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進化の結果

「龍崎博士!研究データが整いました!」


白衣を身にまとった

若い研究員が老人に声をかけた


(ん?なんだ…?)


「よし!よくやった これであの計画に1歩近づくことができたぞ」


老人は歓喜を上げている


(誰の声だ…)


「あと、もう少しで完成しますね…」


(研究員か…?)


「ああ、わしの夢もついに叶う時が来たのだ!」



老人は高らかに宣言する





「プロジェクト:BLOOM BLUEの完成は近い!」




その景色はそこで終わった……




「う!?はぁ!!はぁ…はぁ…」


悪夢からの寝起きのように

勢いよく飛び起きた


しかし、開けた目に映ったのは

現実世界ではなく

ぼんやりとした空間


夢の中だった


(また ここか…)


「おはよう!よく眠れたかな?」


元気よく飛び込んでくるのは

悪魔の少女


呼び名を ()()()()()と言った


「眠れたも何も俺は今も眠ってるんだろ?」


正論で核心を突いていくも

目の前の幼い少女に言葉の意味が伝わるか

多少不安だった


しかし、夢の中で夢を見るのは不思議な体験だ


「そういえば、君はいくつなんだ?」


初めて出会った時からの疑問をぶつけてみた


「ちょっと〜!女の子に年齢を聞くってデリカシーないな〜!ぷんぷん!」


(現実世界でも同じ事言われたな…)


数時間前の記憶を辿ってみると

男に見える系女

長い黒髪を後ろでまとめている

杵島 凪咲が頭に浮かんだ


「んん〜誰?この人 かっこいい女性だね!」


「ん?誰のことだ?」


俺は少女が何を言ってるのか分からなかったため

質問した


「この人だよ〜君が()()()()()()()()()()!」


どうやら俺が考えていることは全て

お見通しらしい


「で?誰?」

と聞いてくるので

仲間だ と答えた


「ふ〜ん」


特に興味は無さそうだ


しかし、下手な事は考えられないな と思う


「あ!今私のこと可愛いって思ったでしょ!?」


思いついたように言い出し頬を赤く染めた


(可愛いけど俺の趣味じゃないな…)


冷静に考えてみると手を出した時点で犯罪な気がする


目の前の悪魔は少女だからだ


「んで?何歳なんだ?」


デリカシーを捨てて再び聞いた


「だから言わないってば〜!」


ぷんぷん と怒っている彼女の後ろから

やけに野太い声がする


「そいつは今年で8歳だ」


突如 空間が歪み暗闇から出てきたのは

体長10m程の大男


「ちょっと!?言わないでよ〜()()()()!!!」


「お父さん!?」


あまりの衝撃にうつつを抜かしてしまう


ふっーとため息を付いた少女は

紹介し始めた


えげつない内容を


「えっ〜と 私のお父さんで悪魔界の王様のサタン様です!!!」


「……………………」


あまりの衝撃に声が出ない


夢の中で語りかけてきて

何度も力をくれた悪魔の少女が

悪魔界の王様の娘


(とんでもないものが俺の中にいるんだな…)


改めて体内に宿る悪魔の存在を認識し

自分が怖くなった


「え〜紹介にあずかりました 悪魔界の王

サタンです 娘がいつもお世話になっております」


俺に恭しく頭を下げた悪魔界の王様


(訳わかんねぇ…)


「ところで 娘とどういう関係で?」


「「え?」」


急に小声で喋り始めたサタンに俺と少女は

垢抜けた声を出した


「だから…その…娘とはどういった関係なのかな…と」


急にもじもじし始めた大男が悪魔界の王である


「いや…特に何も…ただ俺の体内にいるってだけで…」


とりあえずありのままを述べた


「なに!?体力だと!?貴様 人の娘を安安と体内に納めおって!!!」


サタンがキレだした


というか人の娘…ではなく悪魔の娘なのだ


しかし、ツッコミを入れた瞬間 俺の死が確定するので黙っておくことにする


周りの空気が震え、背後から闇の魔獣が飛び出さんとする


(まずい…おい!何か言ってくれ!!)

とアイコンタクトで伝える


しかし、8歳の少女には伝わらなかった


「まーまーお父さん!私は今もこの人に

憑依して悪い怪物をやっつけてるから心配しないで!」


物凄いオーラを放つサタンに少女は近づき

足をポンポン と叩いた


「なに…そうか…娘と一緒に悪者退治を…

すまなかったな‥」


少女の言葉に反応したサタンは

オーラを鎮めて少女の頭を撫でる


人の夢の中に勝手に出てきて

誤解で闇のオーラを放ち

娘の言葉で怒りを鎮める


なんともはた迷惑な悪魔王だ

しかし、少女が止めなければ俺は

夢の中で死んでいただろう


(ん?夢の中で死んだらどうなるんだ?)


