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ウルアーデ見聞録 少年少女、新世界日常記  作者: 宮田幸司
1章 ギルド『ウォーグレン』活動記録
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観測者、果てにある星を眺める 

ご閲覧いただきありがとうございます。

作者の宮田幸司というものです。


ぜひ楽しんでいってくださいね!


「どうして!」

「…………」

「どうしてなんだ――――!」


 花びらが舞い、多くの観客が当人たちに察せられることなく見守る中、二人の男が舞い踊る。

 互いに剣を手にした彼らは重厚な音を幾重にも響かせる中、その内の片方が自らの胸中を隠さず吐きだし続けた。


「お前言ってたじゃねぇか! ――――――――」

「…………」


 奇妙な事に二人の顔は全く同じもので、背格好や持っている武器の種類も同じものであった。

 その内の一人は必死に叫び、もう一人はただ黙ってそれに耳を傾けていた。


「――――――――」


 男の咆哮に対しもう一人の男が静かに答え、それを聞いたもう一人が顔を歪める。

 その答えを理解できないと、口にはせずともその表情が訴えかけていた。


「くそっ!」


 世界を照らす太陽がなければ、夜を象徴する月も出ていない。

 そんな空間で二人は花弁が降り積もった大地を強く踏み、剣劇を繰り広げるのだが、


「…………そこだ」

「ぐぅ!?」


 幾重にも撃ちだされた、数えるのも馬鹿らしい程の斬撃を全て捌き、寡黙な男が同じ顔をした男の振り下ろしきった剣を踏みつけ僅かにだが大地に沈め、自らの持つ漆黒の剣で目前の標的の体を横一文字に斬り裂く。


「コナクソ!」


 攻撃が届く刹那の瞬間、剣を足で固定された男は反撃に出る。

 彼は足を使って不意打ちされたとなれば、こちらもその礼を返さなければとでも言うように自身も相手の胴体を蹴り上げ、剣を掴む彼の体を吹き飛ばそうと画策。


「っ!」


 結果ほんの僅かにではあるが男の体は背後へと後退し、胴を割くはずだった一撃は胸を僅かに切りつけるだけの負傷に留まった。


「……諦めろ。お前では勝てん」

「っ!」


 だが僅かな隙を突いた男が悠然とした足取りで近づき、厳かな口調で片方がそう語ると、もう一人の男が彼を睨み持っている剣に風を纏う。


「風刃!」

「……まだやるのか」

「一閃!」


 諦められるわけがないだろう!


 暗にそう語るかのような勢いで言葉を発し、刃に溜めた風を不可視の斬撃として発射する。


「……炎上網」


 対する男もまた小さくそう呟き、手にする漆黒の剣で浅くだが地面を切る。

 すると剣が傷つけた切断面から奇妙な色の炎で作られた天まで伸びる壁が作られ、襲い掛かる風の刃をいとも容易く防ぎ、


「…………ふっ!」


 視界を奪ったほんの一瞬の間に、漆黒の剣を携えた男がもう一人の男の背後に周り刃を向ける。


「がぁ、らぁ!」

「……!」


 だが完全に不意を突かれそうになった男は咄嗟のところでそれに気が付き、剣を振っている暇がないと瞬時に判断すると丈夫な剣の柄で無理矢理はじき、その影響で顕わになった腹部にショルダータックルで襲い掛かり吹き飛ばす。


「…………」


 吹き飛ばされたきつい目元をした男が、口からこぼれた血を拭い、喉の奥に残っていた血の塊を吐き出す。


「――――」


 そして男が小さく何かを呟くと、彼の全身が炎に覆われる。


「っっっっ!?」


 纏う炎の激しさたるや恐ろしいもので、彼から百メートルは離れているというのに、対峙する男の全身が針に刺されたかのような襲われ、奪われかけた意識を保つために唇を噛む。


