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灰かぶりに一目ぼれした王様

 私は旅人。

 世界を歩くただの旅人。

 旅をした先で、であった人、見たもの、色んな事をメモしていく、ただの旅人。


 今日立ち寄った王国では、もうすぐ、王子様の婚約者を決めるパーティがあるらしい。パーティは大好きだ。ご馳走が沢山食べられる。

 パーティが楽しみで、フンフンと鼻歌を歌いながら歩いていれば…ぶつかったのは、灰で髪の汚れた女性。どうやら、買い物帰りのようで、手には籠が…


「あ……す、すいません」


 ……っと、考察している場合ではありませんでした。

 すいません。良く前を見ていなかったので…


「いえ、それは私も同じです。では……」


 では……

 ふぅ、彼女、身なり汚なかったけど、綺麗にしたら、けっこう美しいかもしれないなぁ……なんて考えていると、目の前に現れた、マントとフードで顔や姿を隠した大柄な男。


「すまない、そなた、旅人とお見受けするが、少しいいだろうか……?」


 この時、私は思った。面倒事に巻き込まれないと良いけどなぁ…と。

 路地裏の酒場、この王国は治安がいいのか、こんな場所の酒場でも綺麗で、内装は整っていた。そこの椅子に座る、私と男。

 あの、何か御用でしょうか……?


「ああ、すまぬな。俺は、この国の国王をしている者だ」


はぁ、国王様……ですか。


「ふむ、驚かぬのだな」


いえいえ、現実味がないだけです。


「ふむ、確かにな。まあ、これからの話、俺がこの国の国王だということを前提に話を聞いてくれ」


は、はあ。わかりましたが、なぜ私に?


「そなたは旅人。国王がここにいるなどと、言いふらすようなことはしないだろう?それに、旅人なら、色んな事を見聞きしていると思ってな……」


まあ、国王様に聞かせられるようなことは少ないと思いますが…

では、話を聞かせてください。




 うむ。私はこの国の国王だ。妻もいれば、息子もいる。国は安定し、何一つ心配事などない…はずだった。


 だが、私の息子はもういい年なのだが、まだ妃を選んでいない……これは由々しき事態だ。


 あ奴に妃をとらせるために、今度のパーティを開くのだが……まあ、それは置いておこう。


 そんな心配を心に持ちながら、ある日、俺は町を練り歩いていた。そんな時だった。一人の、すすと灰で汚れた、一人の汚れた女性を見たのは……


 最初見た時は、ただ汚らしい娘だなと思ったのだが……不思議と、その顔が印象に残った。


 また別の日、街を練り歩いていたら、またその娘を見つけた。相変わらず汚れていたが、二度目に見て、その娘の美しさがわかった。汚れてなおあせぬ美しさ……


 もし、汚れを落とし、着飾ればどれだけ美しいだろう……!


 無性に、あの娘が欲しくなった。言っておくが、俺は妻を愛しているし、後宮をとろうという気はない。ただ、純粋に、彼女が欲しくなったのだ。


 だが、人さらいなどもってのほかだし、どうやって手に入れればいいのか悩んでいてな……そんな時、そなたを見つけたのだ。


 旅人よ、いい知恵は、無いだろうか……?



 はぁ。いい知恵……ですか。

 私のようなものが考えられるので、良い意見など少ないと思いますが……そうだ。


「なにか、思いついたか?」


 そうですね、何とかして、その灰をかぶった娘さんを、あなたの息子さんの王子様。その妃にさせればいいのです。


「あ奴の、妃に……?」


 そうです。まあ、方法は分かりませんが……


「いや、思いもつかなかったが、酔い案かもしれぬ。たしか、彼女の継母の性格は最悪だったはず。パーティに普通に誘っても来ない可能性が高い……なら、魔法使いを雇って、彼女に美しい服を与え、パーティに参加させれば、あ奴がよほど女嫌いでなければ……礼を言うぞ、旅人よ!良い案をくれたな」


 いえいえ。そこまですごいことはしていませんが……

 あ、そうだ、国王様。


「なにかね?」


 私にも、パーティに参加させていただけませんか?

 ご馳走、いっぱい食べたいので。



 こうして私は見事、パーティに参加できた。

 そう言えば、会場を沸かせた、美しいガラスの靴のお姫様が来たらしいが……

 ご馳走に夢中になっていた私は気にしなかった。

 ご馳走、美味しかったです。けぷ。



 私は旅人。次は、どんな人に出会えるのか……

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