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異世界物語  作者: 夢見かおる
第一章 松木祐介(まつきゆうすけ)
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「ちょっとユースケ君ちゃんと聞いているんですか!」


「え、うん、聞いてる聞いてる」


「そしてですね、その謎の骸骨なんですが・・・なんとあの! 大魔導師ダノーだったんですよ!!」


「え?誰それ?」


「え?・・・あ、そ・・・そうですね、ユースケ君は知りませんよね・・・。大魔導師ダノーは現在はもう失われてしまった魔術の一つ、死霊魔術を極めた古代魔法王国時代の伝説の大魔導師の一人なんです!!」


「え?それって大昔だよね?随分長生きなのね」


「そうなんです! なんとあの骸骨・・・じゃなかった、大魔導師ダノーは借りの身体を創って、そこに自分の魂を移し今でもあの洞窟で死霊魔術の研究をしていたんです! ここここれは考えられない! 恐ろしいほどの大魔術なんです!!」


「そ・・・そうなんだ・・・。良かったじゃん、うん。憧れの大魔導師に会えたんでしょ?」


「え・・・?憧れてなんていませんよ。死霊術なんて怖い魔術を使う人なんて無理です。関わり合いたいとも思いません」


「え?・・・そ、そうなんだ・・・」


「そんなの当たり前じゃないですか、死霊魔術なんて怖い魔術はなくなって当然です!」


「う・・・うん・・・。よっぽど怖いんだってことは良く分かった」


「そんなことよりですね、さっき私が言ったことユースケ君は覚えていますか?」


「え?」


「骸骨・・・じゃなくて、大魔導師ダノーは、最初に私を見た時こう言ったんです!『お前達が来るのを待っていた』と、『お前達』と言ったのです!」


「ちょっとタンマ」


「え?」


「アン、その話長くなる?」


「え?」


「『アンのダヒカ街編』とか始まっちゃうと長くなるからさ、話したいことがあるなら分かりやすく箇条書きっぽく言ってくれると助かるんだけど」


「・・・・・・」


「それにさ、こんなとこで立ち話もなんだし、とりあえず歩きながら話そうよ。アンの家に向かっていたんでしょ?」


「・・・・・・」


「ほれ、行くよ」


 歩き出す祐介に、今度はアンネリーゼが着いて行く。


「で?話の続きは?」


「・・・・・・」


「ないなら俺戻りたいんだけど?」


「・・・なんかもうどうでもよくなっちゃいました」

アンネリーゼはガクリと肩を落としていた。


「うん、じゃあ俺帰るね」


「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください!」

 慌てて祐介の手を握り、引き止めるアンネリーゼ。

「話します、話しますから!」


「うん、じゃあ物語風とかじゃなくて、要点を分かりやすくね」


「む~~分かりましたよぉ 分かりやすくですね!」


 アンネリーゼは頬を膨らませプイッと横を向く。


「はい、それではまずその一ね」


「む~~なんか納得できないのですが・・・でもとりあえず一つ目のお話をさせてもらいます。なんとですね、なんとですね! 骸骨・・・いえ、ダノーは私が来ることを知っていたのです! そしてその事をダノーに教えたのはなんと!勇者ヒロシだったのです!」


むくれていたアンネリーゼだったが、話し始める内に気分も戻ってきたようだ。


「え?ヒロシ?」


「そーなんです! 約千年前のことだそうです。ダノーの研究所に偶然来てしまった勇者ヒロシとその一行は、ダノーと友達になり、その時ダノーが困っていたことを解決してくれたそうなんです。骸骨は何かお礼をしたいと言ったそうなのですが、勇者ヒロシはこう言ったそうです・・・」


そこまで言うとアンネリーゼは肩掛けカバンの中からノートのような物を取り出した。

そして、古代魔法王国伝説の大魔道師ダノーは、すでに骸骨扱いとなっていた。


「コホン、勇者ヒロシはこう言ったそうです『お礼なんていいよ、たださ、たぶん千年後ぐらいに俺みたいにここに迷い込んで来る二人組みがいる。一人は魔法使いのお嬢さん、もう一人は俺と同じ黒髪の青年。その二人が来たらさ、なにか力になってあげて欲しいんだ。あと黒髪青年の方にはこれを置いていくから渡して欲しい。ちなみにその黒髪青年は異世界人だよ』って!!」

アンネリーゼはキラキラ輝く目で祐介を見上げる。


「う・・・うん。そうなんだ。ヒロシは予言とかの力があったんだね。外れたけど。つかアンさんメモとか取ってるんだね」

祐介は一生懸命に話すアンネリーゼに若干引き気味であった。


「メモを取るのは当たり前です! 一字一句見逃す訳にはいきません! 私は英雄譚が大好きなんです!! じゃなかった、これは歴史を紐解く重要な参考資料です!! きちんと記述して残しておかなければならないんです!」


「う・・・うん。そうなんだね・・・」


「それと予言の件ですが、骸骨が言うには勇者ヒロシには未来を見る力があったそうです。ただそれは自分でコントロールできるものではなく、自分の思いとは別にいきなり映像が観えるといった類のものだったそうです。でも今残っているどの文献にも、全くこの力についての記述はありませんでした! こっこれは大発見なんですよ!!」


「う・・・うん。そうなんだね・・・でもヒロシの予言は外れちゃったね」


「そこ! そこなんです!! ユースケ君は何をしてくれちゃってるんですか!」


「え?」


「ユースケ君のせいで勇者ヒロシの予言が外れちゃったじゃないですか!! 」


「え・・・」


「これ明らかに私とユースケ君のこと言ってますよね! それに勇者ヒロシが異世界の青年のために残してくれていった物を見せてもらったんでんですが、剣! 剣だったんですよ!! しかも物語りに出てくる様な台座に突き刺さった剣!! これはどう考えても『勇者ヒロシ以外、誰にも抜くことができなかった剣をついに抜く者が現れた・・・』みたいな展開になるための物ですよね!! 」


「え・・・」


「もーーー! ユースケ君ちゃんとやってください!! 」


「え?」


「もーーーーーー!! 」

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