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ギルド『ウォーグレン』と『才能育成都市』 一頁目


「こちらがご依頼されていた宿です。お間違いはありませんか?」

「ああ。ありがとう」


 賑わいのある繁華街や学校周辺の案内を行われてからしばらく歩き、人通りの少ない郊外にまで足を運び少ししたところで、ここまで四人を案内したトリテレイアが目的地へ辿り着いたことを告げる。


『いらっしゃいませ。ご予約をいただいた原口積様御一行でございますね。ご用件がある際は、私にお話ください。また、宿泊を行うにあたり、一度施設内のルールに目をお通しください』

「見たところここのオーナー役のロボットか」

「こういうとこに手が伸びてるのはいいわね。知らない人が管理してる場所で眠るのって、なんだか緊張しちゃうのよね」

「そういう遠慮が必要ないからここを選んだ。夕食は冷蔵庫に入ってるはずだから、そっちも見ておいてくれ」


 そこに在ったのはレンガ造りのペンションで、積が礼を言ってすぐに中に入ってみれば、管理人の役割を担った黒猫の姿をした小さなロボットが受け付け台の上で四人を歓迎。


「いい部屋だな。当分はここを拠点にするんだっけ?」

「この場所から伸びる道が結構多くてな。他にも色々あって、この『才能育成都市』が一番都合がよかったんだ」


 木目調のフローリングの床の上を歩き、ヘルスが屋内にある机やソファーに何らかの仕掛けがないことを確認。同じタイミングで積が言われた通りに施設内のルールを読み始めたところで、蒼野と優が冷蔵庫に手を伸ばした。


「へぇ色々と用意されてるんだな」

「夕食の用意がいらないって楽だわ~」


 中に入っていたのは人数分より少し多めののライ麦食パンにビーフシチュー。付け合わせのポテトサラダに人参と玉ねぎのマリネ。それにジュースや牛乳、それにコーヒーの入った紙パックを確認。さらに足りない際に自由に作れるように用意された肉や野菜類、それに米やパンを確認すると、やってきたヘルスを加えた三人は満足げに頷いた。


「朝食の時間だけこっちで設定する必要があるみたいだな。何時ごろがいい?」

「八時くらいでいいんじゃないか?」

「そうね。いやぁ、それにしてもお風呂まで沸かされてて、後片付けも食器を出しておけば勝手にやってくれるのよね。なんていうか…………至れり尽くせりって感じがすごい!」

「普段の依頼の時は違うのかい?」

「ですね。日を跨ぐ依頼をするにしても、結構な頻度で戦場だったりするので。とりあえずゆっくりと休もう。主婦の人達の話は、聞くだけで結構疲れる」


 言いながら蒼野は体がよく沈むベージュのソファーに体を預け、優は小走りで自分用の部屋に入り寝巻やタオルを持つとお風呂へと移動。

 残る積とヘルスは蒼野と優から渡された情報を加え今日一日の成果を確認し始め、それが終わった頃に長風呂を終えた優が桃色のフワフワした寝巻に身を包みながら戻り、積とヘルスもひと段落した様子で息を吐く。


「情報共有の必要があると思うんだが、飯の後にするか?」

「そうしてもらうと助かるな。荒事に巻き込まれたせいでちと疲れててな。腹に飯を入れて風呂に入って、就寝前に共有しよう」

「そういえばなんか面倒ごとがあったみたいね。どうしたの?」

「それについては飯の時の話のタネだな。だからさっさと用意しようぜ」


 その様子を横目で見た蒼野がそう提案すると、鼻の頭を押さえ瞳を閉じていた積がそう返す。

 冷蔵庫の中に入っていた食事を机に並べ、シチューだけ温め直し食事を始めたところで、積はアラン=マクダラスとの一件について説明を行い始め、蒼野と優が目を白黒させる。


「ちょっと足りないな」

「ならサラダでも作る? 手伝うわよ」


 ただ食事の量は育ち盛りの積達にとっては少し足りなかったため、蒼野と優が食事を作り始め、積はヘルスと肩を並べながらくつろぎ始めるのだが、そのタイミングでポケットに入れていた端末が小刻みに揺れる。


「どした?」

「ゼオスと康太の二人からの定時連絡だな。そうか、もうそんな時間か」


 事前に調べた情報によれば、『才能育成都市』の空は外の景色と気温をそのまま洞窟内部に持ってきているとのことだ。雨や雪に関してもリアルタイムで反映し実際にそれらを降らせているらしいが、どこまで似つかわせてもやはり外と洞窟の中では空気が違う。

 それゆえ時間感覚が狂っていたことを積は零し、送られてきたメールを確認する。


「なんて?」

「…………今日のところは怪しい情報や手掛かりは見つけれなかったらしい。当主に対するアポを取ってる最中で、緊急の用事があればすぐに連絡するってことだ」

「情報なしか。残念だったな」

「初日からそこまでのことは望まねぇさ。ただそういう業務連絡とは別に……………………添付されてるファイルがあるな。話によるとシリウスさんが許可をもらって、外部に漏らさないことを条件に街の様子の撮影が許可されたらしい」


 その画像を見るために送られてきたファイルを積は解凍。


「蒼野!?」


 そのまま中身を覗こうと考えたところで優の悲鳴が突如彼の鼓膜を突き抜け、頬に生暖かいものが付着する。

 直後になにごとかと思い首を持ち上げれば、そこには悲鳴を上げながらも愛用の鎌を水属性粒子で作り上げている優の姿があり、隣には首をねじ切られ噴水のように血液を噴き上げながらも、既に『時間回帰』を自身に発動させ、自己再生を始めている蒼野の姿が。


「積!」


 勢いよく立ち上がろうと積であるが、それが成し得られるよりも早くヘルスは彼の体をお姫様抱っこの形で抱きかかえ部屋の隅へと瞬間移動をしているのではないかと思わせる速度で移動。

 一拍遅れて、先ほどまで二人が座っていたソファーのある空間一帯が歪み、捻じれながら圧縮し、バラバラに砕けた。


 視界に入らぬ位置からの不意の奇襲。

 それが此度の戦いの始まりであった。

ここまでご閲覧いただきありがとうございます

作者の宮田幸司です


蒼野達が宿泊する施設に関しての説明と不意打ちによる戦闘開始です。

ちょっと短くなってしまいましたが、ちょうど区切りがいいので今回はここまでで。

ペンションの中に関しては昔何かで泊まった際の記憶を朧げに思い出しただけなので、『所詮は創作か』程度の気持ちで見ていただければ幸いです。

次回からは『裏世界』に来てから初の本格的な戦い。

この場所に住む一端の実力者たちが、どのようなものかを示せたらと思います


それではまた次回、ぜひご覧ください!


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