狭間の招き
17時の帰りの鐘が鳴る
広場は徐々に白み
夜の帳が降りて行く
「やだっもっと遊ぶんだっ」
小学生の討至は
人懐こい白い野良猫の側で動かない
帰らないと怒られちゃうと
クラスメイト
「帰るよー討至くんも帰ろ?」
討至は顔を背けて動かない
クラスメイトの影が遠くなる
討至は帰りたくなかった
弟と喧嘩し母親に叱られたのだ
「母ちゃんは俺ばっか怒るんだ」
白猫が倒至の指を舐める
とっぷりと日が暮れ
倒至は心細くなり帰路に着く
近道しようと垣根を越えると
知らないお社の前に出た
睨む様に置いてある
恐ろしい獣の銅像に
身震いする倒至
「…っ母ちゃんっ」
泣きそうになりながら
抜けようとする
ふいに大きな前足が討至の
行く手を阻んだ
「童よ帰りたく無いのだろう?」
笑うように歪む獣の銅像
恐怖で声も出ない討至
白い影が獣の銅像に
体当たりした
「意地の悪い真似をするのね」
白装束の女が討至を
獣の銅像から引き離す
討至を逃がすまいと
飛び掛かる獣の銅像
白装束の女は銅像に絡み付き
重心移動で銅像を地面に
叩きつけた
地面にめり込む獣の銅像
「お行きなさいな」
白装束の女が討至の額を撫で
恐怖心を払うと
討至は頷き駆け出した
背後の社は消え失せ
懸命に走る倒至を
迎えに来ていた母と弟
手を繋ぎ家路に着く
狭間の社
「…お前は良いよな
俺だってたまには撫でて
欲しかったんだよ
精一杯微笑んだのに」
泥の付いた鼻先で
寂しそうな獣の銅像
「なら意地の悪い真似はしない事
私で良けれたまには撫でて
あげるわよ?」
事も無げに言う白装束の女
「…宜しく頼む」
上目遣いで見てくる獣の銅像
心地よい月夜の風が吹き
白装束の女が立っていた場所には
人懐こい白い野良猫
前足でちょいちょいと
獣の銅像をつついた




