デストロイ
「蒼大剣 ジークフリート 龍崎柊真を裁て」
彼女は俺に剣を向ける
「デッドブレイク」
蒼い大剣の刃先から
眩しいオーラがでる
「斬戒剣」
大剣から鋭い衝撃波が起こり
俺達を飲み込もうとする
「曰く 絶対的守護あれ」
突然目の前に 結界がはられたかと思うと
間一髪で衝撃波を防いだ
「杵島さん!」
「希望」と呼ばれる彼の武器が
俺達を守った
「少々厄介だね 僕はとんでもないのを連れてきたみたいだ」
杵島は困り顔で告げる
「杵島さん!何ですか?あれは!」
河村がやや焦りながら聞く
「あれは…本当にまずいものだよ」
杵島の顔は酷く怯えていた
「僕は皆に 希望 だと呼ばれているね?」
杵島は当たり前のように問いかける
それは俺達も分かっているようで…
「ならあれは絶望 と呼ばれる存在だ」
杵島が言い放った時 背後から
明るい声がする
「杵島さん!遅れました!一体何が!?」
その声はグラビティライフルを持つ
木下茜だった
「あ、木下ちゃん そうだ!試しにあれ撃ってみて?」
杵島は彼女を指さして言う
「ちょ、ちょっと!!!待ってください!!!
彼女を撃つなんて…」
俺は杵島の言葉に動揺してしまう
杵島は構わず言う
「撃てるよね?」
その表情はまだ俺達にも見せたことなかった
怖い顔だった
怯えながらも茜は撃つ
「グラビティブレイク!!!」
放たれた弾は周りの空間を歪めながら
彼女に迫る
「なるほど…避ける気はないみたいだね〜」
彼女はその弾に向かって剣を構えている
「よ、よせ!!!香織!!!」
俺の言葉は虚しく弾丸は彼女を直撃する
はずだった
「え!?!?」
弾丸を放った茜は目の前の光景が信じられない様子だ
俺も信じられない
弾丸は彼女の指によって完全に止められていた
「龍崎 柊真に裁きを…」
香織はそう言って
蒼い大剣を振りかざす
「もう止めてくれ!!!香織!!!」
俺の言葉は届かず
斬撃が飛んでくる
「面倒だね〜色々と」
どういう意味だ という質問は
激しい炎の音で聞こえなくなる
「彼女…僕の能力も持ってるみたいだ…」
「どういう事ですか!?」
斬撃を止めた河村が言う
「斬撃が…?」
俺の質問に杵島は首を振る
「彼女の手を見てみなよ…」
皆の視線が彼女の手へ
「な、なんだあれは!?!?」
ピースのとある男は驚きを声にする
「彼女…相当だね…」
杵島は冷や汗をかきつつも手をかざす
「曰く 絶対的守護あれ!!!
皆 逃げろ!!!!!!」
静かな杵島が珍しく声をあげた
「まずい…逃げよう!」
俺 河村 木下 他のピースのメンバーは
急いで避難する
しかし、神の言葉は
俺達を無惨に殺そうとする
「曰く 滅する炎で灼かれる他なし」
彼女は唱える
俺達を滅する闇の炎を
「な、なんだ…あれは…」
男が走る足を止め闇の炎を見上げる
「おい!止まるな!!!走れぇえええええ!!!」
俺は男を蹴り飛ばす
「お、おい!!!坊主!?」
男が俺を呼ぶ
しかし、俺の耳には聞こえていない
「血浴!!!」
もう何回目だ?
この力
もう…俺死ぬだろ…
龍崎の体内の血は残り50%を切っていた
「くっ………!!!」
龍崎はふらつく足を必死に制止する
俺は………………
「龍崎君っ!なにしてんのー?」
健気な少女は俺の顔を覗きながら言う
「なんだよ…!」
俺は塞ぎ込む
「あはははっ!!!照れてるー」
「照れてねーよ ほらっ あっち行けって!」
俺は手を払いながら言う
「もおー 釣れないなー君はー」
「俺は魚じゃない」
「そういう意味じゃないんだけどなー」
「う、うるさい!」
「あはははっ!!龍崎君おもしろいねー」
俺達はいつも放課後誰もいない教室で
話していた
この時間は楽しかった…
しかし、その思い出はいつも悪夢を呼び起こさせる
香織が怪物に連れ去られたあの時の事を…
「龍崎君っ!
