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第一章「辺境の開拓地」 15話

昨日は沢山のアクセスありがとうございました。 と云っても今までが少なかっただけでまだまだなのですが。楽しんでいただけるようこれからも頑張ります。

 次の日晴れたので朝から小屋の前にむしろを敷いた。

麦わらは大量にあるので父さんやジョルジュさんが休みの日にあちらで二人沢山編んでおいた。

蓆の上に麻袋からコットンボールをばら撒いてゆく。

天日干しで綿のふさを乾燥させてから保管するためだ。


「こうして見ると沢山あるね」

「でも、糸や布にするとかさは減るからね。これでも作れる物は限られるよ」

「へぇ、そんなものなのね」


 天日干しの間にスピンドルを作る。

手作業で糸を紡ぐ道具だ、別の構造のもあったけど聡の記憶ではこれが一番鮮明だったし木で作り易い。

小さな板と細い丈夫な棒を用意した。

魔法で板に垂直に穴を開けて棒を通す。

実は棒も魔法製で、良く乾燥した樫をクニミツで荒削りした物を魔法で回転させて仕上げたので真っすぐ綺麗に仕上がっている。

堅い木を目に沿って使ってあるので折れたり曲がったりしにくい筈だ。

途中から少し太くなるように削った棒は狙い通りの位置で板の穴にぴったりと嵌った。

次は棒を中心に回転させた板を棒から一定の距離で切っていく。

こんな時魔法は実に便利だ。

カテリナと二人だと『回す』と『切る』を分担できるから簡単に終わってしまう。

あとは円形になった板に一箇所切込みを入れるのと、棒の太く残した端を紐が掛けられ且つ独楽の芯になる形に削るだけ。

朝飯前ではないけれど昼飯前に終わってしまった。


 昼ご飯を用意して食べると蓆を編んだ時に残しておいた太めの麦わらを取り出す。

スピンドルの細い棒を通せる物だけを選んで長さを揃えて切る。

紡いだ糸をスピンドルから外す時の芯にしたい。


 朝から日差しが強かったのでもういいだろう。

天日干しを止め同じく軒に吊るして干しておいた麻袋に詰め直していく。

乾燥したのでこのまま保存しても大丈夫な筈だ。

詰め終わると小屋の隅に積み上げていった。

カテリナは僕の作業にニコニコと僕の作業を手伝ってくれる。

なぜこんな事ができるのか聞いたりしない。

突然こんな事をするのが僕だと知っているから。


 けれど、それからは試行錯誤を繰り返した。

せっかく早々(はやばや)とスピンドルを作ったのになかなか糸紡ぎには辿り着かない。

聡の記憶は都合よくポンポン湧いて出ないので、今回は失敗も多くて綿打わたうちが出来るまでに大分だいぶ掛かった。

聡が意識して総合的に集めた情報じゃ無いものは、出て来たとしても断片的な知識である事がほとんどなのだ。


~聡さんの解説タイム:面倒な人は読み飛ばしてね~

 綿打ちはコットンボールを解きほぐす作業だ。

綿の房を手でほぐした後に弓の弦を弾いて綿を打っていく。

最初はジョルジュさんに弓を借りたけれどこの作業には大きすぎて取り回しが大変で断念し、小さな弓を何種類か作って使いやすい物を選ぶのにも時間が要った。

 綿の房から種を取り除いて種は勿論大事に保管する。

房の固まった部分が無くなるまで根気よく綿打ちを続けるのだ。

ここでちゃんとぼぐれていないと真面まともな糸が出来ない。

出来ないうちに糸を紡ごうとして何度か失敗してしまった。

 綿打ちで良くほぐれた綿を薄く引き伸ばして繊維を揃え麦わらに巻き付けてゆく。

これでしのが出来上がる。

篠とスピンドルがあれば糸が紡げる。

ここまで来てようやく糸紡ぎの準備完了だ。

 篠から指で綿の繊維を引き出して縒りながら30センチほど引き出す。

芯用に揃えた麦わらの一本の先に依り出した糸を突っ込み、糸ごとスピンドルの棒に取り付ける。

丸板の切込みに糸を掛け太い端の切れ込みにも通して左手で持った篠からぶら提げた。

更に30センチほど繊維を引き出してスピンドルを勢いよく回してやる。

スピンドルの回転で糸をり終えるとその部分を麦藁に巻き取り、作業を繰り返してゆく。

初めての事で篠一つ作業するのに大分時間が掛った。基本的には羊毛の紡績と同じなのできっと専用の道具と職人がいる筈だから、スピンドルの出番はそれまでだ。

 きれいにしておいた鍋に水を入れ温操系で沸騰させる。

紡いだ糸をスピンドルから麦藁ごと抜き取って鍋に入れる。

煮沸する事で糸の縒りがほどけにくく成る。しばらく煮てから魔法を解いて放置し、水温が下がったら絞って緩く巻き取っていく。

巻き終わった物は部屋に干す。

これが乾けば糸の完成だ。

~解説タイム終了~



 長い時間と手間が掛かったが、ようやくまともな糸が出来た気がする。

気が付くと綿花の収穫から半年以上が過ぎていた。探索や蜂の世話、何よりも天地流の鍛錬などの合間、父上達かジョルジュさんの休みどちらかだけで進めてきたので随分期間が掛かった。


