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異世界物語  作者: 夢見かおる
第一章 松木祐介(まつきゆうすけ)
6/12

5

 アンネリーゼは立ったまま祐介の方へずいっと身を乗り出すと、眉を吊り上げ説明を始めた。


「いいですかユースケ君! ユースケ君が居たあの森は『大森林』・・・別名『魔の森』とか『死の樹海』とか呼ばれているほんとーーーーーに危険な場所なんですよ! 」

「そのネーミング・・・」

「何ですか! 何か言いましたか! 」

「いえ、なんでもありません」


「あの森はですね、隣接しているこの村や街道から5km程は何の変哲もない普通の森です。でもそれ以上に深く進めば進むほど危険で凶暴な魔獣達の住処になっているんですよ! 」

「5kmってそこそこの距離じゃない?あの森ってどんぐらいの大きさなの?」

「危険な森なので正確に測った人はいませんがおおよそ200,000km²はあると言われています」

「うん、数字が大き過ぎて想像ができない」

「そうですねー例えるならマシガルツ王国が・・・」

「うん、その例え分からないから」

「あ・・・」

「とりあえずかなりでかいって事ね。」

「そっそうです! 」


「うん、でもさ、とりあえずは座って話さない?」

「は・・・はい」

アンネリーゼは興奮して大きな声を出していた事を恥じるように顔を赤らめ椅子に腰を下ろした。

(まったくユースケ君と話すと調子が狂います)とかブツブツ言っている。


祐介も腰を下ろし一息つくようにお茶に口をつける。

「まぁつまりアレだ。そんなにでかいってなら俺がのんびり当てもなく森をさ迷ってても、森を抜けられないのは仕方ないって事ね」

「いえいえそう言う事じゃないんです! 妖精に会ってるって事はユースケ君はかなり深い所に居た事になります! 魔獣とかどーしたんですか! 魔獣とか! 」

「あぁ魔獣ね、その話も聞きたかったんだよ」

「いいですか! 現存している文献の中で大森林の名前が初めて出てきたものは1300年前の物になります」

「・・・」


「その頃からあの森は一度入ったら帰って来れない『魔の森』と呼ばれていました。そして森の中には古代魔法王国の遺跡があると当時から信じられていました」


「あの、魔獣の話・・・」


「その文献によると当時のハンター・・・、当時は冒険者と言ったそうですが、その当時の高名なある冒険者が森に挑み、ついに遺跡を発見したそうです」


「・・・・・・」

祐介は話を挟むのは諦めた。


「しかし遺跡を見つけた時には彼のパーティーはすでに半壊していたそうです。そこで彼らは命からがらではありますが何とか一度戻り、そこで仲間を集ったそうです。森と遺跡を攻略するために」


祐介は棚に並べられた多くのビンを眺め、(何が入ってるんだろ?)などとボンヤリ考えていた。


「そこに集まったのは彼を中心とした冒険者100名、さらには王国の騎士団200名も参加したそうです。本当に古代魔法王国の遺跡ならその価値は計り知れないですからね。しかし・・・」

ここでアンネリーゼは言葉を区切り、祐介の顔を意味深に覗き込んだ。

祐介は焦ってアンネリーゼの視線に頷く。

違うことを考えていたので焦っただけなのだが、アンネリーゼは祐介が話に集中していると勘違し、満足そうに頷くと続きを話すために口を開く。


「しかし・・・その100名の冒険者、200名の騎士団は帰ってくることはありませんでした」

「そ、そうなんだ」

「その後も多くの冒険者の方々が遺跡や大森林を攻略しようと挑みましたが誰一人としてそれを成し遂げた人はいません。現在はよっぽどの物好き以外はあの森に挑戦しようとする人はいません。各国もほっときっぱなしです。それほど危険な森なんですよ! 」

