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無駄物語

脚本家になろう 脚本なんて書いたこともないのに、なぜかハリウッドの脚本家になった

作者: 猫車るんるん

 『ハリウッド脚本術』という本があるみたいですね。

 これは、脚本を書くための教則本のようです。

 この本は有名なプロの小説家も参考にしているらしいので、一度読んでみようかとも思いましたが、ネットの評判だと賛否両論あるみたいなのでやめておきます。

 やっぱりどんなに優れた教則本でも読者が、それを上手く咀嚼できなければ、意味がないですよね。

 ちなみに自分はセンスがない方なので、読んでもうまく参考にできないような気がします。


 映画の黄金時代といわれている1930年代のハリウッドで活躍していた劇作家であり、映画の脚本家でもあった、大胆で強気な性格(多分)のチャールズ・マッカーサーは、テニスコートで週給65ドルで石油会場で働いている、脚本も小説も書いたことがないどころか、小切手さえ書けない全く文才の無い小心で弱気な性格(多分)のバジルというイギリス人と知り合うと、彼をハリウッドの高給取りの脚本家に仕立てあげることにしました。


 マッカーサーがこのような計画を以前から考えていたのか、それともバジルと出会ったことで思い付いたのかはわかりません。

 というか、チャールズ・マッカーサーという人物自体がどんな人なのかよくわかりません。


 マッカーサーはまず、嫌がるバジルを強引にスタジオの構想会議に出席させました。

 すると、当然のように会議の他の出席者がマッカーサーに彼が連れてきた人物についてたずねると、マッカーサーはバジルを「彼は次のノエル・カワード[イギリス人の俳優・作家・脚本家・演出家]になる男ですよ」と紹介しました。

 マッカーサーは続けて「彼はいま静養のためにここに来ていましてね。映画の仕事には興味がないんですよ。私がアドバイスが欲しいと言わないとストーリーすら聞きもしないんです」と真顔で言ったそうです。

 マッカーサーには脚本家などとは別に俳優という一面もあったのです。


 この言葉によって才能があるマッカーサーが認めた才能を持つ人間として認知されたバジルは、スタジオのトップからオファーを受けましたが、マッカーサーはそんなことは無理だと言って頑として譲らないフリをしました。

 このままでは埒が開かないと判断したスタジオ側はマッカーサー抜きで直接バジルと交渉することにしました。

 もちろん、ここまでの流れは全てマッカーサーの脚本通りだったのですが、皮肉なことに唯一脚本通りに動かなかったのが、この茶番劇の主演であるはずのバジルでした。


 マッカーサーはバジルにスタジオからオファーを受けた際、決して週給2000ドル以下では首を縦に振ってはいけないと言っておいたのに、小心で弱気な性格のバジルは週給1500ドルのオファーで契約を結んでしまいました。

 まあ、それまでバジルは週給65ドルで働いていたのですから、週給1500ドルという大金の前に抗うことはできなかったのでしょう。


 こうしてバジルは、結果的に一年ほど脚本家の仕事に就いたわけですが、その間一言の文章も書きませんでした。まあ、書かないというか書けないんですけどね。

 バジルはスタジオから、こういう話はどうかと構想を提出されるたびにマッカーサーからの指示に従って「自分の好みの話ではない」と言って断り続けました。

 そんな状況に業を煮やしたスタジオ側はとうとうバジルをカナダに送り込み、そこでハドソン湾会社についての映画の構想を考えるように命じました。


 マッカーサーは、このような事態にも対処できるような策を用意していましたが、またもやバジルはその性格によって、マッカーサーの予想を裏切る行動をしていました。


 バジルは脚本家として得られる収入に対して、不安に思っていたたらしく、念のためとして以前勤めていた石油会社をまだ退職していなかったのです。

 そのため、脚本家としての収入に対して社会保障の控除が大きくなりすぎてしまい、その結果、スタジオに政府からバジルの控除をそんなに大きくしないようにという注意が通達されたためにバジルの正体がバレてしまいました。

 これによって、このマッカーサーの脚本したお芝居は幕を閉じました。


 それにしても、先にも書きましたけどチャールズ・マッカーサーという人物はよくわかりませんね。

 金銭目的でこのペテンを仕組んだとも思えませんし、この後もキャリアを重ねてアカデミー賞を受賞したり、ノミネートされたりしていますから才能があったのは間違い無いようですが。

 どうやら、単純にイタズラのためにこの一件を仕組んだようです。


 もしかしたらマッカーサーは自分の脚本が現実世界の中で、どのくらい通用するのかを試してみたかったのかもしれませんね。

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