7
辺境の魔術師アンネリーゼは頭を抱えていた。
天才と称されたこの魔術師はここ数日、異世界からやって来たという青年に悩まされっぱなしだった。
今日もその青年と話していたのだが、あまりにも常識外れの話しの多さに頭がパンクしそうになり、途中で打ち切ってしまったのだった。
彼が帰った後アンネリーゼは、所持している歴史書や魔法についての文献をあさり、彼の魔力について一つの答えを出したのだが、出した答えにさらに頭を悩ませていた。
外はすっかり暗くなっている。
彼女は本を閉じフラフラと立ち上がると、ベッドへそのまま倒れこんだ。
顔を枕に埋めると、その口元がモゴモゴと動いている。
「ユースケ君の異常な魔力はおそらく特殊能力でしょう・・・」
声が眠そうに、か細くなって行く。
「異世界人・・・特殊能力・・・英雄体質・・・彼を見つけてしまった私はどうすれば・・・」
その声はもちろん祐介には届いてはいない。
しかし彼女はまるで祐介に問いかけるように独り言を続ける。
「ユースケ君、君の力はかつてこの大陸を破壊し蹂躙し、そして最後には倒された男と同じものでした・・・」
「魔王・・・」
アンネリーゼはそのまま目を閉じ、呟きは寝息へと変わっていった。