また疑問が増えた


「ごめんね〜お父さんが迷惑かけて〜」


悪魔の少女は申し訳なさそうに言った


聞いた年齢を本人ではなく

父が暴露してしまう形は

現実世界でさっき起きたばかりである

多少の境遇に差があるが

同じドラマの同じ話を2回連続で見たような

とてつもない無駄な時間を過ごした感がある


「ってか何で俺の夢の中に悪魔王が…?

もしかして悪魔王も俺の中に…?」



こんな恐ろしいものが体内にいるのか…と

少々焦りを覚えた


もう悪魔の少女の力は使わない

使えないだろう


と思っていたが…


「いや ワシは悪魔界を束ねなければいけない立場

いちいち君の中に宿ってはおれんよ」


と言う


その言葉で俺は一息ついた


「でも、なんで君の中に来たのか

それだけは言っておこう」


「ワシは悪魔界の王として君に言わなければいけないことがある」


神妙な口調で語り始めた


「近々 君に()()()()()が現れる 」


ただならぬ口調で話すサタンに

8歳のやんちゃ少女すらも黙って聞き入った


()()()()()って…何ですか?」


生唾をゴクリと飲み込み話を聞く


「君の体は少々まずいことになっている

その影響が今後()()()()()で現れる しかし、ワシもどうなるかまでは分からない」


「どうなるか分からない…って!?

どうすればいいんですか!?

死ぬんですか!?俺!?」


悪魔王からの直々の言葉に

俺は慌てふためいた


「死…か…それで済めばいいがな…」


悪魔王はさらに神妙に話す



「死よりも上があるの〜?」


悪魔の少女はのんびりと自らの父親に問う


「最悪の場合…君は()()()()()()


「は?…」


何を言っているか理解できない という表情の俺に

サタンは話を続ける


「君は今 新しい力を手に入れようとしているね?」


サタンが言っているのは恐らく

進化の儀の事だ


「はい…注射器を渡されて今進化途中です…」


急に夢の中に来てしまったため結果が分からない


進化は必ず成功するものでは無いのだ


「そうか…できれば進化をやめて欲しい

君は危険因子(デスピオン)だからな」


「ですぴおん?」


聞き慣れぬ言葉を少女が繰り返した


「そう…代々悪魔界に伝わる伝説でな…

大昔その危険因子(デスピオン)

世界を壊した 地球も我らの悪魔界も…天使の世界も

堕天使の世界も 龍の世界も…

全てを破壊した 塵も残さずね…」


「そ、そんな恐ろしいのが俺に…?」


悪魔王は静かに頷いた


……………


しばしの沈黙と重い空気が流れる


1番口を開いたのは少女だった


「なんでそんなことがわかるのー?

皆壊されちゃったんでしょー?」


確かにそうだ


全てが塵にもならなかった

ということは伝説が残ることもないだろう


その答えを悪魔王は知っていた


「それは…新しく世界を()()()者がいるんだよ…」


「その者の名は…」


続く言葉を今か今かと待ち構える


「すまん…忘れたわ…」


「「ふぇ?」」


ここまで来て言わない悪魔王がかつて居ただろうか


肝心な所を忘れる悪魔界の王様は…


悪魔の娘が俺の気持ちを代弁してくれた


「お父さん!!大事な所忘れないでよ〜

思い出せないの!?もう〜」


ぷんぷん!と怒っている娘に対して

すまん と頭を下げるサタン


傍から見れば本当に仲が良い親子だ


怒らせると何が起こるか分からないが…



「すまんかったな少年!

思い出したらまた君を呼ぼう!それと…」


と言ってサタンは漆黒のペンダントを渡してきた


「これは力を増大させると共に

暴走を止める効果がある

進化ができない分これで強くなってくれ

恐らくあの注射器の効果よりも強くなるはずだ」


そんな便利なものがあったのか


俺は両手で受け取った


「あと、そのペンダントは

さっき言った()()()()()を良い方向へ持って行ってくれるはずだ

まぁ肌身離さず持っているといい」


そう言って俺と悪魔の娘に別れを告げると

空間を歪ませ帰っていった



「…ごめんね…お父さんが…迷惑だった?」


いや 全然 と言いつつも俺の身体の震えは

止まらない


「私も帰るね…じゃあまた バイバイ!」


急に呼び出しておいて勝手に帰るとは

悪魔も気楽なもんだな と思った


俺はペンダントを握りしめた途端

目が覚めた





「俺…また寝てたのか…」


理事長室の天井を見上げながら呟いた


「あ、龍崎君 起きたんだね それで進化できた?」


理事長室のソファでコーヒーを飲んでいた杵島が

カップを置いて言った


その正面に茜 河村

Drマキシは自らの机でコーヒーを飲んでいた


「進化…?」


寝起きだから意識がはっきりとしない


「もう〜寝たら忘れちゃうの?