「はぁ!」


 そしてその男も目の前に立ちふさがる障害に負けじと全身に命令を出す。

 すると彼は全身にある穴という穴から風を溢れさせ、自分と同じ相手の顔をジロリと睨んだ。


「「…………」」


 多くの者が見守る中、両者がゆっくりと…………ゆっくりと歩き出す。

 が、今の二人の歩くという行為は歩くという行為の範疇に収まるものではない。

 一方は自身を中心に大量の風を生じさせ万物全てを吹き飛ばし飲みこむ天災と変貌しており、

 もう一方は全身に奇妙な色の獄炎を纏い、人外という言葉にふさわしい見た目で一歩ずつ歩いていた。


 そんな彼らが百メートル離れた位置から、一歩ずつゆっくりと近づいて行くのだ。

 その余波だけで見ている者達は思わず非難したくなるほどだ。


「離れるか?」

「いや見よう。この戦いだけは……見るべきじゃ」


 だが彼らは視線を外さず彼らを見る。

 この戦いが、どれほど重要な意味を持つかを知っていたゆえに。



「はぁ!!」


 そんな中、最初に動いたのは全身を炎で覆う男よりも広い攻撃範囲を持つ天災と化した男だ。

 彼は常人ではおよそ耐えきれないほどの量の風を剣に纏わせ、光速に及ぶ程の速度で振り下ろす。


「…………流石だ、躱しきれんとはな!」


 目で追う事はできた。斬撃の射線からも離れた。

 しかしその余波となる数多の斬撃だけで人外と化した男の服をやぶき、その奥に隠れていた皮膚までズタズタに破壊。


「ハァ!」


 だが暴威をその身に纏う男は一切油断せず、二撃目三撃目、いや百二百と数えきるのも馬鹿らしくなるほどの量の災厄を一個人へと向け注ぎ続けた。


「…………おぉぉぉぉぉ!」


 人間の領域を超えた、まさに人外の領域に到達した男はそれでもなお前へ進み、僅かに遅れながらも、必ず勝たなければならない相手に対する攻撃を開始。

 その威力はまさに埒外の領域。

 ただ一度の薙ぎ払いによって生じた炎は目前に迫った無数の刃全てを飲みこみ、それだけにはとどまらずその奥にいる天災と化した存在にまで伸びて行く。


「っ!」


 目の前に迫る脅威を前に、しかし彼は驚きはすれど焦りはせず、一歩の後退で百メートル以上の距離を取り、風属性の特徴である速度と身軽さを活かし、縦横無尽に駆けては対峙する存在を翻弄するように風の刃を連射。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「……おぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 そこから先は、全てを出し尽す、まさに死闘であった。

 風を纏い天災と化した男は彗星の如き勢いで縦横無尽に飛び回り、炎を身に纏った男を翻弄しながら斬撃を撃ち出し続けた。

 対する炎を身に纏った男はそれら全てを炎の斬撃で破壊し、自身も動き対峙する男を倒しきれるだけの隙を作ろうと躍起になる。


「!」

「……っ!」


 竜巻が、炎の海が、あらゆる被害が周囲に四散し、その中心部にいる両者の頬を掠める。


「時間回帰!」

「……時空門!」


 両者がほぼ同時に手にする切り札の名を唱えると、丸時計と黒い渦が現れ、二人の戦いを更に激化。

 観戦者から見れば僅か数分、しかし本人たちからすればこれまでの人生全てを走馬灯として思いださせるだけの時が過ぎ、両者ほぼ同時に纏っていた風と炎が消え去り、その奥にあった姿が顕わになる。


「はぁはぁッ!」

「…………ちぃ!」


 肩で息を行い、疲労からまっすぐに立つことすらできず、ただジロリと相手を覗きこむことしかできない両者は、


「「!」」


 しかし残された僅かな力を削り、再び全身に風と炎を纏う。

 そしてその自身に残った全てを両者ともに剣に纏い、


「―――・――――!」

「……――――!」


 観客たちが見守る中、互いが互いの名を呼び、大上段に構えた剣を振り下ろし―――


「「!」」


 二人の体をお互いが放った風と炎が吹き飛ばし、両者共に威力に耐えきれず、同時に虚空に吹き飛んだ。


「……あぁ……どうして」


 そうして決着の瞬間が刻一刻と近づく中、


「どうしてお前は――――」


 男はそう呟いた。


 これはこの世界において少しばかり未来の物語。

 とある少年が少女と出会ってから、ほんのちょっと未来の話。


 二人の男はその末に決して譲れない願いを胸に抱き、その願いを叶えるために戦いを繰り広げる。


 この物語は、その最中の物語。


 そして今から始まるのは、そこに辿り着くための物語だ。







ここまでご閲覧いただきありがとうございます。

作者の宮田幸司と申します。


まずは当作品を見ていただき、誠にありがとうございます。

このお話は私の描く物語がどのようなものかを知ってもらえればと思い書き足した、

いわば第0話となる話です。

こんな感じでバトル多めのファンタジーを日夜書いていますので、気になった方はぜひ見ていただければと思います。


少々ご案内をするならば、

9話までが最初の物語。

35話までがプロローグ部分となります。

一つの区切りにぜひ。


また、毎日投稿の毎回多少ながらあとがきを書ければと思うので、よろしくお願いします。


それと、もしよろしければ感想や評価・ブクマの方もよろしくお願いします。


それでは!




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― 新着の感想 ―
[良い点] 最初に結末を置いて、それに至る物語というのが分かりやすく尚かつ気になるような展開にもっていっていますね。 (自分も気になる) [一言] 読むの遅いから勘弁してね。 続きもちょくちょく読…
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