第二章「王都ヨキフ」 24.2話
本日最初の投稿です。第2章も残り僅かです。これからもよろしくお願いします。
誤字報告を沢山いただきました。ありがとうございます。チェックしているつもりなのに情けないですね。
「これって、水を全部20層に流し込んでもいいのかしら」
ナタシア様が誰にともなく呟く。
「いや、全部流れてくれないと。僕達が帰れなくなる」
「そうですね。一旦岸に戻って障壁を外しましょう」
三人が魔薬を使ったので僕も使う。
全員が戻ったところで障壁を外すと、轟々と音を立てて水が降り口に流れ込んで行った。
降り口より高いところの水全てが流れるのに30分近く掛った。
「すごい量だと思うけど、階層全体に比べればわずかだから20層のどこかに流れて行っただろう。さあ、降りようか」
前人未到の20層と気負う事も無く降り口の階段を下りて行く。
20層までは中層だから魔獣も今までとそう変わらない筈だ。
もう急ぐ必要も無いので魔獣の相手は適当に分担して階層全体を探索しようか。
広さも今までとそう違わないようだ。
降りて来た階段の周りをぐるりと回り、何もない事を確認するとマーカス様は水が流れて濡れた痕が残る緩斜面を指差した。
「宝箱は次の降り口の手前にある事が多いんだろう。水の流れに合わせて下る方が降り口に近付けるような気がする」
分かりました。
今日の主役はマーカス様です。
「それでは行きましょう」
水に濡れた緩やかな斜面を4人並んで下ってゆく。
魔獣も水に流されたのか、正面方向からは現れず左右からちょっかいを出してくる位なので僕とカテリナが左右で対処している。
しばらく歩くと突き当りが大きな水溜りになっている。
その手前になんと降り口があった。
本当に今日はマーカス様の日だったようだ。
「ここまで当たると自分でも怖い物があるね」
嬉しさからか少し早足になって僕等の横並びから脱け出すように進んで行く。
やがて数歩前を行くマーカス様が駆けだした。
「宝箱だ!やはり降り口の前にあるんだよ」
「マーカス様、気を付……」
不意を衝かれた僕が声を掛けるより早くマーカス様は宝箱に飛び付いていた。
「やっぱりここは僕が開けないと……」
マーカス様が宝箱の蓋に手を掛けた瞬間、宝箱が寄木細工のからくり箱の様に本来の蓋より大きく口を開いたと見えるや、寄木模様の線から光が放たれ、『ババババッ』と大きな箱に形を組み替え、アッと言う間もなくマーカス様を呑み込んでしまった。
「お兄様ぁー!」
ナタシア様が絶叫する。
宝箱モドキはマーカス様を呑み込んだまま降り口へと後ろに下がって行く。
マーカス様を呑み込むために体を大きく拡げたためか動くたびに寄木に隙間が出来る。
その隙間からマーカス様のステータスウィンドウが覗く。
ステータスの数字も見えている。
良かった大丈夫だ。
流石は王族、咄嗟に障壁を張って最悪の事態は逃れたのだろう。
「お兄様が……お兄様がぁ」
ナタシア様の声は絶叫から嗚咽に変わっている。
「マーカス様はまだ大丈夫です。僕が確認しました。助けに行ってくるので、ここでカテリナと待っていて下さい」
「いいえぇ!私も行きます。お兄様を助けなければ」
次の投稿はお昼前後の予定です。




