Enjoy the life 神の選択
「君は、何になりたい?」
質問されている
真っ白な空間
ここは、何処だ?
俺は何故、こんな所に居る?
ああ、そうか…
俺は、死んだんだ
死んだ原因は、自殺
理由は覚えていない
「何になりたいの?」
目の前には青年
「…何が?」
「君は死んだんだ」
「…解っている」
「次は、何になりたい?」
「何って…」
「何に生まれたいのか?ってこと」
「…何でも良いよ」
「良いの?」
「理由は、覚えてないが、俺は自殺したんだろ?」
「まぁね」
「俺が理由無く、自殺するとは思えない」
「どうせ、生まれても何もない」
「で、もう生まれたくないと?」
「そうだ」
「面白いこと言うね」
「今、自分が冷静なのが不思議だ」
「ここは、何処だ?」
「天国と地獄と現世の狭間」
「…アンタは誰だ?」
「僕?僕は君達が言う神さ」
「神様…ね」
「アンタの言うことの方が、面白いよ」
「で、生まれなくて良いの?」
「生まれなければ、どうなる?」
「知らないよ」
「僕は、5000年ぐらい存在してるけど、「生まれたくない」って、言う人は初めてだし…」
「普通は、生きていた頃の罪で地獄か、褒美で天国なんだけど…」
「試してみる?」
「…勝手にしろ」
「じゃぁ、生まれないんだね?」
「ああ」
俺が返事をした瞬間、足下が暗くなった
「地獄より、禍々しいね」
「…君、どうなると思う?」
「知らねぇ」
「ま、頑張ってね」
想うことの無い俺は、目を閉じた
…暗い
足下は、さらに暗い
しかし、不思議と落ち着いている
「…何だ?」
心は落ち着いているのに、スッとしない
「どう?それは、君の心だ」
「君、本当は自殺じゃなくて、殺されたんだ」
「どういう事だ!?」
「僕が殺した」
「命の真実に、気付いてしまったから」
「命の真実!?」
「君は、道端に転がってる蝉の死体を見て思った」
「「コイツ達は何のために生きてるのか?」ってね」
「1週間しかない命を使って子孫を残す」
「その子孫も同じ事をくり返す」
「人も同じ」
「何の為に生きるのか?」
「決まった人生なんて生きていて面白いのか?」
「所詮、生きてる目的は蝉と同じ」
「子孫を残すこと」
「そして、君は命の循環、つまり、命の真実に気付いてしまった」
「で、俺を殺したのか」
「こんな面白いことを思う人間なんて、最近は少ないよ」
「君の足下にある物、それが命の真実だ」
「君は、地獄にも天国にも行かない」
「生まれるわけじゃない」
「生き返る」
「死ぬ前の時間に」
「何でだ?」
「命の真実に、気付いてしまった者に対する罰だから」
「永遠にその時間を彷徨うんだ」
「何故、罰を受けなければならない?」
「それが、僕の選択だから」
「バイバイ」
「君に、一言だけ助言をあげるよ」
「Enjoy the life」
…それが、19463847日前の出来事だ
いや、何日前は正しくはないな
もう、ずっと動かない時間の中にいるから
読んでいただきありがとうございました