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たまには家に帰りましょう

 私は旅人。

 世界を歩くただの旅人。

 旅をした先で、であった人、見たもの、色んな事をメモしていく、ただの旅人。


 私は旅人とはいったものの、たまには家に帰ってゆっくりしたくなります。私も人ですからね。

 今まで書いたメモも、そろそろ家で整理したいですし、旅先のベットや野宿もいいものですが、自宅のふっかふかの布団も恋しくなるというものです。

 さてと、そうと決まれば、家に帰りましょう。そうしましょう……

 ところで、今、私の自宅はどの世界を旅しているのでしょうか?


―――――


 私は旅人の家。

 世界を渡り歩くただの家。

 旅をした先で私の家主を探すただの家。


 今日訪れたのは森の世界。少なくとも、家の周囲には人の姿は見えませんね。

 しかし、私の家主にも困った物です。旅人なので、旅をすることには文句はありませんが、たまには帰ってきて欲しいものなのですよ。

 何年も私は家主不在で存在しなければならず……それでは家ではなく、ただの建築物と言われても仕方がありません。とても寂しいものです。

 寂しすぎて、どうしようかと思うこと数か月。私は思いつきました。

 私も、旅をすればいいのです。旅をすれば、いつか旅をする家主の旅人に出会えるかもしれません。

 それから私は頑張りました。家として、できることは全部しました。

 色々な方のご協力もあり、ついに世界を渡り歩く不思議な家になることができました。

 それを一度だけ帰ってきた家主はとても喜んでくれましたね。家の気も知らないで、暢気なものです。

 私の中で過ごすこと数日、数日で家主はまた旅に出てしまいました。

 なので、私も旅に出ます。家主に追いつくために。

 しかしながら、世界は広く、そして多いものということを、その時の私は知りませんでした。

 結局、私が旅をしていたら、より一層私の家主と出会える可能性が低くなってしまったんでは? 

 と、頭の片隅で疑問に思いつつ、この世界から出ましょうか。はてさて、私が家主と再び出会えるのはいつになる事やら……


――――――


 今日やってきたのは森の世界。森しか無い世界ですが、木の実がとてもおいしいです。水も空気も澄んでいて、とても気分のいい世界です。

 と、森の中を散策していると……なんと、私の家があるではないですか。

 相手も私も旅をしているので、出会える可能性など無いかもしれないと半ばあきらめていましたが……

 良かったです。実に運が良かった。

 さて、家に入りましょうか。ただいまー。

 まあ、私は一人暮らしなので、お帰りなどとは言われないのですがね。

 さて、ふっかふかのベッドに飛び込みましょうか……



――――――


 私の家主が帰ってきました。ただいまーなんて、やはり暢気なものですね。

 私は後数秒でこの世界からおさらばする気でしたが、実に運が良かったです。

 さてさて、この暢気な家主にお帰りと言いましょうかね。

 まあ、私は家なので、人間の家主に声など聞こえないのですが……


 おかえりなさい。旅人さん。

 

 この後、4日間家主は私の中で過ごし、また旅に出かけました。

 私も、旅に出ましょうか。家主が、旅先で自宅に出会えるように。


 私は旅人の家。

 次に訪れる世界では、また旅人の家主に出会えるのでしょうか……

 



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