お菓子の家の不思議な老婆
私は旅人。
世界を歩くただの旅人。
旅をした先で、であった人、見たもの、色んな事をメモしていく、ただの旅人。
今日私が立ち寄ったのは、甘いお菓子の香り漂う陰険な森の中。
なぜこんな暗い森に立ち寄ったか?私はが、甘いお菓子が大好きだからだ。
森に入る前に立ち寄った村で聞いた話では、この森は昔、子供が口減らしで捨てられていたといういわくつきの森らしいが…お菓子が私を呼んでいるのだ。気にしない。
だが、香りだけを頼りに歩いていたら、どうやら迷子になってしまったようだ。
右を見ても森、左を見ても森……下を見れば、パンくずがころがっていた。
どうやら、パンくずは森の奥まで続いているらしい。
まあ、何の目印もないし、これをたどっていこう。そうしよう。
そう思ってパンくずをたどって歩いていたら…だんだんと、強くなっていくお菓子の香り。
どうやら、私は当たりを引いたようだ。なんと、お菓子の家があるではないか。
屋根はチョコレートの瓦、壁はビスケットのブロックで出来ているようだ。
そして、その家の前では、飴細工のようなものでできた椅子に座った老人が……
「あらあら、珍しい。子供以外がこの家に来れるなんて……」
初めまして。私は旅人です。あなたは?
「あら、旅人さん。初めまして。私は魔女。このお菓子の家で、子供を待っている魔女です」
ほう、魔女さんですか。お菓子の甘い香りが漂う、良い家ですね。
「ふふ、そうでしょう?魔法できちんと処理してあるから、壊れたり、溶けたりしないの。まあ、あなたも座って、お菓子でもどう?」
いただきます。
魔女さんは非常にいい人だった。何もない所から、甘いお菓子を出してみせてくれた。そしてほろ苦いココアと共に、甘いバター菓子を食べさせてもらう。
「へぇ、森の外は、色んな事が起こっているのですね。私も、一回でいいから、旅をしてみたいわぁ」
なら、すればいいじゃないですか。もぐもぐ。
「ふふ、そうもいかないの。私は……お菓子の家の魔女だから…」
ごくん……もし、差し支えなければ、その理由、聞かせていただいても?
「そうねぇ……初めて、人に話すわね………」
昔々、この森に、口減らしのために捨てられた、一人の少女がいました。
少女はお腹が空いて…空いて…たまりませんでした。
一度でいいから、死ぬ前に……死ぬ前に、お菓子をおなか一杯食べたい!
そう強く願ったとき、一人の、悪魔が現れました。
その悪魔は言いました。
お菓子を、お腹いっぱい食べたいかい?
なら……お菓子の家を用意してあげよう。
ただし……そこに来た子供の魂を、俺に渡すこと。それが条件だ……いいね?
はい。
「そうして、私は悪魔と契約して、魔女になったの。子供を食べる、魔女に……」
そうですか……それは……
「でも、私は後悔していないわ。私は死にたくなかったし、この森に捨てられた子供に、最後に甘い夢を見せられるんですもの…本当は、餓死しなければならない子供に」
……なら、私も悪魔に?
「いえ、あなたの魂は悪魔には渡さないわ。だって……あなたは、子供じゃないでしょ?」
……はは、そうでした。
そして、しばらく私と魔女さんは語り合った。
彼女は、久々に人と長く話せたと、上機嫌に私と別れた。
籠一杯の、たくさんのバター菓子と一緒に……
そして、森を後にするときに、兄妹を連れた、夫婦に出会ったが……特に、気にしなかった。
私は旅人、次に出会う人は、どんな人だろうか……




