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第二章「王都ヨキフ」 4.1話

一話が長くなったので分割して投稿します。

「ただいま、ウォルナットさん。これからお食事ですか?」


 あの後しばらくエルタラット一家と他愛もない話をしてから別れ、屋台で串焼きを買って学生寮に戻るとウォルナットさんが寮監室を出たところだった。

「ああ。いつもは外食なんだけれど、1学年の到着が思ったより少なくてね。職員にも食堂で夕食が出る事になったんだ。少し時間が早いが君も食べるだろ」

あっ、完全にうっかりして食堂で夕食が出るのを忘れていた。


「食事が出るのを忘れて屋台で串焼きを買ってしまいました。一緒に食べていただけませんか?」

「ありがたいけど、見た目に寄らず抜けた処があるんだな」

「あはっ。初日と云う事で大目に見て下さいよ」


 1階の食堂で僕達は夕食のプレートを受け取ってテーブルに着いた。

まだ夕食の時間には少し早いが職員用は早めに用意されていたようでウォルナットさんと一緒の僕もプレートを出してもらえた。

まずは僕が買ってきた串焼きに齧りつく。


「結局今日の入寮は君だけだったよ」

「毎年こんな感じですか?」

「二日前が一番多いから明日殆どの学生が来ると思うよ」

「ウォルナットさんは大忙しで、大変ですね」

「そうなんだよ、三日あるんだから上手く分かれて来てくれれば楽なんだけどね」

「今年の入寮予定は何人ですか?」

「男子が33人中22人、女子が31人中23人だよ」

「貴族の子弟がほとんどなんですよね」

「そうだね。もちろん一般人としての入学もあるけれど、本家貴族の後押しが無いと推薦枠はもちろん受験枠でも合格は難しいからね」

「僕と違って名門さんが沢山居そうですね」

「何を言ってるんだい。寮の部屋番号は出自と推薦の有力さ順だよ」

「へっ……僕が2番目?」


 単なる騎士爵の息子ですよ、僕って。


「実質、君は3番目だけどね。今年は王族が居ないので1番はパノム公爵家嫡子三男、2番がアムラス辺境伯家の次男さ。公爵のお孫さんは王都の公爵邸から通うんだけどね、辺境伯次男さんは辺境伯邸に詰めている長男と折り合いが良くなくて入寮するらしいよ」

「僕って騎士爵のしかも次男ですよ。高位貴族の息子さんも沢山居るでしょうに」

「侯爵家はたまたま娘さんでね、伯爵家は傍系ばかり、子爵家じゃあ『あのベルナール』に太刀打ち出来る訳もない、しかも推薦が辺境伯様だからね」


 あぁやっぱりお爺さんが原因なんだぁ、会った事も無いんだけどねぇ。


「ちなみに1位2位ともに魔道科だから魔術科では君が首席なんだなぁ、これが。」


 父上が貴族になってまだ10年足らず、普通なら物心付いた頃には貴族になっていた感じなんだろうけど、僕は生まれてすぐから意識があったし聡の人生を含めればつい最近の事なのだ。

まだ家族全員が家の爵位を上げるのに一所懸命なのに、周囲からこんな風に持ち上げられる場面が増えてきた。

自分の思いと周りの扱いの差に全く気持ちがついて行かない。

本当のところ評価されているのはお爺さんの家であって僕等家族の実力じゃない。

おだてに乗って甘えているとアッという間にダメになってしまうんだろうね、きっと。


~聡さんの解説タイム:面倒な人は読み飛ばしてね~

 ヨキフ王立魔道学院とは

パノン王国唯一の王立教育機関。

魔道科と魔術科、魔具専科と魔薬専科があり、各16名定員となっている。

魔道科は呪文詠唱に秀でた者、魔術科は魔陣図運用に秀でた者に対して王家および高位貴族家の推薦枠が各8名、受験枠が8名である。

魔具専科、魔薬専科はすべて受験枠である。

魔具専科は主に総魔力量に優れるが発動魔力に難のある者が魔具について学ぶクラスで、魔力消費が多い魔具発動を確認する実技と魔法や王国の歴史文物に関する筆記試験で選抜される。

魔薬専科はRPGで云うところの薬草や回復薬などについて学ぶ学科で、抽創系の発動確認と魔薬関連の筆記試験が行われる。

 三学年制で、1学年で基礎、2学年で応用を学び、3年目での研究と卒業論文もしくは卒業制作により、『魔学士』資格習得を認められる。

 王国での教育は通常家庭単位で行われてきたため親の教育レベルが子供にそのまま引き継がれるのが普通だった。

各貴族領の教育に関して王国としての定めは無く、領民の教育に関しては全て領主の方針に任されている。──王室直轄域および一部の自治都市を除く──

 高位貴族は現在、独自の教育機関を設置し自領および寄子の領地からの入学を推奨するように成っている。

入学資格は王立学院と同じく推薦と受験に依る物が多いが、教育機関の在り方や入学の定め等はそれぞれ大きく異なっている。

例えば貴族と平民の扱いの違いや平民の生業なりわいまで教育対象としているかどうか等、各貴族を取り巻く環境や思惑による隔たりが存在する。

王立魔道学院は決して王国の幹部候補生を輩出するための教育機関では無いが、課程を上位で終了した者がそう見られるのは止むを得ないところであり、貴族が各々関係者の入学を図るのも既定の路線と云える。

~解説タイム終了~



 翌日は朝から城塞裏門辺りの工房を見に行く。

特にジブリット領に無いガラス工房や数少ない金属工房(鍛冶屋ならばそこらにあるのだが)をじっくり見学したかったのだ。


「お貴族様だからって邪魔をしたら放り出させてもらいますよ」

言葉は丁寧だが金属工房の親方は気難し気で何かあれば本当に放り出されそうだ。

大人しく工房での金属加工の作業を見学していると金属会社社員としての聡の専門知識が色々と蘇ってきた。

さすが本職の事で溢れ出した知識を整理するのに少し時間が必要だったが、この世界で話しても大丈夫そうな知識を選んで少しずつ親方に質問する。

「どこぞのお坊ちゃんかと思ったが、随分詳しいじゃないか」

いつの間にか言葉使いも砕けて、少しは打ち解けてもらえたようなので頼み事を。


「少しだけ作業を体験させていただけませんか?」

「全くの素人でも無さそうだし、少しならいいか」


 簡単な作業だが溶けた黄銅を扱う事が出来たし、また来る約束も受けてもらえた。


 早めの昼食を取って向かったガラス工房の親方は更に職人気質に輪を掛けた人だったが、磁器の小品を自作だと言って取り出すと態度が一変した。

「本当に坊ちゃんがこれを作ったんですかい」

と言われたので、製法の肝を掻い摘んで話す。

「王都の磁器職人は殆ど知り合いですが、これほど真っ白で薄手の物を焼ける奴はおりません」

「教えを請いに来たので普通に話してくださいね」

「これが大量に出回ったら王都の職人は飯の食い上げですよ」

「今は僕しか作れないので大丈夫ですよ」

「どちらにしても磁器工房には持ち込まない事ですな」

「はい、気を付けます」


 この後聡の知識を加えてガラスや焼き物の話をしてかなり距離が縮んだ気がする。

もちろんガラス加工も存分に実地体験させてもらった。


「さすがあれだけの磁器を作るだけあって筋がいいです。」

「ありがとうございます。また来てもいいですか?」

「いつでもどうぞ。歓迎しますよ」


 いつの間にか夕方になっている。

ガラスの食器を何品か買って寮へと帰った。

今日は後でもう一度投稿しますね。よろしくお願いします!

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