第二章「王都ヨキフ」 8.2話
本日2回目の投稿です。こちらは8話の後半になりますので、8.1話がまだの方はそちらからお読みください。
翌日は魔窟研修最終審査の日だ。審査対象者以外は学院で自習待機だったので僕は先生の許可を得て目立たない校庭の隅で久し振りにみっちりと天地流の鍛錬をして過ごした。
毎日欠かす事は無くても偶には思い切り体を使い切る鍛錬もいいものだ。
審査の結果は午後に掲示された。
ミレユイム様、クウィンツァ様、ヨーザイルとスェーニャは合格していた。
残念な事にメルマディ君は不合格だった。
「次は絶対合格してみせるよ」
戻ってきた本人はそれほど気にしていない様子でサバサバと答えた。
何でも魔薬専科の首席も不合格でその煽りで魔薬専科全体の評価が下がったと審査に関わった探究者が教えてくれたらしい。
ひょっとするとミレユイム様の不興が原因なのか?
例年最終審査の合格率は50%前後との事で初回の不合格者はほとんど次回で合格しているらしい。
メルマディ君も次の機会は大丈夫だろう。
第一学期最終課程の魔窟研修が終了し夏季休暇に入る。
僕は寮の部屋に戻って手紙を書いた。
旅費が無いのでカテリナに会いに行けない事。
資格審査に合格して探究者資格を得た事。
ガリバルディ男爵を通じてジブリット辺境伯様にカテリナの魔窟探究許可を依頼する事。
夏休みに魔窟に潜って旅費を貯める事。
そして何よりカテリナに会いたい事。
他にもガラス工房や金属工房の事、学院の人々の事など書きたいことが次々と浮かんでくる。
随分厚くなったカテリナへの手紙とは別に、ガリバルディ男爵への依頼を添えてジブリスへと送った。
翌日、駅馬車に手紙を頼んだその足で探究者ギルドに寄って登録証を作成してもらい、夏季休暇は王都魔窟に明け暮れる日々となった。
ヨーザイルとスェーニャは実家に帰ったので、たまにミレユイム様やクウィンツァ様に付き合う以外は一人で潜っている。
目的は陣図習熟度を上げる事と魔核を資金源にする事だから、到達時間や深度などの記録には拘らない。
天地流でサクサク行けば魔核は沢山手に入るけれど習熟度が上がらない。
呪文詠唱に比べると手間の掛かる陣図で連日魔獣を倒したり、内緒で跳んだり、怪我した探究者を治療したり。
ひと夏を過ごすと20余りだった陣図習熟度の平均値が50近くまで上がり、資金もジブリスまでの往復の費用を2度払っても小遣いが残る程貯まっていた。
休暇中にカテリナからの返信が届いた。
書きたい事が多すぎるみたいで纏まりの無い文章だったけど、気持ちは充分伝わる。
読むたびに僕は心が温かくなって毎日読み返していた。
魔窟についてはガリバルディ男爵が手続きをしてくれて許可証を貰える事になったので、近々領都魔窟で鍛錬が出来るようになるとの事だった。
*
「メルマディ君、ちょっといいかな?」
「どうしたの、フィンリー君」
夏季休暇の実家から戻ったメルマディ君を寮で捉まえて声を掛けた。
「学院闘技会の出場チームはもう決めた?」
「まだだよ。専科の僕等は声が掛るのを待つのが基本みたいでね」
そうか、きっと魔道科や魔術科のワンマンチームが多いんだろうな。
「魔具専科と魔道科の受験組に知り合いはいる?」
「うん、いるよ」
「実家が騎士爵家以下のメンバーを揃えたいんだけど、紹介してくれない?」
「魔薬専科は僕でもいいのかな?」
「もちろん、歓迎するよ」
「でも何故騎士爵家以下なんだい」
「うん、お上からのお達しがあってね」
「???」
翌日学院近くの食堂で待ち合わせをしているとメマルディ君が男女二人と話しながらやって来た。
「魔具専科のビルマード・エスカット君と魔道科のウェンジィ・モラリスさん」
「はじめましてフィンリー・ベルナードです。よろしく」
「はじめまして。魔術科主席さんから声が掛るなんて驚いたわ」
「よろしく、ビルマードです。本当……びっくりしたよ」
「ビルマード君はバルム伯爵家寄子の騎士爵家次男。ウェンジィさんの家はマジャン王国公爵家傍流だったけど2代前に平民落ちしてパノンに渡ったそうで、王都で金融業をしているんだってさ」
「うん、条件はピッタリだね」
「僕とビルマード君は剣が使えるから中衛も出来るけど、ウェンジィさんは入学するまで剣術の経験が無いので後衛専門になるね」
彼女のステータスウィンドウを見ると魔力は結構高い。
隔世遺伝だろうか。
「母も平民落ちの家系で血の混じりが良かったのか私も妹も魔力が高いの。だから学院に入れば貴族と縁ができるだろうって言われたわ」
なるほどね。
ご両親も子供が女子だけなので家を興すのでなく嫁ぎ先を探す事にした訳か。
おそらく金融業も上手くいって生活に問題は無いのだろう。
昼食を食べながら色々と話した。
その後学院に戻って校庭で3人の連携を確認してみる。
天地流で感じる気の流れもスムーズで上手く行きそうな感じがする。
中衛の二人で後衛をきっちりガードできれば、あとは僕がそれを崩されないようにどう前衛で戦うかだけだ。
「見たところ3人の連携も良いし、僕との相性も悪くなさそうに思うんだけど。どうかな、僕とチームを組んでくれるかい?」
学生寮の食堂に落ち着いて、僕等4人はそれぞれの顔を見渡した。
「僕は最初からその気だよ」
とメルマディ君。
「断る理由が見つからない。いいえ、是非お願いするわ」
「僕も参加したい。王都の騎士になるしか道が無いかと思っていたけれど、これを切っ掛けに何か道が拓けそうな気がするよ」
ウェンジィさんとビルマード君も前向きに応えてくれた。
よぅし、頑張ろうじゃないか!
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