第67話 放課後の歓迎会 Ⅰ
「シーフードサラダと、かりっとポテトと……あと、ドリンクバーを六人分お願いします」
夕方。その日の生徒会の業務が終わった俺達は、学校近くのザイゼリアに来ていた。
カエデの歓迎会をしようと、副会長が提案したのが発端だ。
初めはカラオケに行きたいと言っていたのだが、学校帰りのカラオケは校則違反だと由姫が反対。折衷案でザイゼリアとなった。
この時間帯は半分以上が学生客だった。学校から近いこともあり、俺達以外の七某学園生ちらほらもいる。
俺達は一番奥のテーブル席に案内され
会長、副会長、菅田先輩。
向かい合って、由姫、カエデ、俺という席順で座った。
カエデの歓迎会なので、彼女は中央だ。
「それじゃあ、先にドリンクを取ってきましょうか」
うぐ……。わ、ワインが飲みたい。
ワインをデカンタで飲む仕事帰りのサラリーマンを横目に見ながら俺は、ドリンクバーでジンジャエールをコップに注いだ。
全員にジュースが行きわたった。会長は皆を見渡すと、アイスティーを入れたカップをかかげ
「それじゃあ、新妻さんの歓迎と、生徒会の今後の活躍を祈念しまして……。乾杯」
「「乾杯」」
ビールを飲むような感じで、俺はジンジャエールを半分ほど喉に流し込んだ。うん。これはこれで美味い。
「それじゃあ、さっそく始めよっか。生徒会に入会する際の通過儀礼。アタシ達の質問にカエデちゃんが答えるゲーム」
「え。そんなのがあるんすか」
「もちろん。これをやらないと、真の生徒会メンバーにはなれないのだー!」
副会長。俺と由姫も、それ、やってないっす。
「わかったっす。どんな質問でもどんと来い!」
「おぉ、勇者だねぇ。じゃあ、軽くジャブから」
副会長は邪悪な笑みを浮かべると
「中学の頃、彼氏は痛っ!?」
横にいた会長が副会長の頭をパコンと叩いた。
「理―沙―。後輩相手に、そういう答えづらい質問はしないって、約束したでしょ」
「じょ、冗談だって。顔が怖い怖い」
会長はにっこりと笑っていたのだが、副会長的には凄く怖い顔に見えるらしい。
副会長は慌てて
「じゃ、じゃあ、違う質問。関西の中学生って、学校終わりはどこに行くの? ザイゼとか?」
急に謙虚な質問になったな……。
「そうっすね。ザイゼ……もしくはマグドっすね。中学生はお金が無いんで、ドリンクバーだけで粘ったり」
「あー。やっぱそれは関東も関西も同じなんだ」
「そうみたいっすね。アタシは演劇の方が忙しかったので、友達とは学校の中でしか遊べなかったっす。だから、こうしてみんなでワイワイ駄弁るのに憧れていたっす」
カエデはにへらと嬉しそうに笑った。
「か、カエデちゃん……。ほら、アタシのぶんもポテトをお食べ」
副会長は目に涙を浮かべながら、自分の前に置かれていたポテトをカエデの方に差し出した。
「じゃあ、次の質問は静香にパス」
「あ、私?」
いきなり振られ、会長は少し慌てると
「じゃ、じゃあ……。兄弟はいるか、聞いてもいいかしら?」
と訊ねた。
「一人っ子っす。三年生の皆さんはどうなんすか?」
「私も一人っ子」と会長。
「うちは弟が一匹」と副会長。
一匹……。それだけで弟の苦労がしのばれるな。
「俺のところは妹が四人いる」と菅田先輩。
「「え!?」」
会長と副会長が驚きの声を上げた。知らなかったのだろうか。
「え。リアル妹? 空想上のじゃなく?」
「本物だ。中3と中1、そして小5の双子がいる」
「へぇえええ。ご両親頑張ったんすね」
「今更ながら凄い事実だよ。なんで言ってくれないの」
「聞かれなかったからな」
菅田先輩、色々と謎が多い人なんだよな……。
普段、中々喋らないから、声が渋くて、オタクで、仕事を完璧にこなすという情報しかない。
「やっぱお兄ちゃんって呼ばれてるんすか?」
「みんな違う呼び方だ。お兄ちゃん、兄貴、にーにー、クソ眼鏡」
ん? なんか、一人、ツンデレ妹いなかった?
「俺の話はこれくらいでいいだろう。今日は新妻に質問をする会だ」
「あー。そうだった。じゃあ、次はビッグブラザーこと菅田っち」
「む。俺か……」
菅田先輩は質問を考えていなかったのか、しばらく考え込んだ。そして
「好きなアニメや漫画はあるか?」
「少年漫画系が好きっすね。有名どころは大体読んでますし、アニメも視てるっす。昔から男の子向けの作品のほうが好きなんすよね。プリキ〇アより仮面ラ〇ダー派だったんで」
「なるほど。ちなみに俺はプリキ〇ア派だ。あれのせいで、道を踏み外した。だが後悔はしていない」
踏み外した自覚あるんかい。




