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第二章「王都ヨキフ」 11.3話

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。持ち越してしまった11話の続きをお送りします……と言う程の物でもありませんが、新年に免じてm(__)m

「海ってこんな匂いがするんだな」

「ビルマードは海が初めてなんだね」

「うん」


 パナルの港は大小沢山の桟橋が海に突き出て、船荷を扱う広い石畳の集積場を囲むように数多くの倉庫が立ち並ぶ、とても立派な港だった。

早朝から何艘もの船が出入りして賑わっている。

我々一行が乗り込んだのはブルマネユ行きの大型船で、他の客の乗船完了を待って一時間程で出港した。

大陸までは通常丸二日近くかかる航程だが、今回は風向きが良いので明日の昼過ぎには着きそうとの事だった。


 幸い海は凪いだように穏やかで初めての船旅にぴったりの快適な航海になった。

今も一行の大半が甲板に出て海の旅を満喫している。

斜め後ろから射す朝日に海面がきらめいてとても綺麗だ。


「今年は順調で良かったわ」


 一行の中で唯一渡航経験があるジュリナ様が気持ち良さげに呟いた。

「去年は違ったのかい?」

同じチームの魔薬専科主席さんが尋ねる。

「去年の武闘会はアルテ開催で航程は今年よりも少し短いのだけど、海が荒れてね。皆酷い船酔いで丸一日呻うめき続ける羽目になったわ。船酔い自体は下船後に治まったけれど、武闘会ではほぼ全員調子が戻りきらなかったの。それもあって私のチームを含めて3組が一回戦で完敗。唯一勝ち抜いたバロマッド先輩も2回戦負けでパノンは散々な成績で終わったのよ」


 バロマッド先輩とは3学年魔道科首席の王孫殿下だ。

なんでも、殿下は何度か船旅の経験があって調子を崩していなかったのだけど、残りの3人が散々でそこにつけ込まれたそうだ。


 チーム4人で昼食を取ると3人は少し船室で休むと言う。

海が初めてのビルマードだけでなく、皆初めての航海で午前中燥はしゃぎ過ぎたのは確かだ。

穏やかと云っても海の上だからいつもと調子も違うのかも知れない。

僕はまったく平気なのだが。

しかたなく一人ふらり甲板に出ると、ジュリナ様が西に傾いた陽を背に海を眺めていた。


「あら、一人なのね。他の3人はどうしたの?」

 掛けてくる声が少し心配そうだ。

「朝燥ぎ過ぎたみたいです。体調に影響は無いと思いますのでご安心ください」

「良かった。気にし過ぎかも知れないけれど、去年みたいな事は無いに越したことはないもの」

「そうですね。実力以外のところで結果が左右されるのは辛いですから」

「パノンで闘技会が開かれる事は滅多に無いから、海を渡るのはいつもパノンだけなのよね。今までも幾度か去年みたいな事があったけれど、他の国の代表は海を渡る事の大変さを知る機会が少ないから多少同情はしてくれても評価は変わらないわ」

「学院長がおっしゃった『国を代表する』とはそう云う事なんでしょうか」

「うん、それだけじゃ無いとは思うけれど。去年一回戦で惨敗して初めてその意味が身に染みたと思ったのは確かよ」


 ジュリナ様は武闘会の結果が原因で当時のチームメイトとは気まずくなり、元より学科が違う事もあって今年はそれぞれ別のチームを組んでの闘技会参加となったそうだ。

「でも今年は体調万全で望めそうね。トケアに着くのが楽しみだわ。もしかすると、これも『あのベルナール』の神通力なのかしら?」

おやおや、冗談が出る程気分がいいんでしょうか。

まさか本気で思って無い……ですよね。


 ありがたいことにその後も航程は至って順調に進み、メルマディ達3人も一晩ゆっくり休んで完全に平常運転の朝を迎えた。

昨夜最低限に抑えた天地流を午前中みっちり鍛錬して、たっぷり昼食をいただいた後に

「もう半時間ほどでブルマネユの港に到着するので下船の準備を」

と船員さんが声を掛けてくれた。

夕方に12話の取っ掛かりを投稿予定です。

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