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始動

 商店街は日差しが傾くに連れて賑わいを大きくしていた。彼はその喧騒の中に紛れることはせず、人々の目から隠れるようにして通っていった。彼は視線が怖かった。ありもしない視線を作り出している。その線の先には、自分の腕があった。

 罪深き腕、彼はこの腕に潜む悪魔に怯えている。

 コンサイバーだということが知られてしまったら、私はたちまち処刑される。残忍で、悪魔を殺すかのような方法で。

 自然と彼の歩みは早まっていた。早く出たい。早くこの場所から逃げたい。この世界から逃げたい。

 誰かに肩を掴まれた。彼の心臓が跳ねた。

「あなたが依頼主ね」

 彼は怯える目で彼女を見た。

 依頼主とは、彼の事を指している。彼はアンチコンサイバーの事を聞きこの街を訪れ、CONネットワークを利用してアンチコンサイバーとコンタクトを取り、待ち合わせ場所へ向かっている最中であった。

 彼は何も言えなかった。ただただ、この女の目が怖かった。笑みが怖かった。

「ついてきなさい。私は例の組織じゃないから、安心して」

 商店街から外れた辺りで、彼女はひとりでに話し始めた。

「例の掲示板で募集を始めて、一番最初に来たお客さんがあなたよ。これは幸運なことね。一番目って素敵な事だしね。あ、私は近藤っていう名前ね」

 彼は近藤に先導されるがまま、何も言わなかった。

「最近、連続殺人事件があったんだけどね。なんとそれを解決してみせたのが戒ちゃん。公にはなってないけど、戒ちゃんの活躍でピタって殺人事件が止まったのよ。まあ、悲劇は最後起きたんだけどね。これだけは話しておかなくちゃって」

 近藤は今までよりも真剣な口調になった。

「あの事件の犯人、能力者だったんだけど、能力が消えたショックで自殺しちゃったの。日常が大きく変わったからね。私は驚いたけど、確かに、能力が消えるっていうのは自分の個性の死亡に関わってくるから、それに彼女は耐えられなかったんでしょうね。彼女っていうのは犯人のことなんだけど」

 近藤は彼の返事を待たずに、次々と話していった。

「能力を消すっていうのは興味本位でやってはいけない。それだけは分かってほしいんだけど、あなたがここに尋ねてきた理由は興味本位、ではないわね」

 試すように近藤は言って、二階建ての家の前で彼女は足を止めた。

 彼は大きく頷いた。始めからそう決まっていた事だった。

「それならいいの。じゃあちょっとまってね」

 近藤は家の中に入っていった。

 もうすぐ、この腕にまとわりつく悪魔が消える。ただそれだけで、彼は喜びで笑みが漏れた。見た目は普通の人間の手だが、そこに住んでいるのは人間の細胞ではない。悪魔だ。

 生きながら罪とされていたが、今日赦されるのだ。彼は近藤の帰りを待った。

「おまたせ」

 豪快に扉を開けて近藤が戻ってきた。その横には、近藤よりも背が小さく、そしてあのビデオに映っていた女子高生くらいの女性の姿があった。背中には剣を担いでいる。

「覚悟は」

 女性はそう言った。

 彼は再び大きく頷いた。

「能力消し屋の初仕事、頑張ってね戒ちゃん」

 近藤はそういって、戒の背中を押した。

「これからあんたの能力を消す。ついてきな」

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