならば傷どころか砂埃一つ付着しないはずの風来坊染みた服は焦げ目だらけであり、それどころか衝撃の余波で無傷が常の肉体の至るところが軋んでいた。


「なんにせよ次は先ほどの改良点について注意しながら攻撃をしよう」


 その姿を目にしたゴットエンド・フォーカスが両腕を広げる。

 するとまたも彼方にある銀河を二つ引き寄せ、今度は二つの銀河全体を覆うように自身の粒子を広げていき、二つの銀河を巨大な塊へと変化。つい先ほどと同じく挟み込もうと動かし始め、


「私がそれを黙って見過ごすとでも?」


 至極当然ながら、それを阻止するためにガーディアが駆ける。

 己が肉体を万物を射抜く矢として、最短距離で蹴りをぶち込む。


「ちっ!」


 だが決まらない。

 両手が左右に広げられているゆえに最も邪魔な十手による防御はないが、代わりに彼の進行方向を正確に把握したように無数の開店する球体が置かれ、それを見極めたうえで動きを変えると、奇妙な事にその全てを見切ったかのように巨大な壁や柱などの障害が置かれていた。


「流石は先輩だ。僕の攻撃命令を無理やり止めるか。だけども届かないよ。残念だったね」


 そうしているうちに二つの銀河の制御をしているだけの余裕がゴットエンド・フォーカスからなくなり、代わりの攻撃手段として手にしていた二本の十手が参戦。

 知覚などできるはずのないガーディアの動きを完璧に見切ったかのように頭部に照準を合わせ、何の躊躇もなく溜めていたエネルギーを発射。

 それが鼻先を掠めたタイミングで、自身へと進んでいくエネルギー弾以上の速度でガーディアが後退。


「全ての攻撃が一撃必殺…………などという規模ではないな。小技程度の威力で星を壊すか」


 数キロほど離れたところで、自分の顔面へと向け打ち込まれていたエネルギー弾が星だろうと太陽だろうと吹き飛ばすような威力の砲撃であったことを知り彼にしては珍しく息を呑んだ。


「!」


 その直後、彼は気が付いた。

 制御下を失った二つの銀河のうちの一つ。自分を押しつぶすため頭上に浮かんでいた方が、勢いよく落下していると。


「………………ちっ!」


 射程から逃れるのではなく攻撃として利用するため、ゴットエンド・フォーカスまで瞬く間に距離を詰めるガーディア。

 彼の腕は十手や目に見えない壁を躱し、あと一歩のところまで距離を詰めるが、そのタイミングでゴットエンド・フォーカスを包み込む黄緑色の球形の守りが敷かれ、


「残念だったね先輩。この盾を砕く手間を考えたら一手どころか五手は足りないよ」


 己が敷いた半透明の守りの向こう側で、ゴットエンド・フォーカスはガーディアの抵抗を嘲笑う。


「いいことを教えてあげよう後輩」

「?」

「私相手に時間が足りないと豪語するなら、その程度ではまだまだ甘い」


 そんな神経を逆なでするような態度を目にしても、目前に巨大すぎる死が迫っているとしても、ガーディアの言葉に乱れはない。

 ゴットエンド・フォーカスが言葉を返すよりも遥かに早く球形の守りを服の袖から出した己が相棒。すなわち神器『白皇の牙』を形状変化させた巨大なスプーンで持ち上げると、勢いよく落下してくる銀河が存在する真上へ。


「自慢の盾と銀河。どちらの方が強いのか見ものだな」


 その際に発した彼の小さな呟きがゴットエンド・フォーカスの耳に届いたのかどうかまではわからない。

 しかしその瞬間ゴットエンド・フォーカスは余裕の表情をかき消し心底苛立った様子を顔に浮かべ、


「くだらない。その程度の小細工で『果て越え』である僕がどうにかなると思ったのか?」


 右掌で掴んでいた十手を脇に挟むと右腕を頭上に掲げ、右から左へと振り抜く。

 その際に打ち出した強烈なエネルギーの塊は目前に迫った銀河を真っ二つに切り裂き、銀河は『音』という概念では収まりきらないような音と、視界を覆い尽くすような閃光を発しながら爆発。そして消滅。


