《未来》御神静香(大人の姿)Ⅱ
御神さんの来訪は週末の夜に決まった。
一緒に外でご飯を食べに行くのを提案したのだが、なんでも彼女の要望で、我が家でホームパーティをするということになった。
由姫の友人か……。
以前、ちょっとした拍子に彼女のLIMEの連絡先を見る事があったのだが、連絡先は殆ど無かった。
言っちゃ悪いが、あまり友人は多くないらしい。
いったいどんな人なんだろうか。その日は定時で仕事を終わらせ、俺は急いで家に帰った。
「ただいま」
「おかえりなさい。ごめん、料理を並べるの手伝って」
キッチンに行くと、そこには大量の料理に囲まれた、エプロン姿の由姫がいた。
「す、凄い量だな」
「うー。ごめんなさい。あれも作りたい、これも作りたいってなって、止まらなくなって」
お酒のつまみというより、これでは満漢全席だ。俺は苦笑いを浮かべながら、料理をテーブルへと運んだ。
『ピンポーン』
「来た!」
丁度、料理を並べ終えた頃、インターフォンが鳴った。
由姫の後ろをついていく。
「おじゃまします」
たしかに。由姫が美人すぎると言うのも頷ける。
癖のないセミロングの黒髪に、まるで人形のような端麗な顔つき。
由姫とはまた別の美人さを持っている和風美人がそこに立っていた。
スーツ姿の似合うすらっとした長身。いや、背はそれほど高くないのだが、顔が小さくスタイルが良いせいか、スラっとした長身に見える。
「ごめんなさい。急に仕事が入って。そのまま来ちゃった」
「大丈夫です。スーツ、預かりますね」
ここで初めて、俺と目線があった。
彼女は軽い笑みを浮かべると
「はじめまして。御神静香と申します」
と深々とお辞儀をした。
「す、鈴原正修です」
俺もつられて深々とお辞儀をする。
緊張のせいで、危うく舌を噛みそうになった。
彼女の両親に挨拶に行くことは無かったが、ある意味今日がそれに近いのかもしれない。
「今日はわざわざお招きいただきありがとうございます。こちら、つまらないものですが」
赤坂にある洋菓子屋の有名なクッキー缶だった。
「す、すみません、わざわざ」
お互い腰を低くして、ぺこぺこしまくっていると、それを見た由姫がぷっと笑うと
「二人ともかしこまりすぎですよ。もっと軽い感じで接してください」
と言った。
「そうですね。では、少し肩の力を抜かせて貰います」
リビングの机には、既に由姫の手料理が並べられていた。
「わ。由姫ちゃんの料理を食べるの久しぶりだから、楽しみです」
「昔より腕が上がってますから。楽しみにしてください」
俺は冷蔵庫を開け、冷やしてあったお酒を幾つか取り出した。
「御神さん。お酒はどれにしますか?」
「では、缶チューハイを適当に。度数の高いお酒以外なら何でも大丈夫ですから」
そう言って彼女は、レモンハイを手に取った。
「それでは、鈴原さんと由姫ちゃんの結婚を祝福しまして……乾杯!」
「「乾杯」」
それからしばらくの間、俺は御神さんと由姫の思い出話を聞かせて貰った。
二人の馴れ初め。
七某学園という学力至上主義の高校の話。
由姫の同期の女の子がいきなり生徒会を辞めて、新しくメンバーを募集することになった苦労話。
お転婆な副会長の話。最近はフリーアナウンサーとして、活動しているらしい。
由姫がこれだけ信頼しているということは、きっと彼女は素晴らしい生徒会長だったのだろう。そんな気がした。




