第一話 追放
――勇者パーティを追放された。
理由は単純で、実に分かりやすい。
「お前は役に立たない」
焚き火の向こうで、勇者レオンは一切の迷いなく言った。
剣聖、聖女、賢者。並び立つ仲間たちは、誰一人として反論しない。
――勇者パーティを追放された。
理由は単純で、実に分かりやすい。
「お前は役に立たない」
焚き火の向こうで、勇者レオンは一切の迷いなく言った。
剣聖、聖女、賢者。並び立つ仲間たちは、誰一人として反論しない。
俺、アルト・グレイは“鑑定士”だった。
敵を殴れない。回復もできない。魔法の才能もない。
代わりに、相手のスキルや弱点、成長限界を数値で読み取れる。
――はずだった。
「鑑定結果が曖昧すぎる。
“成長余地・不明”“隠し条件・未解放”?
そんな情報、戦場で使えるわけがないだろ」
正論だ。
俺自身、そう思っていた。
だから黙って、荷物をまとめて、森の中へ放り出された。
追放テンプレ。
ここまでは、よくある話だ。
問題はその直後に起きた。
森を抜けた瞬間、視界が歪んだ。
《世界管理システムに接続します》
聞き覚えのない声。
頭の奥に直接、冷たい文字列が流れ込む。
《権限確認中》
《対象:アルト・グレイ》
《職業:鑑定士(非戦闘)》
《隠し権限:アーカイビスト――承認》
「……は?」
意味が分からない。
次の瞬間、世界が“読めた”。
木々の上に、透明なテキストが浮かぶ。
【名称:鉄樹】
【耐久度:312】
【弱点:根元から27cm地点】
【素材価値:中】
【伐採最適手段:斧Lv2以上】
俺は息を呑んだ。
鑑定じゃない。
これは仕様書だ。
世界そのものの、設計データ。
視線を下げると、自分自身にも表示が出ていた。
【アルト・グレイ】
【職業:アーカイビスト】
【権限:閲覧・記録】
【制限:干渉不可】
【備考:世界のログを読む者】
「……干渉、不可?」
つまり、戦えない。
直接、世界を変えられない。
代わりに、全てが分かる。
モンスターの出現条件。
スキルの真の効果。
成長限界の“突破条件”。
そして――
人間の末路。
街道を歩く商人の横に、赤文字が見えた。
【死亡予測:3日後】
【原因:盗賊団との遭遇】
【回避条件:北回りルートを選択】
背筋が冷えた。
俺は未来を知っている。
だが、直接は何もできない。
だから――記録する。
書いて、残して、誰かに渡す。
勇者でも英雄でもない。
戦場に立たない、ただの記録係。
だが、世界の“失敗例”を一番知っているのは俺だ。
「……なるほど」
追放された理由が、今なら分かる。
この力は、前線では邪魔だ。
だが――
「裏から世界を動かすには、ちょうどいい」
俺は歩き出した。
勇者パーティとは逆方向へ。
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