「そ、そうなんだ」


「少し待っていてください」

アンネリーゼはそう言い奥の部屋へと入っていった。

戻って来るとその手には、分厚い本が一冊。

その本をペラペラとめくりながらアンネリーゼは椅子に座った。


「この本はサマイータ大陸珍百景と言う本です」

「そのネーミング」

「え?」

「いえ、なんでもないです」


「この本にはサマイータ大陸の色々な場所の事が書かれています。たしかこの辺に・・・」

アンネリーゼはページを開くと祐介の方へ本が見れるように向けた。


「この絵はその冒険者が書いたものだそうです。1300年も前の話なので本物かどうかは分かりませんが、大森林で発見した遺跡を書いたものだと言われています」

「ふーん」

祐介は興味なさそうにしていたが、絵を見るなり悩むように首を傾げた。


「これ本物だわ」

「え?」


「俺しばらくここで暮らしてた」

「え?」


「奥に神殿みたいなのがあって、その周りには家みたいな建物がたくさん並んでたよ。まぁほとんど森に飲まれちゃってたけどね」

「ええええええええええええええええええええええええええ! 」

アンネリーゼは立ち上がり絶叫した。

「詳しく! もっと詳しく!! 」


「アンうるさい、そして座りなさいよ」

「あ、はい、すいません・・・それでは座ってお茶でも・・・ってそうじゃありません! 座りますからもっと詳しく! 詳しく教えてください!! 」

座ってノリツッコミを挟んだものの、まだ興奮は治まらない様子だ。


「詳しくって言ってもな~。雨が降っても大丈夫だからしばらく暮らしてたってだけなんだけど・・・」

「そうじゃなくて! 何かありませんでしたか!? 宝箱とか! 壁画とか! なんでもいいので思い出して教えてください!! 」


「う~~~ん」

「・・・・・・」

アンネリーゼは獲物を狙うかのような瞳で祐介を見つめる。


「あ! 」

「なんですか? なんですか? 何か思い出しましたか!? 」


「神殿みたいな建物なんだけど」

「はい!」


「建物の奥に隠し通路があったよ」

「えっ!! 」


「通路じゃないか? 隠し階段かな? たまたま触った壁の一部がへこんでさ、そしたら床が動いて地下に行く階段が現れたんだよ」

「さ、さすが異世界体質です!! それで! それでどうなったんですか!!! 」


「異世界体質言うな、それにアン興奮しすぎ」

「いいから続けてください!!! 」


「あ・・・はい」

アンネリーゼのあまりにも危機迫る顔に祐介は若干引き気味である。

顔を引きつらせつつも祐介は話を続ける。


「そんでとりあえず行ってみようと思って松明も用意して階段を降りたんだよ。んで階段を降りたらさ、真っ直ぐな通路に出たんだよね」

「は、はい! 」


「んで通路を歩き出したらいきなり天井が光って明るくなったわけ」

「おおおおおおおおお!! さすが古代の魔法文明!! 今だに魔力装置が作動するなんて凄すぎます!!! 」


「そんで通路の両脇にもいくつかドアとかあったんだけど、とりあえず無視して奥まで進んだのね」

「は、はい!! 」


「そしたらさ、すっごい広い部屋に着いたんだよね。たいして降りてもいない地下なのに天井とかも凄い高いわけ。両脇にはなんか巨大な石像も並んでたしね」

「そ、それは! ・・・・・・空間魔法!? ほ、本当に空間魔法なんてものが!?いや、でも理論的には・・・もしかしたら転移・・・いや、でも・・・」 


祐介は一人でブツブツ呟き始めたアンネリーゼを冷ややかな目で眺める。

「アンネリーゼさん? 続きを話しても? 」

「あ、はい、すいません。つい・・・」


「そんでそのでかい部屋の真ん中ぐらいかな? なんか魔法陣的なものが書かれててさ、そしたらその辺りの床が急に光りだしたんだよ。何が起こったんだろってしばらく見てたら光が消えて、代わりに青白く光る透明な人影が現れたんだよ」

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!! それで? それで? 何か話したんですか? 何か話したんですか!! 」

アンネリーゼは興奮のあまりまた立ち上がってしまっていた。


「んで俺は思ったね、これはやばいと。だから持っていた松明をその人影に投げつけて一目散に逃げたね」

「え?・・・・・・え?」


「んで急いで外から岩とか運んでその階段を塞いたんだよ」

「え?」


「そんでとりあえずまだ心配だったから神殿もぶっ壊して、完全に地下への入り口は塞いでやったね」

「え?」


「以上です」

「・・・」


「なにか?」

「・・・・・・」


「アンネリーゼさん?」

「・・・・・・・・・」


アンネリーゼはプルプル振るえ、明らかに顔が怒りに染まって来ている。


「あ、アンネリーゼさん?何か問題でも?」

さすがの祐介もアンネリーゼの異変に気が付き、顔が引きつっている。


「あ・・・アンネリーゼさん?」



 

 アンネリーゼは机を思いっきり叩き怒りを露にする。


「何してくれちゃってるんですかーーーーーー!!!! 」


 

 祐介も負けじと机を叩き立ち上がる。


「だって幽霊とか怖いじゃないですかーーーー!!!! 」









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