 時間はたっぷりあったので、サマリーズを通じて羊毛の糸車や織機についての情報を仕入れておいた。

 森や海では聡の知識にあってこちらで使われていない染色原料を探した。

見つからない物も多いが元々こちらで利用されていない物だ。

あるだけマシだと思わないとね。

気付けば積み上げた麻袋が随分減っていた。

あと四月程待てば次のコットンボールを採取できる。それまで待つ事にしよう。


 更に糸作りに研鑽し、機織りの知識もかなり仕入れた。

実はこちらに無い織機の案をまとめ始めている。

更に染色についての聡の知識もまとまってきている。

ようやく時期が来たので、先日カテリナと今年のコットンボールを収穫してきた。


 篠を一束作り、スピンドルに繋げた物を用意する。

出来の良い糸を見繕う。綿の房が入った麻袋に篠を繋いだスピンドルと木綿糸を突っ込んだ。

昨日用意しておいた猪肉と森の野菜の包みを背負しょい籠に入れて例の『備長炭もどき』も突っ込んだ。

「行こうか」

「うん」

麻袋をカテリナに預け、籠を背負って出掛ける。


 今夜は父上達と食事の約束をした。

食事の後で大事な話があるからと、ジョルジュ夫婦も呼んでもらっている。

食事は猪の骨で出汁を取った野菜スープと姉さんのふっくらパンにメインは裏庭で炭を熾してローストした猪肉だ。塩田で作った塩を振った。

遠赤外線でじっくり火を通した肉は柔らかく仕上がって大好評だった。


 夕食後、僕は麻袋を取り上げた。

「今日集まってもらったのはこれを見て欲しかったからです」

袋から糸束と篠が繋がったスピンドルそしてコットンボールを取り出してテーブルに置いた。

「これは何なんだ?」

父上が尋ねる。

「これは綿という植物から採れた物です」

コットンボールを目の高さに持ち上げる。

「そしてこれを処理した物と、それを紡ぐ道具。最後が紡いだ糸です」

「糸が作れるのか!」

兄さんが喰いついた。

「領都から戻ってカテリナといろいろ探索していたんですが、森を抜けた先で海に出ました」

「海まで行ったのか」

「はい」

「どの位の距離だ?」

「馬の常歩なみあしで4時間程掛かります」

「分かった。それで?」

「海辺を探索しているとカテリナが、花が咲いているのを見つけました去年の事です」

「ほう」

「見たことのない花だったので何か実るかも知れないと、その後何度か通っていたら、これが採れたのです。始めはこのまま詰め物にでも使えればと思ったのですが、話に聞く羊毛の糸の元に何か感じが似ているなと思ったんですよ」

ジョルジュさんを通じてサマリーズから紡績や機織りの情報を得ていたのでジョルジュさんが反応した。

「サマリーズがお役に立ちましたか」

「はい、いただいた情報が無ければ手も足もでませんでした」

「それは何よりです」

「とにかく糸を見てください」

父上に糸束を渡す。

「おお、麻と違って滑らかな糸だな」

力を入れて引っ張っている。

「しかも丈夫だ」

「そうなのです。思いの外良い物ができたので急ぎ集まってもらったのです」

紡ぎ方も少し見せたが

「これはあくまでも素人仕事です。羊毛の糸を作る職人を呼び、道具も少し改造すれば良い布を織る糸になるのでは無いでしょうか」

「そうだな」

「それで、収穫はまた海まで行くのか?」

兄さんが尋ねた。

「いえ、海辺の分は収穫して森の小屋で保存してあります」

コットンボールを見せ、

「ここから種が採れます。海辺に自生していたのでここの気候に合っていると思います。おそらく領内で栽培できるでしょう」

「今採れた種なら来年の春に蒔けば秋に収穫できるだろうな」

「はい、それまでに小屋にある物を使って、ちゃんと紡績と機織りが出来るよう準備をしなくてはなりません」


 よしっ、これにて綿作りへの誘導作戦は無事目的達成!

もちろん、この後夜遅くまで話は続いた。

お読みいただきありがとうございます。応援よろしくお願いします。

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