未来都市『ガノ』 五頁目
「会合は明日の昼二時か」
「そこまでは問題ねぇんだが、一緒に書かれてる条件が少し引っかかるな。ノスウェル家当主を含んだ二人組、シリウスさんともう一人ってことか」
様々な事柄に繋がる大きな手掛かりを逃し落胆する一行は、けれどすぐに頭を切り替え、裏路地から出ると最寄りのカフェに移動。
今回の主題、すなわち最悪のタイミングで訪れたバークバク・G・ゼノンからの連絡にて、届いたメールの確認を全員が行う。
要約すればそれは、顔合わせはするものの二つの制限が課せられたもので、
まず第一に会合の日付は明日。開始時刻は十四時半。ここまでは何らおかしなところはない。
問題になる制限というのが、一つは大人数で会うのは性に合わないというもので、代表であるシリウスを含んだ二名と顔を合わせるということ。
もう一つが忙しいため、使える時間は三十分程度であるということであった。
「二人か。嫌な人数だな」
「……最適解が見えんな」
時間の方に関しては何とかしようがあった。前もって質問の内容を考えておき、シリウスによる『六大貴族』という権力による力押しをしながら進めるという案が取れるからだ。
だが人数の問題が如何せん彼らの頭を痛める。
「ルティスちゃんを連れてくか。けどそりゃ」
「……馬鹿正直すぎる」
「だよなぁ」
今回の件の主題。すなわち情報を仕入れるという面だけで言えば、答えはわかりきっている。
シリウスが固定な以上もう一人はルティスとなり、シリウスの問いに対する答えをルティスが読み取れはいいだけなのだ。
ただその場合、戦力という面で不安が残る。
シリウス・B・ノスウェルという男は優れた戦士ではあるが、一般人レベルの味方をかばったまま、何かあった時に戦うとなると、少々の不安が残る。
いやルティスの精神性を考えれば、その強さは一般以下で、荒事を想定すれば、この二人で動かしたくないというのが本音であった。
とはいえ康太やゼオスを連れて行った場合望んだ答えを把握できない可能性があり、それではそもそも会合を開いた意味がない。
「えっと、動画越しにバークバクさんの心を見るというのは?」
「あちらも来てるメンツはわかっているんだ。その程度のことは対策しているはずだ」
「……そもそも二人である意味が気になるな」
もう一つ、これはただの無謀か確かな自身かを測りかねるのだが、そもそもの話として二人というのもゼオスやシリウスは気にしているところである。
というのも相手からすればシリウスだけと話すのが最も楽なはずであり、ここにもう一人足す意味がないはずなのだ。
神器を持ってる康太とゼオスの来ていると、バークバク・G・ゼノンはわかっているはずだ。
このどちらかが側にいるだけで、強硬策というカードを切りにくくなるのは明白で、それを許す『二人』という数字を、彼らはとても不気味に思った。
「…………とりあえず予約を入れているホテルに行こうか。三人ともそれでいいね」
「うす」
「……承知した」
「もちろんです!」
結局のところ彼らはカフェで滞在していた一時間ほどのあいだで答えを出すことができず、予約を取っていた高層ホテルに移動。男性三名が泊まる一室に集まると続けて会議を行い夜へ。
「シリウスさん。確認をお願いしたい」
「あぁいいよ。どれどれ…………文章に関してまでは制限されてないから問題なしだ。写真に関してもこの程度なら問題ないだろう」
後に襲撃を受ける積達が受け取るメールを康太が送信。
その中には抱えている問題に関する相談も含めており、これ以上考えても答えは出ないということで、ルティスを隣の部屋に移動させ、その日はお開きとなった。
次の日の朝、積から問題に関する提案が行われる。
「これは『あり』なのかシリウスさん」
「前提条件さえクリアできればまぁ。いやしかし…………とんでもない力技だぞ」
「……なんにせよ、更に分かれる必要があるな。ルティス・D・ロータスには俺が護衛でつく。異論はないな」
「え、えぇ!? そうなるんですか? その、お手柔らかに…………」
その提案に対する四人の答えは一致していた。
『あまりにも力技が過ぎる』というものである。
ここまでご閲覧いただきありがとうございます。
作者の宮田幸司です。
本日少々少な目で申し訳ありません。気候の変更のせいか体調を崩し気味な影響です。
それはそうと今回の話のタイトル。未来都市『ガノ』は今回で終了。次回からは新しいタイトルになり彼らは会談に挑みます。
ここからは終盤戦。今回の話の大詰めです。ご期待ください!
それではまた次回、ぜひご覧ください!




