ハメツノセカイ
俺は何だ?
あの時…悪魔に魂を売った…
でも 何も代償がないのは変だ
代償が欲しいわけじゃない
でも自分の中で納得がいっていない
あんなに簡単に力が手に入る訳がないことを
俺は知っている
「私は君たちのような優秀なネイチャーが入ってきてくれたことを大変嬉しく思っているよ」
マキシマムの総督 Drマキシが言う
「皆の者よ!!!よく聞け!!!
滾る血の解放 を発動すれば
血武器を出現できる
君達の力を私に見せてくれ!!!」
広い開けた場所に集められた俺達は
武器を作り出す
先日 怪物が街を襲ったこともあってか
2.3日学校は休みとなった
改めて学校の寛大な処置にありがたみを感じる俺
目に見えるもの
目に見えないもの
姿が変わるもの
様々な能力を持つ者が100人集められた
今から始まるのは
より優れたの能力を持つ超越人を
選び新たな力を授ける儀式だ
しかし、力を受けられるのは5人だけ
この場には100人いる
何が行われるのか
それはDrマキシの口から述べられた
「今からこの場に味方はいない!!!!
全員が敵だ!!!
力が欲しいなら蹴落とせ!」
そう バトルロワイヤルだ
「龍崎君 木下ちゃん 河村君 提案があるんだけど…」
各自武器を作り出しているさなか
杵島が話しかけてくる
「何ですか?」
一番に武器の生成を終了した茜が聞く
「僕達でチームを組まないか?
バラバラで闘うより効率的だろ?それに…」
杵島は声の音量を下げ、言葉を紡ぐ
「望みし者の人員強化をしたいんだよ」
河村は人員強化は何なのか と聞く
「この前のことを覚えているかい?」
杵島が言うこの前のことというのは俺達が香織を取り戻し
破壊集団の存在を知った日のことだ
「僕達はやがて破壊集団と闘わなければいけない その時 力がないと闘えない」
「でも、杵島さん その…」
茜が言いづらそうに質問する
「なんだい?」
「正直 私達が強くならなくても
杵島さんが私達の力を解放してくれればいいんじゃないですか?」
力を解放
それもあの日のことだ
詳しい事は分からない
しかし、杵島の言葉によって
河村 茜が力を解放したのは事実だ
だから 別に自分達が強くなる必要はない
と訴える
「まぁ…そうだね…でもあれは本来ならば許されていないんだよ…特に君達はね…」
どういう事だ という質問は俺よりも河村が早かった
「君達の血武器は特別製なんだよ
僕がちょっといじったからね」
「いじった…!?」
河村 茜はその言葉に反応するも俺は
違う方に反応した
「えっと…杵島さんって女性なんですよね?」
俺と河村は先日初めて謎に包まれた人物
杵島 凪咲という人間の片鱗を見た
というかまぁまぁの付き合いなのに
性別すら分からなかった俺と河村の見る目のなさに
内心悲しくなってくる
「あはははっ女性だからって 僕 はダメかい?」
杵島は笑いながら答える
「い、いえ…つい同性だと勘違いしてしまうので…」
俺は畏まった様子で言う
「ん〜君はそういう趣味なの?」
「違います」
「え〜別に気にする必要ないのに〜」
即答した俺に 残念 と言わんばかりに
肘で俺の脇腹をつついてくる
「話を戻しましょう!
いじったとは
どういう事か説明してもらいましょう」
しびれを切らした河村が言う
「おお、そうだった!」
杵島は手のひらに握り拳を打ち 振り返る
「君達の血武器は上位血武器と呼ばれるものでね…他の武器よりも強い
ただし…」
「「ただし…?」」
俺 河村 茜がハモる
「なんていうか…龍崎君のは何故だか分からないけどいじれなかった」
杵島は俯きながら言う
「へ?いじれなかった…て?
もしかして俺だけ普通の武器!?」
急に劣等感を感じた
河村と茜に
「普通…?普通かお前? 悪魔に魂売って強くなったろ?」
河村が腰に手を当て言う
「そう…普通の人間は悪魔に魂を売るなんて天と地がひっくり返っても出来ないだろうね…」
「へ?そうなのか?出来ると思うけどなー」
俺は当然のように言う
「茜ちゃん ロードが去り際に言ったことを覚えているかい?」
杵島は突然茜に話を振る
「う〜んと それを解放されたら…何たらかんたら」
うろ覚えのようで最後はお決まりの言葉になっている
「そうだね!解放したらダメなんだよ龍崎君のは」
意味深な口調で言う杵島に多少の腹立ちが
次の俺の言葉に上乗せされる
「ダメって!?なんで!?」
俺は焦燥感と共に言う
「君…何やら良くない血が混じっているよね?」
は?という聞き返すための言葉は
Drマキシの叫びによってもみ消される
「さぁ!!我が作りし超越人達よ!!!力を手にするため 闘え!!!
