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《未来》負けず嫌いな彼女 Ⅱ

「な、なんで兄さんが……」


 一瞬遅れて俺も気づく。そうだ。由姫の兄だ。


 俺とは一度会っただけだが、彼の顔は鮮明に覚えている。


『はじめまして。有栖川優馬と申します。この度はお招きいただき、ありがとうございます。日本語を話すのは久しぶりなので、おかしな事を言ったらすみません』


 そう言って彼はキラリと白い歯を見せた。流暢に挨拶をする彼は、緊張の欠片も無い。


「すげぇな。テレビに知り合いが出てるの見るの、初めてかも」


「う、うん……。だけど、こんなのに出てるなんて……」


 俺も由姫も呆然としていた。


 そういえば、俺達と会った時、日本に用事があったと言っていた。もしかして、この番組に出演する為に、来日していたのだろうか?


 優馬の功績やクロスストリーマーズの概要が流れた後、若い女性インタビューア―と優馬の質問のやり取りが始まった。


『わー。凄くイケメンですね。ハリウッド男優かと思いました』


『はは。まぁ、よく言われます』


『すごく若く見えますが、歳は……?』


『二十八です』


『二十八!? す、凄いですね。ということは、クロスストリーマーズを創業したのは……』


『はい。二十歳の時になります。アメリカの大学に通いながら、会社を作りました』


『なるほど。こういう会社を作りたいというイメージはその時からあったと』


『構想自体は高校時代からありました。スマホが普及し始めた時、これからは気軽に動画が見れる環境になっていくと思って。やるなら今しかないと思っていました』


 彼は人当たりの良い笑顔を見せながら、質問に答えていく。


 そして、番組も大詰めになり、お決まりの質問がインタビューア―から飛び出した。


『ズバリ、成功の秘訣は何なのでしょうか!?』


 優馬は顎に手を当て、少し悩む素振りをみせると


『人に恵まれたからの一言に尽きますね。私の成功は、私を支えてくれる人達が頑張ってくれたおかげですから』


 とさわやかな笑みを浮かべながら言った。


「絶対嘘! 兄さん、そんな事、一ミリも思ってない!」


 由姫はガルルルと威嚇する犬のような表情で叫んだ。


 由姫の兄貴嫌いは筋金入りだな。昔、良くからかわれたと言っていたし、その恨みなのかもしれない。


 番組が終わり、コマーシャルが流れ出した。


「なんか、あっという間だったな」


「そうね。上手く猫被っていたと思うわ」


「番組に出た理由は、会社のイメージアップかな?」


「そうだと思う。わざわざ顔を出してきたってことは、お茶の間の主婦層をターゲットにしようと思ったんでしょ」


 なるほど。


 俺も彼と同じ若社長だが、あくまで俺は父さんの会社を引き継いだだけだ。


 対して、彼は単身渡米して、十年足らずでこれほどの会社を作ったのだ。


 なんだろう……。ちょっと男としての敗北感……。


 俺が落ち込んでいると、由姫はそれに気づいたのか


「どうかしたの?」


 と訊ねてきた。


「いや、俺と一歳しか変わらないのに、すげぇなぁと思って」


「そんなことない。正修さんのほうが、凄いわよ」


 由姫は頬を膨らませながら、ぷんすかと怒りをあらわにした。


「いや、そう言ってくれるのは嬉しいけどさ。俺が勝てる要素、一つもないぞ」


 俺は苦笑いを浮かべながら、頬を掻いた。


 ルックスも、財力も、学歴も、彼のほうが上だ。


 会社の規模だって、今では彼の方が上だし。


「あるでしょ。貴方が勝ってるところ」


「え? …………………………あ、優しさとか?」


「それもあるけど、もっとわかりやすいこと!」


 え。まじで分からない。俺が勝ってるところ? 本当にあるか?


「もう。言わなきゃ分からない?」


 由姫はやれやれといった顔でため息をつく。


 そして、こてんと俺のほうに寝転がってきた。


 彼女の頭が俺の膝の上に乗り、膝枕のような状態になる。そして、俺の顔を見上げながら言った。


「可愛いお嫁さんがいること」

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