マバタキ
それは、スマホを見ていたら突然始まった。
ー3ー ー2ー ー1ー 開始...
唐突すぎて俺は唖然とする。何が起こったのかわかったのは、まばたきしたときだ。
目の前にこの世のものとは思えないものがいる。なにかは分からないとにかくこの世のものではないものだ。これからはアレと呼ぶことにしよう
ここはエレベーターの中たった今23階に向かい始めたばかり。アレとの距離は身体一つ分、もう一度まばたきをするとアレは消えた。
一瞬何が起こったかわからずに慌てる。
またまばたきをしてしまった。
するとアレは突然現れた、明らかにさっきより距離を詰めて少しもう手を前に出すと触れそうな場所にいた。
俺は確信した、アレはまばたきをすると見えなくなってもう一度すると距離を近づけて見えるようになる。つまりあと二回まばたきをするとアレに捕まるということだ。
18階を過ぎた。時間にして1分、目が乾いてきた。まばたきをしたい。そういった本能に襲われる。
23階。ドアが開く。急いで降りた。ただ一つの失敗があった。それはついまばたきしてしまったことだ。
幸いアレは見えないが今アレがどこにいるかはわからない。もしかしたらエレベーターに取り残されて下に行ったかもしれない、そう思って目を瞑った。
開けると通路の端にアレはいた。
アレとの距離約3メートル、部屋までの距離18メートル。俺はゆっくり後ろに下がっていったアレと目を合わせながら。残り6メートルになったときまばたきしてしまった。アレが見えなくなる。
俺は部屋まで全速力で走りドアを閉めた。
スマホが急に鳴る、画面を見ると、
ー失敗ー
とだけ書いていた。
急に後ろから寒気がして尻もちをつき目を瞑る。
何かの気配が顔に近づく。
目を開けるとそこにはアレが居た。
叫ぶ暇もなく目の前が赤く染まった。