人間ってー不思議だよねー
自分の目的を果たすためなら
自分の魂を悪魔にでも売っちゃうんだよねー」
悪魔…か…
それもいいな…
「俺は香織を助けるためなら悪魔に血を…心を…何でも売ってやる!
力を貸せ!悪魔ぁ!!!!!!!!!」
俺の叫びは天を穿った
俺の脳裏には とある言葉が浮かんだ
その言葉はずっと…ずっと
俺の解放を待っていたかのような
煮え滾る感情
「悪魔の憑依」
俺の「ジークフリート」が漆黒に包まれる
剣の刃先からゆっくりと黒に染まり
やがて俺の体の半分を黒く染めた
「行くぞ…香織…!!」
俺は香織に向かって走り出す
「龍崎 柊真に断罪を…」
香織は「蒼大剣 ジークフリート」を構えた
「英雄の鉄槌!!!」
蒼い大剣の先から波が現れる
「遅い!!!」
俺は波を切り裂き
彼女が持っている剣を狙う
ガキンッッッ!!!
酷い金属音が響いたと思うと
彼女の持つ大剣は3mほど飛ばされていた
「やった!!!!」
「油断するのはまだ早い!!!」
杵島が叫んだ 見ると相当なダメージを負っている
さっきの闇の炎を全て受けきったのだろう
力を振り絞り唱える
「曰く…龍崎君に…最後の守護を…」
「これは…?」
俺は白い光に包まれる
「僕の血武器は…」
杵島は笑いながら立ち上がる
「神の代行者と呼ばれている
僕の言葉神の言葉となる」
「行け!!!龍崎!!!
大事な彼女を…助け出せ!!!」
杵島は全ての力を俺に投資した
なら俺は…
「最後までやるしかねぇよな!!!
香織…ちょっと痛いけど…我慢してくれよ…」
俺は「大剣 ジークフリート」を彼女の肩に突き刺そうとする
「そうはさせませんよ…悪魔君…」
ズドンッッッ!!!
銃声が轟く
「うがァァァァ!!!」
痛みが俺の顔を歪ませる
銃声は俺の心の臓を貫いていた
大量の血が滴り落ちる
俺は視界がぼやけるもなんとか意識を保つ
「なるほど…彼は超越人を超えましたか…」
「な、ナンの…はなシだ…き、キさまは誰だ…」
俺は痛みからかまともに言葉を紡ぐことが出来ない
「私は シェザリア=ロード しがない研究員ですよ…」
名乗る男の後ろには数十人の血武器を所持している
それも翠色の
「貴様らは…何者だ…」
俺はふらつく足に大剣を刺しそれを軸とし立つ
「自らの足に剣を刺すとは…馬鹿なのですね…」
男は嘲笑いながら俺を見る
「俺から見れば質問に答えないお前の方が馬鹿に見えるがなぁァァァ!!!」
「唸れ!!!ジークフリートォォ!!!」
俺は勢い良く横一線に斬る
「吸収」
一線の衝撃波は男の左手の中に吸い込まれた
「倍加」
今度は右手から吸収したエネルギーを取り出し
こちらに手を向ける
「放射」
放たれたエネルギーは俺が放った物と段違いの威力を見せた
(これは…まずい…!!!)
危機を察し飛び退くもエネルギーは追い掛けてくる
「ふふ…無駄ですよ君に狙の呪いを掛けてますからね…私の攻撃は全て君に必ず当たる」
言葉通り 避けても避けても方向を変え
そのエネルギーは襲いかかってくる
「なら打ち消すまでだ!!!」
俺は向かってくるエネルギーを前にし
剣を構える
「待て!龍崎君!!君は今 加護を受けている!!
