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第54話 新しい生徒会メンバー

「ふぁ……」


 私、有栖川由姫は目覚ましを止めると、小さく欠伸をした。

 若葉祭から一週間が経過した。準備で忙しかった時間も終わり、日常が戻ってきた。


「おはよう」


「おう……」


 廊下で兄さんとすれ違い、最低限の挨拶を交わす。

 若葉祭りが終わってから、兄さんの私に対する態度が少し変化した。


 今までは、事あるごとに私をおちょっくてきたのだが、最近は何もしてこない。

 たまに鈴原君の過去の事を聞いて来たりするけど、彼の事は私も知らない。私が知りたいくらいだ。


 初めて兄さんに勝てたのを喜んでいたけど、よくよく考えると、鈴原くんの力が大きい気がする。


 次は私一人でも勝てるようにならないと。洗面所で顔を洗いながら、そう思った。


 でも、アイツ、私が何も言わなくても、助けに来てくれるのよね。


 私の心を読んだように先回りしてくるし。やっぱりエスパーか何かなんじゃないかしら。

 冷水で顔を洗ったはずなのに、タオルで水を拭く私の顔はなんだか熱かった。


 私、ちょっとアイツに頼りすぎ? 何かあると、アイツならどうするんだろうってすぐ考える私がいる。


 なんというか、私の爪や牙みたいなものが、アイツによってそぎ落とされているような気がするのだ。


 だけど、そのお陰で兄さんに勝てたというのは皮肉な話でもある。


「あーもう。もやもやする!」


 決めた! 鈴原くんから少し距離を取ろう。

 アイツは私の味方だと言ってくれたけど、私にとって彼は、超えるべき目標であり、ライバルでもある。


 このままアイツの優しさにつけ込んでいたら、駄目になる気がする。今こそ、緒を締めなおさないと。


 それに、もうすぐ中間試験だ。入学試験では負けたけど、次こそは学年一位になってみせる。


 制服に付いた銀の七芒章をちらりと見る。来年こそは、これを金色に変えてみせる。そう思いながら、私は軽く朝食を食べると家を出た。


 時刻は七時二十分。いつもより三十分ほど早く出た理由は、今日から生徒会に新しく入るメンバーである新妻さんに、学校案内をしてあげるためだ。


 新妻さん……。入学試験で三席だった子か。たしか、女の子よね……?

 どんな子だろう。可愛い子だったりするのかな。


 ふと、不安な気持ちがよぎった。


 もし、私がアイツと距離を取ったら、その子に横取りされたりしないかな……。アイツ、困ってる子に優しいし、頭も良いし、顔もまぁ良い方だし、モテるんじゃ……。


「って、何考えてんの私!」


 取られるとか取られないとか、なんでそんな心配しないといけないのよ。


 それに、アイツは私の事が好きって明言したし。そんなポッと出の女の子に心移りしたりしないでしょ。



 生徒会室の扉の前に立つと、既に中が賑わっていた。集合時間五分前だけど、どうやら皆、既に集まっているようだ。


「おはようございます」


 私は扉を開き、中を見渡す。


 どうやら、私が一番最後だったようだ。


 生徒会長の御神先輩。

 副会長の下園先輩。

 会計の菅田先輩。


 そして、鈴原く……


「え……」


 私の喉からひゅっと声が漏れた。


「いやぁ、まさかまさやんが同じ高校。しかも、首席合格してるとは思わなかったっす」


「おま、近いんだよ。ちょっと離れろ」


「えー、前はずっとこれくらいの距離感だったじゃないすか」


「小学校の話だろ!」


「照れてるんすか?」


「て、照れてねぇし……」


 私は頭の中が真っ白になった。


 そこには、ソファに座った鈴原くんの後ろから、べっとりとくっつく女子がいた。


 彼女は懐いた犬のように、鈴原くんに顔を近づけている。

 ていうか、胸、鈴原くんの肩に当たってない?


 え……。ダレ……。ナニシテルノ……。


「あれ。由姫ちゃん来てるよ。あれ? なんか、いつもにも増して白くない?」


 下園先輩が私に気づき、遅れて他の皆がこちらを向く。


 鈴原くんはぎょっとした顔をすると


「あ、有栖川……。これは違……」


 まるで浮気がバレた男のように焦り始めた。


「お、オハヨウゴザイマス……」


 私の口から、機械のような声が出た。


 あれ? 挨拶ってさっきやったような……。なんだろう。思考回路がショートしていて、何も考えることが出来ない。


 その後、新妻さんに自己紹介と学校案内をやったのだけど、どんな感じだったか覚えていない。


 気が付けば私は教室に座り、授業を受けていた。え? 時、飛んだ?

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面白くなってきましたなあ笑
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