命を捨てようとも!!!」
「始まったね…とりあえず4人で動くよ!」
「あの…血の話…」
俺の頭の中は混乱している
「もう闘いは始まってるよ!
その話は後で!」
杵島はそう促し、唱える
神の言葉を
「曰く 我らに加護あれ」
俺 茜 河村 杵島の体は白い光に包まれる
「これは…」
「あの時のものだよ♪でも調子乗ってわざと攻撃当たりにいかないでよ?」
杵島は少しおどけた表情で言う
「さてと…やるか!!!」
武器を作り出していなかった俺は
言葉を…
「滾る血の解放!!!」
体が紅潮し 血が吹き出る
「続いて…血浴!!!」
血の消費量を増加させる
「行くぜぇ!!!」
俺は剣を構え駆け出す
「ちょ、ちょっと龍崎君!!!」
「あんまり飛ばすんじゃねえよ!!!」
茜と河村は紅くなった俺の身体を見て
身を案じる
「へへへ…大丈夫だって…
こんなヤツら
けちょんけちょんに…」
「龍崎君!!!前!!!前!!!」
杵島は指を指しながら大声で言う
「ん?前?」
俺が視線を前に移すと
拳を構えた一人の男が
ピースの一員だった
「なんだ?まだ武器作ってなかったのか
悪いなおっさん!!!倒されてもらうぜ!!!」
俺は剣を目の前の男に向かって振るう
勢い良く振られた剣は空を斬った
「あれ?」
辺りに男の姿はない
「馬鹿野郎!!!上だ!!!!」
河村が叫ぶ
「上?」
俺は見上げた
「何も見えな…うん?」
よく見ると男が空を飛んでいた
「すっげえ!!!空を飛ぶ能力か!!!」
俺が感心していると杵島が呆れながら言う
「いや…あれが超越人の一般的な能力だよ…」
「一般的…空を飛ぶのが?」
俺は確認する
杵島は再び呆れ顔で答える
「超越人の血武器は基本 身体能力を大幅強化する だよ?逆に武器を作り出したり変身したりする方が珍しいんだから」
「へぇーそうなのか!!!!」
再び感銘受ける
「なるほど…いじった
って言うのはこういう事ですか?」
河村が聞く
「なるほど…凄いですね…」
茜も納得している
が俺は何が何だかさっぱり分かっていない
「な、何が…?」
「まだ分かんねえのか?杵島さんは俺達が
形ある武器を作れるように俺達の体に細工したってこった」
杵島に釣られたのか河村も呆れ顔で言う
「どうやったかは知らんがな」
河村は杵島を睨みつける
「あはは…そこは企業秘密ということで…」
杵島は胸の前で手の平と手の平をパンっと合わせる
「まぁ力をくれたことは感謝してる…
この 魂魄刀もな!!!」
河村は手にした刀を思い切り振る
起こした斬撃波は飛んでいた男の体を真っ二つに
切り裂いた
「あらら…ピースのメンバー斬っちゃった?」
「あ、忘れてた…」
河村は目を点にして言う
「まぁいいよ このバトルに勝てば強くなるんだし」
このバトルロワイヤルは敵を殺す 又は行動不能にすれば勝ちとなる
「よしっ!!!この調子で行こうぜ!!!」
俺は拳を握り皆に言う
「お前がやったんじゃないだろ」
「龍崎君がやったんじゃないよね」
「君がやったんじゃないよね…」
「うっ…!!」
3人の言葉は俺の心を貫いた
「あの刀を使う少年は良い腕をしている」
バトルロワイヤルを見下ろしているDrマキシは
そう呟く
「誰だ?あれは」
「河村 晴人です 高校3年生です」
Drマキシの側近が答える
「そうか…何故か杵島とつるんどるがまぁそれはいいだろう」
「…………」
Drマキシの側近
これもまた望みし者の一員だ
「まぁとにかくこのバトルロワイヤルを楽しもうじゃないか!!!」
ガハハッッ!!と笑うマキシに側近の男も答える
「ええ…そうですね…」
一方その頃…
保健室で目覚めた香織はゆっくりと体を起こした
「ここは…?」
彼女の記憶にかつての友人
龍崎 柊真の姿はない
あるのは破壊集団によって
自らの血管に
この世のものでは無い生物の血を入れた記憶だけ……
「ああ…また私は…」
少女は小さく呟きもう一度保健室のベッドに
身を委ねる
「ベッド…きもちいい…」
彼女の意識は既に夢の国
「グラビティライフル!!!」
重力を歪まる弾が超越人の男に向けて放たれる
弾は無惨にも胸を貫いた
「よしっ良くやったよ茜ちゃん」
杵島は笑みを浮かべながら茜を見る
茜の顔は青ざめていた
恐らく人を殺した己の行動に恐怖を感じているのだろう
「気持ちは分かるけど…強くなるためには必要なことだよ?」
「私は…やっぱり人を殺すのは無理です…」
彼女は酷く汗をかいている
俺は彼女に近づき優しく告げる
「向いてないことを無理にやる必要はないな
木下先輩は敵の牽制をお願いできますか?