多少のダメージなら受けても大丈夫だ!」
杵島が俺を見て叫ぶ
「おや?Drマキシの犬の 杵島 凪咲じゃないか!
元気だったか?」
男は恭しく言う
「黙れ…僕は犬じゃない…」
杵島は歯を食いしばりながら言う
「ふふふっ面白い冗談を…殺れ!」
男は後ろの武装した男に声をかける
「ふふふっ彼の武器は 超精密な狙撃銃でね…
1発でも当たればあなたがた超越人
の血管をズタズタにしますよ!!!」
1発の弾が放たれる
「へっ!そんなの当たるかよ!」
俺は軽く躱し 次の攻撃へ…
とはいかなかった
その弾は俺を追尾し俺の左腿にヒットする
そこは俺が剣を軸にするために突き刺したところだ
「ぐああああッッッ!!!」
俺は声が枯れるほどの声を上げる
「痛いでしょう?痛いでしょう?
今もあなたの血管をズタズタに裂いていますよ…
あなたの体はどうなるのでしょうかね…」
男は不気味に嘲る
「もう止めないか!ロード!!!」
杵島は制止を…しかし、男は聞く耳を持たない
「黙れよ…犬…貴様はもう終わりなんだよ…」
男の口調はこれまでとは違い
冷たく突き放す
「杵島さん!!!どういう事か説明してください!!!あの男達は誰ですか!?」
茜が近寄りながら杵島に聞く
「彼らはね…超越集団の対局を成すもの…破壊集団だよ…」
「対局…ってことは世界を救うってことですか?」
河村が聞く
超越集団が世界を破壊する
なら反対は世界を救う ということになる
「まあ…それは彼らが思っている事だ…
実際は世界は救われない…」
言っていることが分からない
俺は詰め寄り杵島に問う
「彼らは…全人類を超越人にするつもりだ…それも…僕達より強いやつをね…」
「その通り!!!君達よりも優れた人材を多く作る
その証拠に私は 吸収 倍加 放射 という3つの血武器を手に入れた!!!」
男は待ってましたと言わんばかりに言う
しかし、俺達は信じられない言葉を耳にしたようだ
「貴様は…3つの血武器を持っているのか…?」
俺はロードに問う
「だからどうしました?怖気つきましたか?」
ロードは平然と答える
「いや…その力…寄越せ!!!」
「解放!!!」
俺は血を消費し、身体能力を強化する
限界を超えるほどに…
みるみるうちに体に黒いオーラが纏わる
「ほお…凄い…でも もう血が切れるでしょう?」
「関係ない…」
「ほらほらそう言いつつも足はふらついてますよ?」
俺は剣を足から引き抜き仁王立ちをする
「やりますね…でも 所詮あなたが立てた所で勝ち目はないんですよ!!!」
男は声を上げ侮る
「かもな…勝ち目はなくともお前は殺せる…」
俺は静かに男を睨みつける
「おお 怖いですねぇ
もう一ついいことを教えて差し上げましょう」
ロードは蒼い大剣を拾い構える香織を見て言う
「マキシの犬…凪咲は気づいているかも知れませんね…」
俺 河村 茜の視線が集まる
「希望」と呼ばれる杵島に
杵島は口を開く
「まぁ…そうだね…大体気付くだろうが
彼女…香織さんは…僕の神の代行者の力と龍崎君の 大剣 ジークフリートの力を併せ持ってる…しかも おまけにジークフリートの方は
何か特別な強化が施されているようだ…」
「正解!!!流石は犬だ!!!
彼女の剣はね BLOOM BLUE の試作段階なのだよ…」
男は冷静に言う
「BLOOM BLUE…?なんだ?それ?」
俺はロードに聞く
しかし、ロードは答えようとしない
その状況を見かねてか杵島が口を開く
「プロジェクト:BLOOM BLUEは…
世界を滅ぼすための計画だよ…」
「何!?」「何ですって!?」
河村 茜が驚きを口にする
「どうです?素晴らしいでしょう?
