表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/132

第68話 放課後の歓迎会 Ⅱ

「それじゃあ、次は由姫ちゃん」



「…………………………」


 由姫はすぐ横のカエデを見る。こてんと首を小さく傾げて、質問を待つカエデと目を合わせ


「鈴……」


 と、そこまで言って、もにょもにょと口を動かすと


「ちゅ、中学の時、塾とか家庭教師とかついていた?」


 と言った。


 あれ。今、質問変えた? 俺の名前が出ていたような……。


「中一の時は塾に行ってたんすけど、中々時間が合わなくて二年になる前に辞めちゃったっす。あとは全部自分で勉強っすね」


「そうなんだ。それで三位……凄いわね……」


「いやー、まだまだっすよ。この学校、授業のレベルが高くて中学校とは大違いっす。もうすぐ中間試験ですし、本気で勉強しないと」


 カエデは苦笑いを浮かべながら言った。


「最後は俺か……」


 まいったな。質問と言っても思い浮かばない。コイツのことは大体知っているし、知らないのは中学時代だけで、それもこの前、マッグで聞いたし……

 俺が悩んでいると、副会長が俺とカエデを交互に見て


「そういえば、驚いたよね。鈴っちとカエデちゃんが幼馴染なんてさ」


「小学校が同じってだけですよ。そういうの、幼馴染って言うんですか?」


「どうなんでしょう。幼馴染の定義は小さい頃からの知り合いっていうわけですから……小学生を幼いと定義するかどうかによるのでは?」


 会長はちいさく首を傾げた。


「いやいや、もっと簡単な判別方法があるって」


 副会長はちっちっちと指を動かす。


「『将来、○○くんのお嫁さんになるー』って約束をしたかどうか。していたら幼馴染、してなければ、ノット幼馴染」


 なんだそのトンデモ論。


「なるほど……」


 カエデは小さく頷くと


「なら、幼馴染っすね」


 とあっけらかんと言った。


「ごほっ! ごほっ!」


 りんごジュースを飲んでいた由姫がむせた。


 いや、そんな約束した覚えねぇぞ。

 俺がぎょっとした顔で横を向くと、カエデがパチンとウインクをした。演技だから話を合わせろという事か。


「えー! その辺りの話、聞かせて聞かせて!」


 恋バナ好きな副会長が食いついた。


「子供の頃の約束ですよ。もう覚えてないです」


「えー。薄情者だー。カエデちゃんはどうなの? 成長した鈴っちに好きって気持ちはないの?」


 カエデは俺の方をちらりと見ると


「うーん……好きか嫌いかと言えば、大好きっすね」


 顔をほんのり赤くしながら、照れくさそうに小声で言った。


「きゃっきゃっきゃ」


 副会長は大興奮だ。はしゃぐ赤ちゃんみたいな声が出ている。


 しかし、急に真顔になると


「あれ? でも鈴っちは由姫ちゃんが好きなんだよね……。カエデちゃんは鈴っちの事が好き……。それで、由姫ちゃんとカエデちゃんは生徒会の仲間……うわ! 三角関係じゃん!」


 今更気づいたのか。


「すごいすごい。菅田っちがよくやってるゲームみたいな展開だ!」


「俺がやるのは純愛系だ。一緒にするな」


 菅田先輩が眼鏡をくいっとしながら否定した。いや、俺も純愛なんすけど。


「うちの生徒会で昼ドラが始まる可能性があるってことかぁ……。鈴っち。お腹に雑誌入れといたほうがいいよ」


「俺が刺される前提ですか……」


「もし殺されたらアタシに任せて。現役女子高生探偵として、犯人は見つけてあげるから。真実はいつも一つ!」


 どこのコ〇ン君だ。


「というか、そもそもの話、生徒会内の恋愛って、OKなんすか?」


「清い交際ならOKのつもりだったんですが……」


 会長は苦笑いを浮かべながら、俺と由姫とカエデを順番に見る。


「やっぱり禁止にしたほうがいいかもね……」


「えー! つまんないよ! 恋愛禁止反対!」


「そうっす! 恋愛は自由でないといけないっす!」


 ぶーぶーと不満げな顔でブーイングをする副会長とカエデ。

 その横で由姫がなにやら青い顔で


「なんとかしないと……なんとかしないと……」


 と小声で呟いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