表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/132

第96話 相談箱 Ⅰ

「なんですか、これ?」


 放課後。生徒会室に全員が集まったことを確認すると、会長は隣にある倉庫から、五十センチほどの四角い箱を持ってきた。


「生徒会相談箱です。一般生徒の要望や悩み事を書いて、この箱に入れて貰うんです」


「そんなものあったんですか? というか、ホコリ被ってますけど」


「前生徒会長の意向で相談箱は封鎖されてましたからね」


 前生徒会長ってことは、優馬か。昼休みに会った彼の顔が頭をよぎった。

 まぁ、アイツは生徒の相談を聞くタイプじゃないしな。


「『面倒くせーから廃止』って、就任翌日に倉庫に放り投げていました」


 まんま想像通りだった。


 アイツが気にしていたのは、OB会の人達の評価だからな。

 就任後の生徒の評価は特に気にしていなかったのだろう。


「だけど、大変なのは本当なの。一昨年は相談箱を稼働させていたそうなんだけど、気軽に相談できる分、凄い量の相談が来るらしいわ。あまりの多さに、当時の生徒会長が過労で倒れたって噂も」


「マジすか……」


 なんだか急に、目の前の四角い箱が、特級呪物のように見えてきた。


「それについて、私から提案があります」


 手をあげたのは由姫だった。


「深刻度によって、記入用紙を分けて貰うのはどうでしょうか?」


 由姫が鞄から取り出したのは、赤、黄色、青の三枚の用紙だった。


「青の用紙は、それほど重要では無い、要望レベルのものを。

 黄色の用紙は一般的な相談。出来れば解決して欲しい困りごととかを。

 赤の用紙は絶対に解決して欲しい相談。いじめとか、学園生活に支障が出るような相談を記入して貰うんです」


「なるほど……。相談者に深刻度を決めて貰うんですね」


「はい。昔の生徒会が失敗したのは、全ての相談に対応しようとしたからだと思うんです。なので、深刻度の高い相談だけをこなして、深刻度の低い相談は余裕がある時だけ、対応すれば良いかと」


 由姫は会長のほうをちらりと見て


「ど、どうでしょうか……?」


 と緊張した顔つきで訊ねた。


「…………うん。面白いアイデアだと思います」


 会長はそう言って、小さく頷いた。


 そして、由姫の肩をポンと叩くと


「この相談箱のプロジェクトは、有栖川さんにリーダーになって貰おうと思います。有栖川さん。お願いできますか?」


「は、はい! 絶対に成功させてみせます!」


 由姫は姿勢を正すと力強く言った。


「ではさっそく、記入用紙の印刷に行ってきます」


 彼女は小走りで、印刷室へと駆けて行った。


「…………」


 会長、由姫のアイデアを「良いアイデア」ではなく、「面白いアイデア」と言ったな……。


 もしかしたら、会長も俺と同じく、由姫の提案の問題点に気づいたのかもしれない。


 俺はひそひそ声で話しかける。


「会長、気づいてますよね? 由姫のアイデアの問題点に」


「えぇ、まぁ。ですが、これも勉強だと思います。立派な生徒会長になる為には、失敗した経験も必要ですから」


 彼女も過去に似たような失敗をしたのだろうか。彼女は苦笑いを浮かべながら、頬を掻いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