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第80話 俺の家に美少女が2人いる Ⅰ

「うわ。こんなところにも毛が落ちてら」


 勉強会当日。


 俺はコロコロ(正式名称忘れた)で自分の部屋の床を掃除していた。


 ラッキーなことに、父さんは取引先の社長とゴルフ。母さんは町内会の旅行に行っているせいで不在。

 なので、今日は夜まで家にいるのは俺だけだ。


 勉強会は一階のリビングでやるつもりだ。

 大きなテーブルもあるし、気分転換用のテレビもある。


 なのに何故、自分の部屋を掃除しているか。

 それは、カエデがいるからだ。あいつの事だから、俺の部屋に入ろうとするかもしれない。


 小学校の頃、遊びに来た際には、俺の部屋でゲームをやっていたからな。

 まぁ、さすがに女子高生になった今、男の子の部屋にずかずか入ることは……


「………………………………」


 いや、入るな。アイツなら。

 入って、ベッドの上で寝転ぶタイプだ。


 残念なことに、俺の部屋には鍵がついていない。侵入を止めるのは不可能だ。

なので、入られる事を前提に掃除を進めてきた。


 床のゴミや汚れ、ヨシ!

 ゴミ箱の中身、ヨシ!

 PCのパスワード設定ヨシ!

 布団にファブリ〇ズを散布、ヨシ!


 現場猫ポーズを取りながら、最終確認を行う。


 そうだ。あとは換気をしなければ。俺が窓を開けようとした時だった。


『ピンポーン』


 玄関のチャイムが鳴った。


 早いな。時刻は十三時四十五分。約束は十四時なんだが。


 カエデは俺の家を知っているが、由姫は知らない。なので、二人は駅で待ち合わせをして、一緒に俺の家に来るということだった。


 階段を降り、玄関の鍵を開ける。


 扉を開くと、そこには私服の美少女が二人、並んでいた。


 由姫はこの前のデートと同じ服装だった。違うのはポーチではなく、学校鞄を持っているところ。


 カエデは短パンにヘソ出しコーデ。

 そして靴は裸足にサンダルという、これから海に遊びに行くつもりかと思えるほどの夏夏しさを感じる服装だった。


「おっじゃましまーっす」


 カエデは猫のように、俺の隣をするりと抜け、中に入った。 

 サンダルを脱ぎ、裸足で一階を歩き回ると


「わー。懐かしいっす。変わってない」


 両手を広げながら、くるりと回った。


 由姫は「お、おじゃまします」と小声で言うと、おそるおそる中に入る。

 まるで借りてきた猫のようだ。


「両親はいらっしゃらないの……?」


「あぁ。二人とも用事があって出かけてる。多分返ってくるのは夜かな」


「そうなんだ……」


 俺の両親がいない事が分かった途端、由姫はいつもの態度に戻り


「はい。これ、親に渡しておいて」


 と、左手に持っていた手さげ付きの紙袋を俺の胸につきつけてきた。


「なにこれ?」


「洋菓子。普通、他人の家にお邪魔する時は、お土産を持っていくものでしょ」


 いかないんじゃないかな。少なくとも子供のうちは。

 いや、でも由姫みたいな上流階級では普通なのか?


「ありがとう。渡しておくよ」


「ん。賞味期限は結構長いやつだから、皆で食べて。すごくおいしいやつだから」


 俺が紙袋を受け取ると、由姫は満足げに頷いた。


「それじゃあ、さっそく遊ぶっす!」


「最初は勉強だって! って、なんで階段上がろうとしてんだ! リビングはこっち!」


 カエデが階段を登ろうとしていたため、俺は慌てて引き留めた。


「え。まさやんの部屋でやるんじゃないんすか?」


「しねぇよ。小学生じゃないんだから。そっちのリビングでだ」


「えー」


 不満そうに、カエデは頬を膨らませた。


「昔みたいに遊びたいっす。床に座ってカードゲームしたり。ベッドに座りながら、ス〇ブラ64したりしたいっす」


 どっちももうねぇよ。いつの時代の話をしてんだ。


 と言おうと思ったが、この時代じゃまだそれほど古いゲームではないのか。


「お前はもう少し警戒心を持ったほうがいいぞ。男の部屋に入るって、相当リスキーな行動だからな」


 おっさんっぽい説教になってしまったが、これは言っておいた方がいいだろう。

 彼女が将来、俺以外の男友達の家に遊びに行った時のために。


「そりゃ、アタシだって、男の子の部屋に入る時は警戒くらいするっす」


 カエデはわずかに頬を染めて、照れくさそうに、にへらと笑うと


「まさやんだから信頼してるんすよ」


 と言った。


「っ………………」


 その表情は完全に恋する乙女のもので、演技だとわかっていたのに、どきっとしてしまった。


 役者ってすげぇ。


「だって、まさやんに女の子を襲う度胸とかないっすもんねー」


 うん。この煽りは演技じゃなくて、素だな。


「女の子を殴る度胸なら持ち合わせているぞ。顔面グーパン全然いける」


「わー! DV男っす! 有栖川さん、まさやんと結婚はやめといたほうがいいっすよ」


 そう言ってカエデは由姫の後ろに隠れた。


 お前もう、俺を応援したいのか、邪魔したいのか、どっちなんだ。


「あーもう! いい加減にふざけるのやめないと、帰るわよ!」


 夫婦漫才をしていた俺達にしびれを切らしたのか、由姫の怒号が響き渡った。

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