表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放されたので世界の仕様書を読むことにした  作者: harap1239


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/13

第十三話 進むために、止める



 動かない地面ほど、信用ならないものはない。


 俺は、足元の土を小石で叩いた。

 音は返ってくる。

 だが、返り方が鈍い。


「踏み固められてない……いや、違うな」


 地面が“ある”ことと、

 “支える”ことは、別だ。



 動かない地面ほど、信用ならないものはない。


 俺は、足元の土を小石で叩いた。

 音は返ってくる。

 だが、返り方が鈍い。


「踏み固められてない……いや、違うな」


 地面が“ある”ことと、

 “支える”ことは、別だ。


「全員、円になれ。間隔を空けろ」


 短く指示を出す。


 護衛たちはすぐに動いた。

 もう、疑う顔はない。


「重いものを中心に集めるな。

 馬車はこのまま」


「放置か?」


「置く」


 商人が唾を飲み込む。


「商品が――」


「命より軽い」


 言い切ると、反論は消えた。


 俺は周囲を見る。

 街道の端。

 雑草が、不自然に同じ方向へ倒れている。


「リナ」


「なに」


「あそこ、風向きがおかしい」


 彼女は目を細め、すぐに頷いた。


「……流れてない。

 吸われてる」


「だな」


 見えない“穴”。

 さっき馬車の後輪が沈んだ場所と、同じ感覚。


「じゃあ、ここは」


「境界だ」


 誰に言うでもなく、口に出た。


 次の瞬間、護衛の一人が声を上げる。


「待て! 足が――」


 沈む。


 ほんの数センチ。

 だが、確実に。


「動くな!」


 全員に叫ぶ。


 男の足元だけ、地面の色が違う。

 濃く、暗い。


「引っ張るな」


 反射的に手を伸ばした仲間を止める。


「力をかけたら、余計に沈む」


「じゃあどうする!」


 俺は息を吸う。


「重さを、散らす」


 リナが理解した。


「盾!」


「二枚。横に」


 護衛が盾を差し出す。

 俺はそれを地面に寝かせ、沈みかけた足の横に滑り込ませた。


「体重を、盾に預けろ。ゆっくり」


 男は歯を食いしばり、言われた通りに動く。


 地面が、わずかに戻る。


「今だ」


 二人が支え、男を引き抜く。

 完全に抜けた瞬間、さっきの場所が――消えた。


 そこには、何もない。


 穴も、影も。


 ただ、**“踏めない空間”**だけが残る。


「……助かった」


 男が座り込み、息を吐く。


 誰も、安堵の声を上げない。

 全員、理解したからだ。


 ここでは、一歩の判断が、命を分ける。


 遅れて、表示が浮かぶ。


【回避:成功】

【代償:認識負荷増大】


 頭が、少し重い。

 世界を“分かろう”とするほど、削られていく感覚。


 だが、分かったこともある。


「この異常は、ランダムじゃない」


 全員を見る。


「重さ、動き、意識。

 反応してる」


 商人が震える声で言う。


「……生きてる、みたいだ」


「近い」


 否定はしない。


「だから、歩き方を変える」


 俺は地面に線を引く。


「一列。

 俺が先頭。

 踏む場所は、俺が決める」


 誰も異議を唱えなかった。


 表示が、静かに更新される。


【行動権限:確定】

【判断速度:上昇】

【不可逆点:接近】


 助けられた。

 まだ、誰も失っていない。


 だが、はっきり分かる。


 次は、選ばされる。


 助けるか。

 切り捨てるか。


 もう、数字は教えてくれない。

評価ポイント、ブックマーク、感想をお願いします


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