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A5サイズのジップロック~致死量の絶望を飲み干して、ただ只管に生き延びた記録~  作者: 1129


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1/7

第1話 A5サイズのジップロックと、白い天井

これは

わたしがただ生きた記録。


私はただ生きていた。

生きるために。


どうか、この記録を残したかったのです。


そしてまだ私の傍に

A5サイズのジップロックはあって

私はまだ生き延びようとしています。

日常の気配が色濃く残る、ありふれた2Kの部屋。

いつもと変わらないはずのその空間で、私は茶色いカーテンを固く閉ざし、リビングのソファの下にへたり込んで泣いていた。


見上げるソファの上には、A5サイズのジップロックが置かれている。

パンパンに膨れ上がったその袋の口を開けると、中から数錠の薬が弾け飛んだ。

ザイラス、ソラナックス、サイレース、ハルシオン……。

市販薬ではない、精神を強制的にシャットダウンさせるための処方薬たち。私はシートから無感情に薬を押し出し、手のひらに乗せては、次々と胃の奥へ放り込んでいった。

これを飲めば、やっと楽になれる。その思いだけを信じて、涙を流しながら飲み続けた。




途中からの記憶はない。

ただ、後になって知らされた。あのジップロックに詰め込まれた膨大な量の薬を、私は無意識のまま、すべて飲み干していたのだと。

ぼんやりと水底のように滲んでいく景色の中で、私の時間は完全に途切れた。




——まぶしい。

次に目を開けたとき、真っ先に感じたのは、朝の寝起きのようなごく「普通」の目覚めの感覚だった。

ただ、視界に飛び込んでくる光があまりにも白く、強烈で、思わず目を細める。

そこは、カーテンで仕切られた無機質で狭い空間だった。

体を動かそうとして、違和感に気づく。両手も、両脚も、ベッドに固く固定されていて1ミリも動かせない。

「……っ」

声を出そうとした瞬間、喉の奥で「ごふっ」と異音が鳴った。


息苦しさはない。視線を下へ落とすと、自分の鼻と口から透明な管が伸びているのが見えた。

人の声は、まったく聞こえない。

ただ、私の左後方から、一定のリズムを刻む機械音だけが冷たく響いていた。

自分がどうなったのか、何もわからない。


ただ、私は目を覚ました。


薬は胃洗浄では間に合わないほど血液に溶け込み、脳死判定の少し手前までいった私が、なぜか今、この眩しい白い光の中で息をしている。

ベッドの傍らで親友がポロポロと涙をこぼしていたことや、「奇跡が起きた」という言葉を認識するのは、もう少し後のことだ。

この瞬間の私にあったのは、ただ「生かされてしまった」という圧倒的な事実だけだった。


あの、すべてを搾取され、尊厳を踏みにじられた「底なし沼」のような日々から、私はまだ、逃げ切れていない——。

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