「ようやく隙を晒したな」


 その際に生じるはずの己に対する影響、これを事前に絶対勝利で『なかったこと』にしたガーディアが迫る。

 目標のがら空きの背へと向け手刀を伸ばし、こんな状況でも立ち塞がる十手を前に攻撃の軌道を変更。更に先へと進んだところで立ち塞がった高速回転する球体を前にしたところで足の裏から炎を噴射させること攻撃の軌道を再び変え、そのタイミングでゴットエンド・フォーカスの背中を守るように亀の甲羅にも似た障壁が展開する。


「甘いな」


 そんな厄介極まりない妨害を、けれどガーディアは予期していた。

 そして予期していたからこそ続く動きはスムーズで、神器『白皇の牙』の形を即座に変更。甲羅の盾を回り込むように切っ先は伸びていき、ゴットエンド・フォーカスの胴体を貫く。


「色々と小細工をやってくれたようだが」

「!」

「無駄だ。僕には決して届かない」


 そんな中、本当に刹那の瞬間。完璧なタイミング。

 すなわち服を貫き皮膚に触れたそのタイミングで、ゴットエンド・フォーカスは体を動かす。

 突き進む方向に合わせ体を百八十度回転させることで攻撃を奇跡的な方法で躱し、目を見開くガーディアの顔面に十手の先端部ではなく右手の人差し指を向け、銀河を貫いた砲撃を発射。


 それは紙一重のところで躱される結果に終わるが、


「君のその守りは一体なんだ? 単純な反射神経でもなければ、未来予知の類でもないようだろう」


 ここでガーディアは確信する。

 目の前の存在には未だ秘密があると。


 因果律に一個人で宇宙生成が可能なほどの粒子量。

 それ以外にもまだ、脅威があると。


「時間をかけ過ぎるのも良くないんだが、ほかならぬ先輩からの質問だ。答えよう。これは僕が因果律『絶対勝利』を使えるようになったうえで得た副次的なものなんだけどね」


 するとガーディアの問い掛けにゴットエンド・フォーカスは快く応じ、かと思えば懐から掌で握れる限界の量の硬貨を取り出し、足元に生成した木の板の上へ。


「これは………………」


 そこでガーディアは目にしたのだ。

 百個以上の硬化全てが表になっている様子を。


「何の捻りもなくいってしまえば『運がいい』ってだけなんだけどね、僕はこれをアニメや漫画を代表する『主人公補正』だと考えている」


 それは何度やっても同じように繰り返され、コイントスをすれば全てがゴットエンド・フォーカスが発言した通りの結果になる。


「主人公補正?」

「わかりやすく言えば、物事をどれだけ自分に都合よく進められるかということ。普通に考えればあり得ない奇跡のようなことを、さも当然のように起こせるかということだ」

「馬鹿な。そんなことが………………」

「信じられないかい。けれど事実だ。その証拠に僕は先輩の攻撃の十分の一も見えてない。だけど防げるんだ。『貴方の攻撃に僕が対応しているから』じゃない。『僕のなんでもない動きに、貴方が引き寄せられるている』ために」


 信じられない話である。しかし結果が嘘ではない事を示している。


 かつてウェルダが行った時のような驚異的な反射神経というわけではない。

 結果を先に知っている故の未来予知でもない。

 

 あらゆる出来事が自分有利に進んでいるからと言いきり、


「信じられないならそれでいい。そのまま死ぬだけだ」

「っ」

「楽しみたかったからね。これまではほとんど防御だけにしてたんだけど、そろそろ飽きた。古臭い旧世代代表には、ここで消えてもらおう」


 打ち出す。

 他の多くの者がしてきたようにガーディアへと向け砲撃を。


 違いがあるとすればその巨大な弾丸一つが惑星を易々と貫通させられる事であり、


「ほうら。捉えた」


 圧倒的、いや暴力的な幸運ないし主人公補正により、誰にもできなかったガーディアの捕捉をできてしまうという事である。



ここまでご閲覧いただきありがとうございます。

作者の宮田幸司です。


遅くなってしまいました。久々の長文更新です。


色々と隠されていたクソメガネことゴットエンド・フォーカスのスペック紹介も今回でほぼ終了。

次回で因果律の詳細を詰めていき、ようやくの反撃フェーズ。


劣勢続きの状況を覆すための反撃。というより本格的な戦闘となります。

かつてない規模の本戦部分。それをお楽しみください!


それではまた次回、ぜひごらんください!


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