第二章「王都ヨキフ」 6.1話
今日も1話の分割投稿予定です。
入学から2ヶ月が経った。首席だからと色々役割も振られるけれど何とか無難にこなして来れたと思う。
講義については、座学の内容は正直言って基本過ぎて受けるのが退屈で困っている。
鑑定スキルが進化して陣図を鑑定で保存して分析できるようになったので単純な魔法の仕組みについてはかなり理解が進んだ。
陣図鑑定を使っている内に遺失魔法のように高度な陣図の鑑定で滲んで見えなかったところも少しずつ読めるようになって来たので陣図の接続や応用についても分かり始めたところだ。
僕とはアプローチが違うが魔術科の皆は物心ついた頃から陣図に馴染んているし基本の繰り返しには彼等もうんざりしているかも知れないな。
まあ、魔法関連以外の歴史や法律などは知らない事も多いので真剣に聞いても厭きる事は無いのが救いだ。
*
「あっ痛っ!」
「こらぁ、そこ!真剣にやらないと怪我をするぞ」
今日は剣術の実習だ。
校庭の芝生部分で実戦形式の鍛錬なのだが、真面な剣術になっているのは半数程、残り半分は剣を振り回しているだけ。
いや、そのうち4人ほどは剣を振ると云う速さでも無い。
「2ヶ月間基礎を教わってきたんだろうが。そんな事じゃ魔窟に入る事は出来ないぞ!」
そう、1学期の終わりには初めての魔窟研修がある。
「いいか、何度も聞いたろうが魔法だけじゃ魔窟に潜る事は出来ない。魔法はあくまでも切り札だと思え。剣や体術で魔獣を撃退できなければ、あっと言う間に死んでしまうぞ」
「「「「はい」」」」
先生が『剣や体術』と言ったのは僕が体術でやらせてほしいと頼んだからだ。
と云うより、剣術の初日に先生の手本を見て『あ、天地流が狂うやつだ』と判ってしまったので、何としても剣の訓練を阻止したかった。
万が一を考えてジブリット辺境伯様から『剣術御免』の書付をいただいていたのが大正解だった。
でないと先生と立ち会う事になってしまったかも知れない。
何より確実に勝てそうなので困ってしまう。
「なんで素手のフィンリーに剣が当たらないのよ」
スェーニャは御立腹だ。
「これでも実家だけでなくてキルバ家でも女子では一番だったのよ」
「まあイラつくなよ、スェーニャ。オムス家若手ナンバーワンの僕でも受け流されるのが精一杯なんだから。全くこんな自己流があるなんて、世の中は広いよ」
確かにヨーザイルの剣はこのクラスで一番だ。
それでも辺境伯家で立ち会ったアルベルト様には数段落ちる。
本気に成れば全て避け切れるんだけど大人げないから2本に1本は受け流す事にしている。
「あと2週間だろう、あの連中こんなので魔窟に入って大丈夫なのかな?」
「そうよね、学院に来るのに剣を鍛錬したこと無い人がいるなんて思わなかったわ」
推薦組は家の格に差があれどもれっきとした貴族の子弟だが、受験組には平民落ちや食い詰め貴族の子弟が本家筋の援助で合格した者も含まれている。
幼い頃から剣の鍛錬を受けるすべが無かったとしても仕方はないのだから……。
「パーティで潜るみたいだから、フォローがあれば大丈夫だろう。あと半年もすれば様になってくると思うよ、皆」
「フィンリーは相変わらず優しいのねぇ!」
「主席の余裕だな、フィンリーぃ!」
何気に話しながら二人で斬り付けて来るのはどうなんだよ。『語尾が硬いよ』と言いながら踏み込んだ二人の重心を崩して床に転がしてやった。
~聡さんの解説タイム:面倒な人は読み飛ばしてね~
魔窟研修について
魔窟は探究者ギルドに管理されており活動するためには探究者登録が必要である。
登録は成人(16歳)であることを条件としているが、特例として一定要件を満たした教育機関の研修で充分な成績を残した者は未成年での登録が可能となる。
当該の教育機関には各王国を代表する学院・学園が名を連ねており、パノン王国では王立魔導学院と2公爵領の学園の3校が認定されている。
また、貴族領内の魔窟については領主(およびその寄り親)または王家が当該魔窟限定の探究許可証を発行することが出来る。
通常魔窟研修は一桁台の浅い層(低層)で行われる。
魔窟で生まれる魔獣は一般の鳥獣を模した物から魔窟外では見られない超大型の蟲類などがあり、獣型は概ね本来の獣の数倍の強さを持ち低層から中層に出現する。
蟲型は外骨格が刃物などを通しにくく獣型より倒し難いのが常で通常は深層だけに現れる。
すべての魔獣の頂点としてドラゴンの存在が言い伝えられ、その領域は恐竜が闊歩すると云う伝承もあるがその記録は残っていない。
猛獣や猛禽と言われる種を模した魔獣は10層を超えて発生する事が多いため、一桁の層で遭遇する魔獣はそれほど強くはない。
しかし前述のとおり動物型の魔獣はモデルとなる獣の倍以上の戦闘力を持ち、犬型の魔獣でも大きな狼程度、猫型の魔獣で豹程度の強さを持っている。
魔窟研修の合否は5人未満のパーティで第10層に到達帰還が可能かを基準とする事が多い。
研修のパーティは魔道科もしくは魔術科から4名、魔具専科から2名、魔薬専科から2名の8人編成に引率の教師と護衛の探究者各1名を加えた10名から始まる。
魔導学院の場合8つのパーティが30分程時間を置いて順番に魔窟に入り、2時間の活動を3日間続けて次のステップに移る。
次は魔道科・魔術科・魔具専科・魔薬専科から各1名に引率護衛2名の6人パーティが20分置きに3時間の活動を2日間、同じく15分置きに4時間の活動を2日間行い、最後に引率および護衛達の推薦を受けた学生が新たにパーティを組み研修の判定試験を受ける。
推薦されなかった者と判定で不合格になった者のライセンス取得は次回の魔窟研修に繰り越しとなる。
~解説タイム終了~
「こんにちは、フィンリー・ベルナード君はこちらでしょうか?」
廊下から覗いた顔が僕を探している。
「フィンリーは僕だけど。何か用かな?」
「あっ……初めまして、メマルディです。魔窟研修の打合せの下準備に寄ったのだけど」
ん?メマルディ……どこかで聞いたぞ。
あっ、そうだ!
いつもありがとうございます。2度目は夕方になりそうです。




