愛されない子
麻美が誕生したのは、父の年に1番大切にしている日。町一の祭りの開かれる日で、小さな町が賑う数少ない日であった。
その様なおめでたい日に生まれながらも麻美の出生は祝福をされなかった。
というのも、麻美の父、祐一は町の長をしており、祭りは腕の見せ所。そんな日に生まれた麻美は何ともタイミングが悪く、また、昔ながらの風土から、せがれにと男子を望んでいた祐一にとって、麻美は都合の悪いもの以外何ものでもなかった。
また、麻美の容姿も宜しくなかった。
鼻は潰れ、目は重たい一重でしかも吊り上がっており、全体的にぷっくりとしていて、お世辞にも可愛いと言える容姿では無かった。それが赤ん坊だとしてもだ。
麻美の母、詩織は、子を3年も待ち望んだ。
その間2度もの流産という悲しい経験をしたが、それでも、田舎の小さな町の長の子は男の子が望まれたし、子よりも祐一への愛が強く、また、周りの目を気にする詩織にとって、麻美は可愛い自分の子では無かった。
実の両親でさえそうなのだから、周りがより可愛がるはずもない。
あの見た目は何だ。
跡取りになれない女の子で、しかも不細工で可哀想に。
麻美を一目見て抱き上げる親族は1人もいなかった。
病院から出た後も、広い庭のある立派な一軒家の奥の小さな隠された部屋で1人ぼっちで1日の大半をすごし、泣いてもあやしてくれる人もおらず、オムツの世話、最低限のミルクと入浴とで、生きていられるギリギリの世話の中、麻美は育てられた。