血武器(デッド)出して!」


やけに急かしてくる杵島に

多少戸惑いつつも武器を生成する


滾る血の解放(デッドブレイク)!」


腕から血が滴る


「え!?!?」


カシャンッとコーヒーカップを落とした

杵島が驚いた


「こ、これは…!」


「どうしたんだよ!?それ!」


「何その武器…!?」


Drマキシに続いて河村 茜が声を上げた


視線は俺の武器 〈大剣 ジークフリート〉に集まっているようだ


「どうしたんだよ 皆して…」


何事もなかったかのように大剣を持ち上げる


「なっ…なんじゃこりゃぁぁぁ!!!」


俺の握っていた大剣はいつの間にか

()()()()()()()()

元は血の色である赤であった


「あれ?お父さん…進化したら武器が黒くなることってあるの?」


恐る恐る杵島がDrマキシに問う


「い、いや…そんなことは120%有り得ないんだが…」


Drマキシは信じられないものを見た

という顔をしている


何があったの?と茜が聞くも

俺は知らない も答えた


しかし、心当たりはある


悪魔王から貰ったペンダントだ


ペンダントのおかげで進化したのだ


それを言っても信じてもらえそうにないので

あえて言わないことにした


「しかし…それ強そうだな!試しに一振りしてくれよ!」


興味津々と言った顔で河村が言う


俺は わかりました と答え

剣を構える


上から下へ一直線

地面に垂直に()()()


大剣からはどす黒い斬撃波が現れ、

理事長室の壁を完全に切り裂き、

斬撃波は学校の外へと流れた


……………


あまりの衝撃に俺を含めた全員が

言葉を失った


「えっと…ここまで強化されるの?お父さん?」


杵島は驚きで顔が歪んでいる


「と、とんでもない進化をしたね!

龍崎君! 嬉しく思うよ!だが…」


Drマキシは褒めつつも怒りが顔を変えた



「修理代は払ってもらうよ!!!!」


Drマキシの声は高校内に響いた


「あ…すいません…まぁ強くなったんでチャラで…」


「そんなわけないだろう!!!」


「ですよねー」


とりあえず謝罪をした


「でも…お金払えるの?

この高校の壁を切り裂いたんだよー?

高いじゃないかなー?」


杵島はのんびりとした口調で聞く


「どうしましょ…何円ぐらいですかね…?」


と聞くと河村が答えた


「100万ぐらいじゃね?壁修理は」


「まじかよ…」


落胆する俺に杵島が言う


「まぁ僕ならこれぐらい直せるけどね〜」


神の言葉を使う杵島には朝飯前のようだ


「よ、よろしくお願いします!」


いいよ〜と答える杵島は人差し指を立てて言った


「その変わり…明日僕達で遊びに行こうよ!

いいよね?お父さん 明日も休みだし!」


「ああ、構わんが…」



この前の朝からの怪物襲来で

学校は3日ほど休みとなっている


「遊びってどこへ…?」


茜が聞いた


「遊園地…かな!」


杵島はワクワクと浮き足立っている


「まぁ遊園地行くだけで壁を直して貰えるなら…いいですよ…」


壁を修理してもらう手前 断ることはできない



「決定だね…じゃあ壁を修理しましょー」


杵島は俺が切り裂いた壁の前まで移動し

神の言葉を唱え始めた


「曰く 壁を創造せよ…」


杵島が触れた壁は段々と形を整え

ほんの十数秒で完全に元通りとなった


「す、すげえ‥」


「すごい…」


俺達は息を飲んだ


「よし!これで終わり!

さぁてと帰って明日の準備しなきゃね!」


余程楽しみなのだろう

今から明日の持ち物をメモに書き出している


「あんまりはしゃぐなよ…」

と呆れたDrマキシが言う


「大丈夫だってお父さん!」


「楽しそうだな‥杵島さん」



河村が言った


わいわいきゃっきゃっと騒ぎ立てている理事長室の扉をノックする音が聞こえた


入ってよろしい とDrマキシが言うと

扉が開いた


そこに居たのは


神の言葉と蒼大剣を使う


俺の中学生の時からの友達


香織が立っていた



「ん…うるさい…」


目を擦りながら香織は言った


















次回 新しい超越人(ネイチャー)が登場!


お楽しみに!


2017年 ありがとうございました!

2018年も更新していくので

よろしくお願いします!











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