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ヘルス・アラモードと『ギルド『ウォーグレン』 一頁目


 当然のことであるがヘルス・アラモードの実力に関して、五人は疑いを持つことはない。

 桃色の空の下で行われた、過去最大の決戦。

 すなわちあのウェルダとの戦いでの大立ち回りに関しては記憶に新しく、鮮明に残っていたからだ。

 ゆえに積の言う言葉にも納得を得られた。

 確かに彼ならば、ゼオスと康太の二人がかりでも未だ敵わない領域におり、短い付き合いながらも把握できた性格からして、間違いなく自分らの力になってくれるであろう。


「…………ヘルス・アラモードか」

「ふーん。ま、よろしく」

「あ、あれ? 歓迎されてない!?」


 その実力に反し、蒼野と優の反応は希薄だ。冷たいってもいい。

 康太とゼオスに関して言えば、三人を任したと言った上で、そそくさとその場から退席してしまったくらい淡泊である。


「ま、何はともあれよろしく頼むぜ」

「あ、ああ。がんばるよ!」


 最も普段通りの様子に近いのは他四人をまとめる積であり、短くため息を吐くと彼の側に寄り肩をポンと叩き、キャラバンは二日前に使用した入り口とは別の入り口。すなわち半壊して半世紀以上の時が経ったと思われる、人のいなくなった町の廃屋前まで移動。


「じゃあ俺が先に行って安全を確保するよ。三分……いや! 一分後に飛び込んできてくれ! それまでには邪魔なもんはなんとかして全部片づけておくよ!」


 力むヘルスの少々弱弱しい言葉を受け蒼野と優が頷くのを見ると、彼は落ち着きのない足取りで地下へと向け落下していった。


「積」

「……ん?」

「ヘルス……さんが同行で、本当によかったの?」

「力を借りたとしても表沙汰にできない背景に、シュバルツさんに比肩する個人としての武。それに温厚でこっちに協力的な性格を考えりゃ、これ以上ない適任だと思うが?」

「いやそうじゃなくて! だってあの人は!」


 そうして彼の姿が見えなくなったところで、優と蒼野が席に対し非難の声を上げるのだが、それは至極当然なことであろう。


 なぜなら彼は、五人にとって師であり上司でもある原口善を殺めたのだ。

 正確に言えば下手人は彼の内に秘める裏人格であり彼からしても望まぬ結果であったわけで、そもそも先に手を出したのは善なわけだが、そう簡単に割り切れられるような事柄ではない。


「んだよ。シュバルツさん達と戦う前あたりでは割り切れてたじゃねぇか」

「あ、あれは状況が状況だったからだ! こうやって冷静になって振り返る余裕が出来たら、話は違ってくる!」

「というか、その点ってアンタが一番気にするところじゃないの?」 


 昨日とは違う入り口。すなわち廃屋の奥にある人一人通れるサイズの穴を見下ろしながら、確信をもって告げる蒼野と優。それに対し積は反論はしない。


「……あの人にはあの人の事情があって、色々な事柄が深く絡んだ結果、最悪の結果が訪れた。それだけの事さ」

「「…………」」

「今問題なのは馬鹿兄貴の残した夢をかなえる事。そしてそれにはあいつの力が必要だった。だから使う。それだけだ。本当に……それだけの事なんだ」


 ただ少しの間を置いた末に出された結論は、蒼野や優よりも現実を直視しているもので、念じるように語られた内容を聞けば、蒼野と優がこれ以上口を挟むことはできなかった。


「一分経った。行くぞ」


 そしてこの話をこれ以上するつもりはないとでも言うように兄の遺品であるコートを羽織った積が先陣を切り目の前の穴に飛び込み、残る二人も一度だけため息を吐くとそれに続いた。


(それにだ)


 直後、自由落下に身を預けているタイミングで積が後ろの二人に対し念話を届け、二人の意識は落下しながらも大半はそちらへ。


(あの人は、俺達に贖罪をしたいって何度も思ってる様子だった。それを受け取らねぇのは、馬鹿兄貴の流儀じゃねぇ」


 続けて語られた内容を聞くと頷くことしかできず、彼らは腹を括った。

 ヘルス・アラモードという人物。それを今日ここで、見極めなければならないと。


「お、来た来た! 監視員は報告が行く前に気絶させたし、カメラ映像の細工もばっちりだ。これなら誰かに怪しまれることは絶対にないぞ!」


 斯くして彼らは降り立った。


 二度目の『裏世界』に。


 原口善を殺めた男と肩を並べる形で。


「ご苦労さん。じゃ、行くか」


 昨日と同じ、しっかりと舗装された町と町を繋ぐ通路で彼らを待っていたのは、警備員らしき黒服二人の意識を奪い、固い地面に寝かしつけていたヘルスであり、彼が親指を向けた先には監視カメラがあったのだが、そこには一枚の写真が貼られているようであった。

 それを見届けると積はあらゆるものが収納可能な革袋をまさぐり始め、蒼野と優もそれに続き、彼らは形は違えど同様の物を取り出すのだ。


 すなわち顔に被るための仮面に、体の輪郭をしっかりと隠せるだけの黒いローブを。


「まさか、俺たちの方から被ることになる日が来るなんてな」


 声に様々な過去を乗せて告げるのは積であり、蒼野と優。それにヘルスも同じように仮面を被ったのを確認すると歩き出す。

 目指すは『裏世界』でも有数の危険地帯。と同時に数多の情報が集まる地底有数の『情報の都』。


 彼らの新たな物語は、そこから始まるのだ。

 




ここまでご閲覧いただきありがとうございます

作者の宮田幸司です


二度目の『裏世界』突入開始。一緒に行くよヘルスの巻。

必要ないと思われるかもしれませんが、流石に今回の話がないと、蒼野達が血も涙もない気がしたので一話使用。

ちょっと短くなってしまいましたが区切りが良かったのでこの辺りで。

にしてもお面に関しては本当によく出るな、などと書いてる筆者自体が思ったりしています


あと、申し訳ないのですが21日翌日込みで少々予定が入っており、投稿できそうにありません。

ですので次回投稿は23日になると思うので、よろしくお願いいたします。


それではまた次回、ぜひご覧ください!

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