表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放されたので世界の仕様書を読むことにした  作者: harap1239


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/13

第八話 増える声、変わらない位置


 朝から、街がうるさい。


 宿の一階。

 まだ昼前だというのに、人の出入りが多い。扉が開くたび、外の喧騒と埃っぽい空気が流れ込んでくる。


「完全にバレたね」



 朝から、街がうるさい。


 宿の一階。

 まだ昼前だというのに、人の出入りが多い。扉が開くたび、外の喧騒と埃っぽい空気が流れ込んでくる。


「完全にバレたね」


 リナがカウンターに肘をつきながら言った。

 視線の先には、こっちをちらちら見てくる冒険者たち。


「昨日の件だな」


「うん。

 “鋼尾を生かした後ろの男”」


 言い方が最悪だ。


「噂って、ほんと広がるの早いよね」


 そう言いながら、リナは楽しそうだ。

 こういう注目は嫌いじゃないらしい。


 その時、表示が重なって浮かび始めた。


【間接依頼:3件】

【相談希望:2件】

【成功率平均:低】


 ……一気に来たな。


「ねえアルト」


「言うな」


「全部断る?」


「選ぶ」


 即答。

 無差別に助ける気はない。


 最初に近づいてきたのは、二人組の若い冒険者だった。

 装備は新しいが、動きが固い。緊張が顔に出ている。


「す、すみません」


「簡潔に」


 言葉を選んでいる暇はない。


「次の遺跡探索で、仲間が死ぬか知りたくて……」


 またそれか。

 だが、目は真剣だ。


 表示を見る。


【遺跡:旧水路】

【死亡予測:高】

【原因:判断遅れ】


「答えは?」


 リナが横から覗き込む。


「死ぬ」


 即答。

 空気が凍る。


「でも」


 一拍置く。


「全滅じゃない」


 二人が息を飲む。


「入口で揉めるな。

 決断を一人に集中させろ」


「それだけで……?」


「それだけでいい」


 彼らは何度も頭を下げて去っていった。


「はい一件終了」


 リナが指を一本立てる。


「楽勝だね」


「楽ではない」


 次に来たのは、見慣れた顔だった。

 鋼尾の一人。今度は単独だ。


「また来たの?」


「文句言いに来た」


 リナが笑う。


「冗談だ」


 男は苦笑した。


「他の連中が、相談に来いってうるさくてな」


 やはり、波及している。


「俺たちは、どういう扱いだ?」


「利用されてる」


 正直に言う。


「だが、騙してはいない」


 男は少し考えてから、うなずいた。


「それで十分だ」


 去り際、男は振り返る。


「……仲間、増えたな」


 リナが俺を見る。


「だってさ」


「勘違いだ」


「でも」


 彼女は少し声を落とす。


「一人じゃ、回らなくなってきてない?」


 否定できない。

 表示の数が、それを示している。


【同時進行予測:上昇】

【負荷:増大】

【補助要員:有効】


 俺は息を吐く。


「……考える」


「おっ」


 リナの目が輝く。


「ついに?」


「条件付きだ」


「はいはい」


 彼女は笑って、肩を叩いてきた。


「でもさ」


「なんだ」


「こういうの、悪くないよ」


 ざわつく酒場。

 行き交う人の声。

 それらが、今はうるさく感じない。


 使われない。

 だが、孤独でもない。


 この位置で、もう少しだけ続けてみるのも――


【新分岐:仲間加入可能性】

【解放条件:信頼】


 悪くない。

評価ポイント、ブックマーク、感想をお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