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私は妖精の取り替え子だったけど、家族に愛されています

作者: 羽倉了
掲載日:2026/04/18

ディーハロイム公爵家の人間は美しい。

それが貴族の中で常識だった。

だが、長女であるアリーシャは平凡であった。美しい両親から生まれたはずなのにだ。

長男、次女は美しく、アリーシャだけが赤の他人のようであった。

だが家族はアリーシャを愛した。それがアリーシャにとって救いであった。

平民の孤児に美しい娘がいると噂を聞くまでは。

その娘は次女にそっくりであると。

それは両親の耳にも届き、そして判明した。

アリーシャと平民で孤児である娘は妖精の取り替え子であると。

アリーシャは、やっぱりね、と思う。

「あたしの名前はエミーって院長が付けてくれたんです」

優雅に紅茶を飲むディーハロイム公爵家の当主である、ウィリアムの前で、エミーは音を立てながら紅茶を飲む。

そのウィリアムの隣には微笑む妻のサラが座り、両隣には長男のベンジャミンとアリーシャの隣には次女のアンリエッタが座っている。

「これであたしも貴族令嬢かぁ」

しみじみに言うエミーにアリーシャはますます顔を伏せる。

「ドレスに宝石にお菓子にーー」

「君を引き取るつもりはないよ」

夢を語るエミーにウィリアムがにこやかに言った。

エミーは目を丸くし、アリーシャは顔を上げてウィリアムを見た。

「どうして!? あたしはこの家のあなたたちの本当の娘ですよ!?」

「うん。いらない」

「どうして!? どうしてですか!?」

「だって君、子供を生んでいるよね?」

ウィリアムの言葉にアリーシャとエミーが驚く。アリーシャは驚かないベンジャミンとアンリエッタを見る。サラは相変わらず微笑んで何を考えているのか分からない。

「それに今も子供の父親とは別の男性と付き合っているよね?」

「それはそのっ」

エミーは言葉に詰まる。

「貴族だからね。たとえ君が私の本当の娘だろうが調べるよ。それで君はいらない。さあお帰りを」

ウィリアムは近衛騎士を呼ぶ。

「お客様がお帰りだよ」

近衛騎士は抵抗するエミーを連れていく。

ウィリアムは紅茶を飲む。

(本当の娘ならば引き取りたかったが、あれは駄目だ。貴族は時には家を守るためには冷酷にならなければならない)

呆然とするアリーシャをウィリアムは目をやる。

(それに比べてアリーシャは公爵家の令嬢として育ってくれた。今時平民を養女にするのは珍しいことじゃない)

「お兄様が異常者でなくてよかったですわ」

アンリエッタはホッとする。

ベンジャミンがアリーシャの手を持ち上げると、そっと唇を落とした。アリーシャは突然のベンジャミンの行動に混乱する。

「好きなんだ。愛してるんだ。私の婚約者になってほしい」

「え!?」

「あらまあ」

サラはにこにこと微笑ましそうに笑う。

「お兄様ったら、お姉様に届く縁談の書簡を暖炉に焼べていたのよ」

「え!? そうなの? 私が平凡だからないばかりだと思っていたわ」

「とんでもないですわ。頭はいいしマナーも完璧。そういう所を見ている殿様にとってお姉様は人気なのですのよ」

「知らなかったわ」

「お兄様が殿様を千切っては投げ千切っては投げていたからですわ」

「そうなの?」

呆然とアリーシャはベンジャミンを見る。

「お兄様は私が妖精の取り替え子だと知っていたの?」

「知らなかった。だからずっと言い出せなかったんだ」

また指先にキスをするベンジャミンに、アリーシャは顔を赤らめるのだった。

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