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パンドラの箱 ~黄昏に踊る鎮魂歌~  作者: るびん
Episode2:Pray of Marionette
16/41

シーン5:エスペランサ、再び(3)

 目覚めたのは、病院だった。

 周りには父さん母さん、そして楓。

 三人とも、僕が目覚めると同時に大泣きした。


「良かった、本当に良かった・・・・・・っ!」

「く、苦しいって・・・」


 余程心配だったのだろう、苦しいほどに僕は抱きしめられた。

 少しして、医師がやってきて僕の診断をする。


「もう心配は無いですな。ですが、二、三日は入院してもらいますよ」


 そりゃあ、頭を殴られているからね。その頭は包帯でぐるぐる巻きになっている。


「麻人君、一体何があったの?」

「・・・・・・え、えっと・・・・・・」


 困った。

 楓はともかく、父さんと母さんはエスペランサのことを知らない。

 どう説明したらいいものか・・・そう困っていると、さすがは楓か。


「無理しなくていいわ。今は、無事だったことだけでいいから」


 僕のそんな心情を察してくれたのだろう、そう言ってそれ以上詮索しようとはしなかった。

 だが、せっかくの彼女の思いやりも、とある人によってあっさりと打ち破られることになる。


「・・・悪いが、そうもいかないんだ」

「まあ来ることは予想していましたけどね、島崎警部」


 そう、島崎警部。

 ”切り裂きジャック21”の事件は彼が担当しているのだろう、話を聞いて飛んできたと思われる。


「警部、麻人君は意識が戻ったばかりなんですよ!」


 そう楓が噛み付くように言う。

 しかし、仕方ないだろう。


「すまん。しかし、相手は殺人鬼だ。いつ次の被害者が出るか分からん・・・だから、一刻も早く捕まえなきゃならんのだ。そいつと会っている可能性の高い霧島に話を聞きたい」

「・・・・・・」


 警部の言葉は最もだ。

 僕だって分かっているし、楓たちだってそうだろう。


「大丈夫です・・・ちょっとまだ頭がズキズキしますけどね」


 という訳で事情聴取が始まったわけだが。

 父さん母さん、楓にもちょっと部屋の外に出てもらった。楓は不満タラタラだったが、後で話すから、と耳打ちすることで一応は納得してもらった。


「また、エスペランサか?」

「はい」


 はじめはこの能力を信じていなかった警部も、先日の事件で認めてくれた。というより、認めざるを得なかったのだが。


「そうか・・・ということは、これからおまえ、もしくは周囲に関係のある人間が狙われる可能性が高いというわけだな?」


 実際、先の事件は僕らの通う高校内でのことだったし、親友までもが犠牲になったのだから警部がそう思うのも当然だ。

 しかし、今回は違う。


「それなんですが・・・被害者は喫茶店で隣のテーブルにいただけの人なんですよ」

「・・・何?」


 僕の返事に、面を食らったかのような島崎警部。


「それ以外は全く知らない人なんです」

「調書を見た限り、歳は24歳。学校のつながりとかでもないよな・・・」

「ですね」

「・・・・・・」


 学校の関係者ではないとは分かっていたのだろう、しかし僕が・・・いや、エスペランサが関係していることから僕の身近な人間だと思っていても不思議は無い。

 期待を裏切られた形になったからか、がっくり肩を落とす警部。

 とはいえ、僕には警部にとって重要なことがあるわけで。


「でも、僕は犯人に会いましたよ」

「おお、そうか!」


 途端に元気になった。相変わらず、単純で面白い人(超が付くほど優秀らしいが)だ。


「なんですが、顔が血で真っ赤に染まっていて、判別は出来ませんでした」

「・・・おまえ、よくそんなに冷静でいられるなあ?」


 ごもっとも。けど、冷静にもなるというものだろう。


「まあ、超常現象を地で行っているわけですし」


 ・・・っと、肝心なことを忘れるところだった。


「そう言えば、『切り裂きジャック21』は一人じゃないみたいですよ」

「なんだと!?」


 僕がさらりと言ったその言葉に、身を乗り出して驚く警部。そりゃあそうだろう、ニュースでもなんでも犯人は一人だと考えられていたのだから。

 そして僕はその根拠を話した。取り押さえたのにもかかわらず、もう一人に気付かず、後ろから殴られたこと。


「おまえ、なんつう無茶を・・・」


 警部が頭を抱える。

 そう言われても、何故かそうしなきゃいけない気がしたんだから仕方が無いじゃないか。


「しかし、共犯の女がいたとはな・・・そいつが見張りのようなことをしていたから今まで『切り裂きジャック21』が目撃されたり、証拠が残るようなことが無かったわけか・・・」


 とは言え、やはり僕には彼女の顔がほとんど見えていなかったのだが。


「いや、共犯がいたということが分かっただけで十分だ。これで犯人特定の可能性が広がる」


 まあそれも当然だ。何せ、一人で出来ることと二人で出来ることはまるで違う。それにより、捜査の仕方も変わってくるというものだろう。


「まだ頭が痛むだろうに、悪かったな。早く元気になれよ!」


 そう言って警部は目にも止まらぬ速さで部屋から出て行った。本当に慌ただしい人だな・・・まあ、一分一秒を争うのかもしれないのだから当然かもしれないけど。




 何はともあれ、これでまた悪夢が始まったかもしれないということになる。

 これからエスペランサが、何度僕に不吉な未来を見せるのかは分かるはずも無い。

 しかし、それを僕が変えることは出来るのだから・・・だから、逃げるわけにはいかないだろう。

 パンドラが与えてくれた希望。

 これを生かすことが出来るか否かは僕次第。

 もちろん、不安だ。だけど・・・やってやる。

 誰かの笑顔を守るとか、命を救うとかじゃない。

 どうしてか・・・・・・”切り裂きジャック21”を助けなければならない。

 そんな、気がしたから――。

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