第二章「王都ヨキフ」 8.1話
本日も分割投稿になります。まず8話前半をどうぞ。
魔窟を出た所でミレユイム様とクウィンツァ様が僕を待っていた。
「ジブリット辺境伯が騎士団への指導を望む程の達人だそうじゃないか」
ミレユイム様、お声が高いです。
「ヨキフ王立魔導学院、魔術科主席にして武術の達人ですか。高位主流の貴族なら、いや王族だって欲しがる人材ですね。出世を望むその他の者達からすれば妬ましい限りでしょう」
「お二人とも会って早々勘弁してください。出来れば席を改めてお願いします」
「うん、分かった。魔道科の面談室を使わせてもらおうか。じゃあ待ってるからね、フィンリー」
二人は笑顔で魔道科のグループへと戻って行った。
いやぁ、本当に心臓に悪い人達だ。
その後、最終日の合否審査への推薦者が発表された。
付き添い代表の先生が名を読み上げていく。
各科の席次上位3から4名が順当に推薦された。
ミレユイム様、クウィンツァ様はもちろんの事、ヨーザイルとスェーニャも見事推薦されていた。
そう忘れてはいけない、メルマディ君の名もあった。
残念な事に僕の名は上がらなかった。
勝手な事をし過ぎたせいだろうか。
まあ、次は真面目に取り組もう。
しばらく間があったので、今日はもう終わりだと皆が気を抜いた頃合いに。
「まだ発表は終わっとらん!」
先生が声を張る。
何故か先生も緊張している様に見える……のは僕だけなんだろうか。
全員の視線が再び先生に集中した。
先生はさらに一呼吸おいて徐に口を開いた。
「今年は無審査合格者が出た」
先生の発表に『えっ何の事』『一体誰だ』と皆がざわつく。
「フィンリー・ベルナード!」
一瞬の静寂の後、僕の周りは大変な騒ぎになった。
近しい者は皆混乱していて僕は祝福されているのかどうかも良く分からない。
ただ、研修でパーティを組んだメンバー達が、自分たちは推薦されなかったのに素直に喜んでくれているのが見えて思わず涙が滲みそうになってしまった。
涙脆いのは聡のせいなんだよ。
うん、きっとそうだ。
*
「お待たせしました」
魔道科に来るのは初めてだ。
様子が分からないので初日にパーティを組んだ魔薬専科の男子に面談室の場所を教えてもらった。
魔術科よりは専科の方が交流はあるようだ。
「いらっしゃい。僕等も帰ってきたところだよ」
「お二人とも推薦おめでとうございます」
「何を言っているんだい。史上初の無審査合格だろぅ、君は」
「何がどうなっているのか、全く分からないままなものですから」
「なんでも、護衛の探究者から続々と報告が上がってギルドマスター直々に学院へ連絡があったらしい」
ミレユイム様の言葉をクウィンツァ様が継ぐ。
「無駄な事はしなくて良いってね。まあ、無駄というより君が入ると明日の審査基準が崩壊するそうだよ」
『ああ、そうなんですか』心の中だけで呟いておく。
「それはさておき、だ。その結果に関わりなく、初日二日目の君の振る舞いを見て僕等は確信を持ったのさ。王国にとって君が非常に有意な人材だとね」
「ただ、このままでは伯爵以下の中途半端な招請合戦や、足を引っ張ろうとする下級貴族の策動に巻き込まれる可能性が非常に高い」
「そこで僕達はそれぞれ実家に許可を得て王家へ連絡を取った」
えぇぇ、何でそんな大層な事に……。
「と、いう訳で。今から君は僕等の友人になった」
『はあ?』流石に声には出さなかったが思い切り顔に出ていたのだろう。
「すでに公爵家と辺境伯家が唾を付けているから誰も手出ししてはダメだ……ってね」
「ちなみにジブリット辺境伯家にも許可は得てある。コンラッド様もアルベルムさんも君個人では無く、長男との繋がりを強めて家ごと関係を深めようとしているみたいだな。君個人を辺境伯領に押し込める気は無いとの事だ」
辺境伯領は遠い、早馬を立てたか拠点間通話の遺失魔道具を使ったのか。
どちらにしても大仰で一学生のせいでする事ではないように思う。
「だから、僕等はもう友人なのさ。これは僕等の希望でもあるけれど、王家の意向と思って間違いない。王家からすれば本当は王家と直接の繋がりが良かったのだけど、王子様も王孫様も僕達と年代が合わなくてね。流石に何の縁も無いのはあからさま過ぎるので同学年の僕等……と云う訳なのさ」
「僕への評価は別にして、ようやく筋立てが吞み込めてきました」
「それでね、早速友人の僕等から提案があるんだ」
「はあ、何でしょう?」
「明日の資格審査が終わると夏季休暇だね。夏季休暇が明けると直ぐに『学院闘技会』があるのは知っている?」
「いいえ、初耳です」
「そうか、変なところが疎いんだな。闘技会は第2学期のメインイベントでね、4人編成のチームでトーナメントを戦うのだよ。これに下級貴族以下、できれば騎士爵家以下のメンバーで参加して優勝して欲しい」
「意味が良く分からないのですが」
「侯爵家や辺境伯家が付き合いたがるのに相応しい実力を皆に認めさせようって事さ」
「出来ればその後の『四王国武闘会』でも活躍出来れば尚更効果的だ」
その後『学院闘技会』と『四王国武闘会』について説明を受け、ついでの様に学院内では呼び捨てで呼び合うように約束させられてしまった。
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