あなた達超越集団が油を売っている間に私達は素晴らしいものを完成させました!!!」
「僕達は…油を売っていた訳じゃない…」
「ならその証拠を見せて下さいよ…犬!!!」
ロードの表情が一変して目が見開かれる
「茜ちゃん…力を解放せよ」
杵島の声色が変わったかと思うと
今度は茜の様子が変だ
「うう…うわあああ!!!」
「茜!!!」
名前を叫ぶも声はまるで届いていない
「うあああああ!!!」
茜は苦しそうに悶える
「ちょっと…何したんですか…?」
流石のロードも訳が分からない様子だ
「彼女の武器は銃で…弾は空間を歪ませる
でも…力を解放させると…」
「撃って♪茜ちゃん」
「うわあああ!!!」
叫びながらも茜は弾を放った
直後その場にいた全員が跪く
「ぐっ…何ですか?これは?」
必死に耐えようとしているが
その膝は限界に来ている
パキッ!!!
と嫌な音がすると男は跪いた
「彼女の本当の力を解放したんだよ…
グラビティライフルの本当の力は…
地球の重力そのものを操れる」
流石のロードも躱せないようで
吸収の力を使う
「なんだと!?すげえな!?
俺にもやってくれよ!!!」
俺は懇願するも断られる
「まあ待てよ…君は最後だ…次は河村君だね♪」
「河村君 屍を超えろ!!!」
「うわあああ!!!」
茜と同様 苦しみ悶える
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
河村は魂魄刀を出し
ロードに立ち向かう
その刀は紫に包まれている
「シシャノタマシイヨ…ソイツヲクイコロセ…」
刀の紫は紫炎となり ロードを襲う
ロードは放射の力で対抗するも手遅れ
亡霊が絡みつく
「さてと…最後は君だね…
でも君は力を解放させない
1つ聞きたいことがあるんだけど…?」
杵島は改まって俺に聞く
「君は…本当に超越人なのか?」
「なんだよ…そんな当たり前のこと聞くんじゃねえよ」
俺はうんざりしながらも答える
「いや…君の中には元々人間じゃない何かの血が混ざっている」
「だから何だ?それがどうかしたか?」
「いや…何でもないよ
じゃあ君の力を解放するね…」
「ああ…」
「悪魔よ…目覚め…」
「その必要はない!!!」
解放の言葉はロードによって遮られる
「我々はここで引く…それを解放されのはまずいですからね…」
「おい!Drマキシの犬!!!
そいつは良く見張っとけ!!!!」
ロードは去り際そう言い残し
消えた
尚 香織を置いていったようだ
「香織…かお…」
俺の記憶はそこでなくなる
(ん?ここは…?)
俺はゆっくりと体を起こす
「やぁ起きたね 龍崎君」
杵島が待ちわびたように言う
「香織は!!!?!」
「安心しなよ…今は眠ってる」
俺の隣には香織が寝息を立てて寝ている
どうやら高校の保健室のようだ
「さてと…香織ちゃんの包帯を取り替えたいからここからは男子諸君には出ていって貰いたいんだけど…?」
「そうか…分かった 河村先輩行きましょう!」
俺は隣で本を読む河村に言う
「ああ…」
「じゃあ外で待っててね…」
「はいっ!????」
「ってあんたも男だろ!?」
俺は突っ込む
自分だけがいい思い使用としてるやつは許さない
「ちょっと何言ってんのよ!?
杵島さんは…女性だよ?」
い今まで黙っていた茜が言う
「ええええええええええええ!?」
「嘘だろ…!?」
「あはははっそんなに乙女に見えないなんて酷いなぁ♡」
「全く男二人はダメダメね…」
茜が呆れ顔で言う
「ええええええええええええ!?」
俺と河村はただ叫ぶだけだった