『速記力を高めてくれるお地蔵様』
讃岐国の真光寺という寺のお地蔵様は、頭痛に霊験あらたかだと評判で、近郊はもちろん、遠方からも参拝者が絶えないのでした。そのせいで、隣村の妙光寺という寺のお地蔵様は、誰からも顧みられず、妙光寺の和尚さんにとっても村人たちにとっても、頭痛の種でした。頭痛の種を取り除くいい方法はないでしょうか。
ということで、お地蔵様拉致計画が実行されました。真光寺のお地蔵様は妙光寺に連れてこられ、まあそのこと自体も問題といえば問題ですが、かわいそうなのは妙光寺のお地蔵様で、引きかえに、真光寺に連れていかれてしまったのでした。
もと妙光寺のお地蔵様は、住みなれた寺を離れたことよりも、村人たちに捨てられたことが悲しく、毎夜毎晩さめざめと泣きました。真光寺の参拝者は、お地蔵様が入れかわったことに気がつかず、毎日、列をなして訪れるのでした。もともと、お地蔵様は、人々の頭痛を治すためにいらっしゃったわけではないので、参拝者の頭痛が治ったのは、当人の気持ちの問題で、美人になりたいだの、速記力を高めてほしいだの、はっきりした基準があるわけではないので、そういうふうに思えたら、そうだというようなものなのです。もと妙光寺のお地蔵様は、大勢の参拝者から感謝され、夜泣きをすることも減り、真光寺のお地蔵様の評判は、高まり続けたのでした。
教訓:宝くじの高額当選者が出た売り場は、あやかろうとする客が殺到するため、販売枚数が増し、さらに高額当選者を出す確率が高まる、という話に似ている。




