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異世界物語  作者: 夢見かおる
第一章 松木祐介(まつきゆうすけ)
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6

「ユースケ君はいったい何を考えているんですか! 幽霊が怖いとか子供ですか! 第一それは幽霊じゃありません! 恐らくではありますが魔法陣に意思や記憶などを映像として残せる魔術です! 『私はすでに死んではいるが、ここまで辿り着いた者にメッセージを残そう・・・』的なものです! それに、遺跡に辿り着いたのは間違いなく異世界からやって来たユースケ君の異世界体質発動しているからです! 絶対何か重要な事だったり、ユースケ君の力になる事が起きたはずです! それを何で自ら壊しちゃってるんですか! しかも古代文明の遺跡を何だと思っているんですか! 世界規模の宝なんですよ! そ、そ、それを破壊するなんて!! 」


「うん、でも俺そう言う事とか知らないじゃん?」


「だ・・・だからと言って壊したりする必要はないじゃないですか!! 」


「でも知らなかったら幽霊って思っても仕方ないじゃん? 」


「ま・・・まぁそれはそうかもしれないですけど壊す必要はないですよね!! 」


「でも幽霊って怖いじゃん?」


「・・・」


「でも幽霊って怖いじゃん?」


「そ・・・それは怖いですけど・・・」


「もし幽霊屋敷的なものがあったら怖くて破壊するじゃん?」


「・・・・・・」


「アンなら火を出して破壊するじゃん?」


「・・・破壊します・・・」


「俺悪くないじゃん?」


「・・・・・・・・・」



「とりあえ立ち話もなんだし座ろうかじゃん?」


「は・・・はい・・・」



祐介は椅子に座るとフゥッっとため息をつき、再度アンネリーゼへと目を向ける。


「で、俺悪くないじゃん?」


「で、でもすっごい価値のあるものなんですよ!! じゃ、じゃあ場所とか! 場所とか覚えてないんですか!? 」


「覚えてるわけないじゃん?そして俺悪くないじゃん?」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「わ、分かりましたよ・・・ユースケ君は悪くないです! これでいいんですよね!! 」


アンネリーゼは頬を膨らませフンッと横を向く。

祐介はそんなアンネリーゼを生暖かい目で眺めながらお茶を啜る。


「ところで大魔術師のアンネリーゼさん、貴方に聞きたいことがあるんですけどよろしいですか?」


「何ですか?」

アンネリーゼはふて腐れた顔で視線だけ祐介に送る。


「いくつか聞きたいことがあるんだけど・・・まずはこれかな?」

祐介は机の上の右肘を立て、手の甲をアンネリーゼの方へ向け自分の手のひらに視線を向ける。

アンネリーゼも祐介の視線に気付き、首をひねりながらも祐介の腕に目を向けた。


「これが何なのか大体の予想はついているんだけど専門家の意見が聞きたいんだよ。右手を見ててよ」


 アンネリーゼは無言で頷くと、一旦祐介へ向けた視線を再度その右手に戻した。


 静まり返る家の中、祐介の右腕に変化が訪れる。

赤い煙の様な光が、祐介の右手から溢れ出したのだ。


「どう?これが何か分かる?」


アンネリーゼの顔が驚愕の色に染まっていた。


「あ・・・ありえない・・・目視できるほどの高濃度の魔力なんて・・・しかも・・・」


アンネリーゼはそこまで言うと、ハッと何かに気付いたように立ち上がった。


「ユースケさん!今すぐ止めてください!! 」

「え?」


祐介は急いで魔力を抑える。


「か、身体は大丈夫ですか!! 」

「え?」


「『え?』じゃなくて身体は!!! 」

アンネリーゼは必死の形相だった。

「え?・・・特に大丈夫だけど? 」


「え?」

「え?」


「え?なんかやばかった?」

アンネリーゼの焦りようから祐介も若干焦っていた。


「・・・・・・」

「えっと・・・僕、何か悪いことでも・・・?」


「ふ・・・普通なら数秒で倒れているはずです・・・いや、違いますね・・・やった瞬間・・・ですね・・・私の考えが正しければですけど・・・」

アンネリーゼは搾り出すようにそう答えた。


「え・・・」

「今のは間違いなく魔力です・・・しかもかなり高濃度の・・・」


「アンがやってた火を出したりするような魔法と同じって考えていい訳?」

「いえ、違います・・・ユースケ君が出したのは魔法として変換されていない純粋な魔力です・・・たぶん・・・」


「それを出すのは危険って事?」

「もちろん危険です・・・が、そもそもできないと思います・・・純粋な魔力をそのまま操作する術はない・・・いや・・・理論上ではできるかもしれないのですが・・・人間では無理なはずなのです・・・」

「え・・・」

「純粋な魔力だけを目に見えるほどの高濃度で放出しようと思ったら、私でもすぐ気を失ってしまうでしょう・・・もしかしたらもっとひどい状態になってしまうかもしれません・・・むしろ私の全魔力を使っても目視できるほどにはならないと思います」

「う~ん、つまり俺は魔力の量が多いって訳ね」


「多いってレベルじゃありません!! 」

アンネリーゼが机を叩き、コップが跳ね上がった。


「ちょ、アンネリーゼさん落ち着いて」

祐介は跳ね上がったコップを片手で押さえながら冷や汗をかいている。


「ユースケ君・・・ちょっと聞きたいのですがさっきみたいな事、どれくらいの時間できるんですか・・・?」

アンネリーゼの目が据わっている。

「アンネリーゼさん目が怖いです」

祐介はアンネリーゼの剣幕に口を引きつらせながら答える。

「えっと・・・ちゃんと計ったことはないんだけど・・・たぶん一時間ぐらいなら余裕かと・・・」

「い・・・一時間!! 」

アンネリーゼの明るい栗色の瞳が驚愕に開き、口がアワアワと動いていた。

そして震える声でさらに質問を続ける。

「そ・・・その他には・・・」

「え?」

「その他にまだ魔力の事で隠し事してませんか・・・」

「隠し事って・・・! 隠すもなにも俺はこの世界の常識や魔法の事も分かってないんだから・・・」

「いいからまだ何かあるなら言ってください。」

アンネリーゼの目が細められ、祐介を睨み付ける。

「えっと・・・」


 祐介は話した事を若干後悔していた。トラブルセンサーがピコピコと警戒音をならしている。

が、ここまで来たら話しておく方がいいだろう。この世界の常識からずれてしまっているであろう自分の力は知っておくべきだった。トラブルを避ける為にも。


「えっと・・・さっきのその魔力みたいなやつだけど・・・色がつくまで力を込めない薄い膜は常に身体全体を覆う様に出しています・・・あと・・・」


祐介がそこまで言うと、アンネリーゼはバタンッ!と机に突っ伏した。

「え、大丈夫?」


 アンネリーゼは突っ伏したまま、手だけを祐介に向け「続きをどうぞ」と促す。


「えっ・・・ん~・・・後は・・・この魔力ってさ、魔獣?とかを倒せばそいつらの魔力を吸い取って増えていくじゃん? そんでさ・・・」


 アンネリーゼが目を見開き、もの凄い顔で祐介を見ていた。


「こわっ」

「・・・・・・」


 アンネリーゼはもの凄い顔をしたまま固まっていた。


(写メ・・・写メ撮りたい・・・)

祐介はそんな事を考えていた。






                                  

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