第71話 アキバデート Ⅱ
「んじゃ、そろそろ行きますか」
俺達は駅前すぐにある大手の家電量販店のビルに入った。
冷房がガンガン効いており、家電量販店特有のにおいが漂っている。
「見た感じ、お店が沢山あるみたいだけど、ここが一番良いの?」
「あぁ。デスクトップなら、パーツを買って組むのもありだけど、ノートパソコンなら、組みあがったのを買ったほうがいいと思う。なら、大手一択だ」
「なるほど」
「あとはOSだな。ウィンドーズか、ワックか」
「その二つはよく聞くけど、何が違うの? それぞれ利点があるのよね?」
「そうだな。ウィンドーズのメリットは、対応ソフトの多さだな。大半のユーザーがこっちを使っているから、使用可能なソフトも多いんだ。ワックは使えるソフトは少ないけど、デベロッパーには重宝されてる。それにセキュリティも固くて、ウイルスに感染しづらい。ただ、やや上級者向けだから、俺的にはウィンドーズをおすすめするかな」
「そうなのね……」
由姫はしばらくの間、近くにあったPCをじっと見た後、なにやら意を決したように振り向いて
「ね、ねぇ、貴方はどんなパソコンを使っているの?」
と言った。
「え。どれだったかな。二年前に買ったやつだから、同じ機種はさすがにおいてないと思うけど」
「そ、そうなの……」
彼女の声はなんだか残念そうな感じだった。
もしかして、俺と同じ機種を買いたかったのだろうか。
俺は苦笑いを浮かべた。携帯なら、カップルで同じ機種を買うなんてことはあるけど、パソコンは……。
「ありがとうございましたー」
結局、由姫は大手メーカーの薄桃色のノートパソコンを買う事にした。
由姫が支払いをする横で、俺は店員から紙袋に入れられた袋を受け取った。
「ちょ、なんでアンタが受け取るの?」
「え」
言われて気づく。たしかに。なんで、俺、店員からノートPCを受け取っているんだ?
自分でもびっくりだ。おそらく、未来で由姫とのデートの時は、重いものは全部俺が持っていたから、ついその癖が出てしまったのだろう。
俺は少し考え
「結構重いし、持つよ。この後、一緒に遊ぶんだろ?」
「そ、そうだけど……」
由姫は口を小さくもごもごと動かすと
「じゃ、じゃあ、お願い……」
と消えそうな声で言った。
「用事も済んだし。じゃあ、二度目のデートに出発しますか」
「で、デートじゃないって言ってるでしょ!」