辛かったら無理強いはしませんが…
「へぇーお前ってフォローできんのなー」
河村が若干の皮肉を交えつつ言う
「やかましい!…です…で、どうします?」
俺は茜に問う
「うん…そうさせてもらうわ…
怪物相手だと余裕なのに
人相手となるとね…
ありがと 龍崎君」
感謝の意を述べる彼女の表情は
少し和らいでいた
「心配はいいけど…龍崎君も活躍してよね!」
茜は急に俺に指を指して言う
「なんだよ!?俺だって…」
活躍してしてるぞ!という言葉は
杵島の言葉によって言えなくなる
「龍崎君だけだよ〜?まだ一人も倒していないの」
再び突き刺さった
このバトルロワイヤルの会場は
学校の体育館並の大きさだが100人しかいないので
割と広く感じる
俺達が談話をしている間にも段々と人数が減らされ、
残りは半分程度となった所で杵島が声をかけた
俺達は団体で行動し
杵島 10人
河村5人
茜 4人 (殺しなし)
俺 8人
を行動不能にしていた
「よしっ! ここからは全力で行くよ!」
「はいっ!」「よっしゃぁぁ!!!」
「「血浴!!!」」
俺 河村 茜の体はみるみるうちに紅潮していく
「あれ?杵島さんは血浴しないんすか?」
4人のうち3人は体から蒸気が出ている
ただし1人…杵島の体は何も起こっていない
見かねた河村が聞いた
「まあね〜僕はまだいいよ〜血浴って疲れるしね〜」
戦闘中に何言ってるんだ と思いつつも
杵島の圧倒的な力を見れば
血浴を使わなくとも
この闘いに勝つことはできるだろう
「俺も力が欲しい〜」
「お前 もう強いだろ」
俺の独り言に対し河村が鋭いツッコミを入れる
「いや 龍崎君はまだまだだね〜
河村君ももうちょっとなんだけどな〜」
その会話を聞いていた杵島が割入ってくる
「ぐっ…!!自負してても改めて言われると
悲しいな…」
「特に自分の評価より低かった場合はキツいな…」
俺も河村もピースの中ではそこそこの強さをもってるのだが杵島に言われると言い返せない
「まぁ…この闘いに勝てば強くなるんだし!
2人とも 頑張ろうよ!」
茜は明るく言った
「そうだね〜まずは勝つことだね」
杵島も頷く
「バトルも佳境に近づいている
張り切って行くぞ!」
杵島はリーダーらしく掛け声をかける
「あんた…本当に女なんだな…」
俺はやっぱり…という表情で言う
「女だよ♪ でも…」
続く言葉は河村によって消された
「敵だ!!!5人がこっちに来るぞ!!」
河村は刀を構えて言う
「魂破壊!!!」
刀から淡い青の炎が現れ
3人の敵の前で爆ぜた
「よっし 3人 行動不能!!!」
「やったね!河村君!」
ガッツポーズを組む河村に賞賛を与える杵島
しかし、まだ2人残っている
その2人は計20人を行動不能にしてきた実力者だ
ついでに杵島とも面識があるようだ
「よっ!凪咲!なんかガキ連れてるけど
勝つ気あんのか?」
2人男のうち1人が杵島に声をかけた
「ガキだけど…君達よりは強いよ♪」
杵島は笑顔で答える
「特にこの龍崎君はね!」
急な無茶ぶりだ
「え、えええ!?困りますよ!?」
慌てふためく俺に男二人が言う
「ほぉいっちょやるか!ガキ!!!」
ちょっと待ってよぉおおおおおおおお!!!
