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社会見学は『悪役令嬢の館』 ~ ざまぁなんて無理ゲーですわ ~

作者: 葛城遊歩

 この世界にかつて現れた【悪役令嬢】たちの悪行を記録した『悪役令嬢の館』。

 【悪役令嬢】として、この世界に異世界転生を果たしたエリザベート・ルーシェス・フォン・オプトは何を思うのか!?

 1000文字以下縛りのため、サクサクと進めさせて頂きます。


「エリザベート、今日の社会見学は楽しみだね」


「ライアン様……!?」


「『悪役令嬢の館』の見学だよ。俺も王太子だし、興味があるのさ」


「では許婚の私が【悪役令嬢】という訳ですか?」


「そんな事は思っていないよ」


「はい、冗談ですわ」


 私こと侯爵令嬢のエリザベート・ルーシェス・フォン・オプトは、許婚でありエスティエン王国の王太子でもあるライアン・バーツェ・エスティエン様から学園行事について聞きました。


 実のところ私は異世界転生者であり、とある『乙女ゲーム』の悪役令嬢であった訳ですが……。


 【ヒロイン】役のレイチェル・バッハは、未だ町娘です。


 従って私も、未だ【悪役令嬢】ではないのです。




 そして私達は『悪役令嬢の館』に着きました。


「何だか魔女の館のようだな」


「ええ、そうですわね」


 噂の館は、陰気な場所にありました。


「おお! なんと凶悪な!!」


「瞳の吊り上がり具合が何とも……」


 『悪役令嬢の館』に入った場所には、【悪役令嬢】として最も名高いカトリーヌ・フィレ・フォン・メディティスの蝋人形が展示されています。


 豪奢な衣装に金髪を縦ロールにしたカトリーヌは、偉そうに踏ん反り返っていますわ。


「ライアン様、先へと進みましょう」


「うむ」


 館内は有名な場面を蝋人形で再現していたり、遺品が展示されていたりします。


 彼女たちが愛用していた(おおぎ)は、立派な物でした。


 その反面、彼女たちの悪行で、幾つの国が戦火に消えたとか、腐海に呑み込まれたとか……。


 彼女たち……、頑張り過ぎですわ。


 最後の展示は、処刑場面です。


 ある者は断頭台の露と消え、ある者は磔刑(たっけい)に処されています。


「奴等に相応しい最期じゃないか。エリザベートもそう思うだろう」


「……ええ」


 そして出口前には、各国が結んだ条約の資料が展示されています。


 つまり【悪役令嬢】と認定されると、超法規的手段によって処刑しても良いのです。


 シナリオ通りでは、私の身に待つのは破滅しかありません。




 『乙女ゲーム』を楽しむ予定でしたが、無理ゲーですわ。


 命あっての物種です。


 私は密かに暗殺者を雇い、レイチェルが【ヒロイン】として登場する以前に処分しました。


 勿論、許婚のライアン様との仲も良好ですわ。


お読み下さり、ありがとうございます。

以下は、文字数オーバーの初稿です。ご参考まで。


【初稿】

「エリザベート、今日の社会見学は楽しみだね」


「ライアン様、今日の社会見学と申しますと……!? 『王立歴史館』でしょうか?」


「そちらじゃなくて、『悪役令嬢の館』の方だよ。俺も王太子だし、興味があるというわけさ」


「それでは許婚のわたくしが【悪役令嬢】というわけですか?」


「そんなことは思っていないよ、エリザベート」


「はい、ライアン様。冗談ですわ」


 わたくしこと侯爵家令嬢のエリザベート・ルーシェス・フォン・オプトは、幼い頃からの許婚でありエスティエン王国の王太子殿下でいらっしゃるライアン・バーツェ・エスティエン様から学園の社会見学について聞かれました。


 実のところわたくしは異世界転生者であり、とある『乙女ゲーム』の悪役令嬢であったわけですが……。


 【ヒロイン】役のレイチェル・バッハは、未だ男爵家令嬢として見出される前なのでした。


 従ってわたくしも、実質的には【悪役令嬢】ではないのです。




 そしてわたくしたちは『悪役令嬢の館』にやって参りました。


「何だか魔女の館のようにおどろおどろしい資料館だな」


「ええ、そうですわね」


 噂の館は古びたレンガ建てで、ツタの生い茂る陰気な場所にありましたが、怖いものみたさか来客はそれなりにいました。


「おお! なんと凶悪な!!」


「瞳の吊り上がり具合が何とも……」


 『悪役令嬢の館』に入った最初の展示室には、【悪役令嬢】として最も名高いカトリーヌ・フィレ・フォン・メディティスの蝋人形が展示されておりました。


 豪奢な衣装に金髪を縦ロールにしたカトリーヌは、偉そうに踏ん反り返っておりました。


 あまりの威圧感にライアン様は、引き()っているようですわね。


「ライアン様、先へと進みましょう」


「うむ。それにしても行き成りだったのでインパクトが凄かった」


「カトリーヌは歴史上、最も有名な【悪役令嬢】ですから……」


 『悪役令嬢の館』では、有名な場面を蝋人形で再現していたり、彼女たちの遺品が展示されていたりしたのです。


 彼女たちが愛用していたという(おおぎ)は、立派なものでした。


 その反面、彼女たちの悪行のせいで、幾つの国が戦火に消えたとか、腐海に呑み込まれたとか、わたくしの想像を絶する内容が記載されておりました。


 彼女たち……頑張り過ぎですわ。


「奴等に相応しい最期じゃないか。エリザベートもそう思うだろう」


「……ええ」


 最後の展示コーナーは、『悪役令嬢』の処刑シーンを再現したものでした。


 ある者は断頭台の露と消え、ある者は磔刑(たっけい)に処されておりました。


 そして出口の所には、【悪役令嬢】の特殊災害によって各国が結んだ条約の資料が展示されておりました。


 つまり……、【悪役令嬢】と認定された者は、いかなる身分の者であろうと超法規的手段によって処刑しても良いのだそうです。


 シナリオ通りに、婚約破棄された後にざまぁしたとしても、【悪役令嬢】と認定されたが最後、わたくしの身に待つのは破滅しかないようでございました。




 結局、わたくしは【悪役令嬢】として『乙女ゲーム』を楽しむ予定でございましたが、これは無理ゲーというものでしょう。


 命あっての物種です。


 わたくしは、お小遣いを(はた)いて暗殺者を雇い、レイチェルが【ヒロイン】として登場する以前に処分したのでございます。


 勿論(もちろん)、許婚のライアン様との仲も良好ですわ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです。ありがとう
2019/09/07 10:29 退会済み
管理
[一言] 短編中の短編って短さですね~稲村某で御座います。 いや、ホント短い! いつも二千五百文字を目安に一本書いている(連載は)ので、その半分以下って……贅肉を削ぎ落として、更に削っての千文字なん…
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