第二章「王都ヨキフ」 18.2話
本日1度目の投稿です。よろしくお願いします。
「この風だと最低でも丸二日、もう少し掛かるかも知れませんね。海も少々荒れ気味なようです」
航海士に説明を受けたジェリナ様は去年の船酔いを思い出したのかげんなりとした表情で落ち込んでいた。
船が沖に出ると早速ローリングがやって来た。
聡はシケに会った事もあるので、その記憶と比べれば可愛いものだが、往きに全く揺れなかったせいもあってほぼ全員が船酔いになった。
僕は一人甲板で天地流の鍛錬をしている。
船のローリングが天地流所作の緩急を妨げようとするのを、ローリングを吸収しつつ無理なく緩急を維持出来るように形を繋げてゆく。
『これはいい』
この状況でないとできない鍛錬が天地流の対応力を鍛えるのに実に効果的なので思わず独り言が出てしまった。
同じような状況を再現できる環境か特殊な鍛錬法が必要だな。
カテリナにも体験させたいし。
王都に戻ったらゆっくり考えてみよう。
そんな訳で鍛錬に勤しむ僕は船酔いになる暇が無い。
「なんでそんなに元気なのよ」
真っ青な顔をしたウェンジィ達がせめて風に当たろうと甲板に出て来た。
元気なのは天地流を鍛錬しているからだけど、それを言っても意味が無い。
可哀想だが3人のレベルではローリングを吸収できないから鍛錬しても船酔いは防げないのだ。
「元々こう云うのに強いみたいだよ」
「フィンリーは何にでも強いからね」
ウェンジィは青い顔で僕を睨んで口をへの字にする。
男二人は口を利く元気もない様子だ。
僕は食事も立って食べられる物を頼んで夜まで鍛錬を続け、疲れ果ててベッドに倒れ込んだ。
翌日も起き抜けから鍛錬を始めて、そろそろ昼食だなと思ったところでパタリとローリングが止んだ。
「いやあ、揺れが収まって助かった。このまま収まっていてくれれば久し振りに何か食べられそうだ」
ビルマードは揺れが収まる前から酔いに慣れてきていたようで、声が明るい。
「揺れなくなったのは有り難いけど、まだ何も喉を通りそうにないよ」
「私も」
メルマディとウェンジィはホッとしてはいるが回復にはまだまだ時間が必要なようだ。
まあ、水分さえ摂っていれば2日やそこら何も食べなくても大丈夫だよ。
幸いなことに残りの航路はほとんど揺れる事が無く、ごく一部を除いて夜までには回復して夕食にありついていた。
「ああ、やっと……」
呟いたジェリナ様が夕食の山羊肉のシチューを口へ運んでいる。
やっぱり船酔いには弱かったのですね。
次の投稿は昼前後の予定です。