俺の声は半径10mには響いたであろう
「行くぞガキ!!!血浴!!!」
男1人がブーストを発動
もう1人はデッドブレイクで武器を生成
「今だよ!龍崎君 2人とも隙が出来てる!」
杵島は俺に耳打ちした
「よっしゃぁぁ!!!じゃあ行くぜ!!」
俺は剣を構えて唱える
「悪魔!!俺の血を売ってやる!!!!
力を寄越せ!!!」
俺の体は漆黒に染まった
「あちゃちゃ…それ使っちゃう?」
杵島は呆れ顔で言う
「全開だぜ!!!!」
俺は男に飛び込む
3歩手前で止まり大剣を振るうも避けられてしまう
「よっと…何だ?その力は?」
危機一髪で躱したように見えるが実際は
リーチを確かめていた というところだろう
かなりの余裕が見える
「まじかー当たんねぇの?あれ」
今までは一撃で大概を仕留めていたため
躱されるとは思っていなかった
「あれが当たるのは素人だけだよ〜」
杵島はのんびりと言う
「ならこれはどうだ!?」
5歩程度下がり、大剣を地面と平行に薙ぎ払う
「漆黒波!!!」
刃先から黒い衝撃波が放たれる
それは男にヒットする直前で消えた
その能力は俺達が前見たものだった
「吸収か!!!」
「おお!知ってるのか!」
俺の衝撃波を吸収した男が言う
「知ってるぞ!それで、力を強くして
返すんだろ?」
「残念 俺には返すという力はない」
男は残念そうに言う
「その力をもってるのは…こいつだ!」
男は飛び退き 後ろにはもう1人の男がいた
「こいつを…喰らいな!!!」
男の手からは いわゆるレーザーが放たれる
それも俺の衝撃波と同じ漆黒色だった
あまりの不意打ちに俺は避けることができず
まともに喰らってしまう
「俺はこいつが吸収した力を使うことができるんだよ
能力は…」
「放射だな?」
煙が上がる中答えたのは漆黒の大剣をもつ男
龍崎だった
「こいつ…効いてないだと!?」
仕留めたつもりの男2人は驚嘆の表情で俺を見る
「残念…元は誰の攻撃だ?」
「そうか!元々龍崎君の力だから
効果がなかったのか!」
茜は考えが至ったようだ
「なるほどぉ〜」
杵島は理解していない
「そういうこった!!!
じゃあなおっさん♪」
俺は瞬時に懐に潜り込み2人を直接切りつける
死なない程度に
「よっしゃぁぁ!!!2人撃破!!!
がふっ!!!」
俺は大剣を投げ出すとともに血を吐いた
「龍崎君!?」「おい!龍崎!?」
「いや…大丈夫だ…」と手で制止するも
周りから見ればただならぬ様子らしい
「まずいね…後20人残っているよ…
この様子だと龍崎君は闘えそうにないね…」
杵島は残念そうに俺を見る
「ちょっと待ってください!
俺はまだ闘えま…」
体を動かしまだ闘えるアピールをするも
杵島は聞いていない
というか何か唱えていた
「神曰く…滅びよ!!!!!!」
杵島の両手からは神の滅光が…
一瞬眩い光に包まれたかと思うと
このバトルロワイヤル会場には俺達以外
誰もいなかった
「は?………」
「そこまで!!!
勝者 河村 晴人 木下 茜 龍崎 柊真 杵島 凪咲!!!」
上から見ていたDrマキシが試合終了を告げた
「なんすか!?あれ!?
最初っから俺達闘う必要無くないですか?
杵島さんがあんなの使うなら!?」
茜は興奮した口調で言う
「あはは…そんなことしたら君達を鍛えられないじゃないか…」
「まぁそうですけど…」
茜は頬を膨らませて言う
「まあとにかく勝ったんだから良くね?」
喧嘩する杵島と茜を仲裁した俺に一気に視線が集まる
「な、なんだよ…」
「き、君…凄いね…」
杵島は手鏡を見せてきた
俺は覗き込む
「な、何じゃこりゃーー!?!?!?」
滾る血の解放を解除したはずなのに俺の体は黒く染まったままだった…
「やっぱりか…龍崎 柊真…」
Drマキシはゆっくりと歩み寄ってくる
「何が!?」
俺は半ば焦った口調で聞く
「貴様は…破滅の悪魔の血が混じっているようじゃ‥」
Drマキシがそういった瞬間
俺の意識はそこにはなかった…