第十章「悠久大陸エトポリデス」 3.2話
本日最初の投稿です。
「ツルギの改造も夜な夜な抜け出してやっていたのよね」
「そう、私達が寝ている間なのです」
「毎晩45時間」
「二月もあれば色々出来たでしょう」
操舵室や甲板の様子を眺めていたナタシアが口火を切ると続け様に声が飛ぶ。
彼女等の熟睡後にフィンリーが特大寝台を抜け出して何をしているたが興味の対象の様だ。
「うん。ツルギの改修は復路の一番最後で、カンテル出帆の前日だよ。往路は主に各王国に貸し出す魔導外洋船を造ってた。復路の半月足らずは魔量子素の組合せを色々試したりしてた」
ルイェンジの獲得で放置状態だったツルギが運航可能に成った。
それまではヤクシで出る積りでハクバはアテメアに置いて行く筈だったが、これでハクバはロブデバルに送りアテメアにはヤクシを残す事が出来る。
以前のドラゴレムの攻撃で破損したハクバだが勿論その翌日には修復済みだ。
ヤクシはマジャンに居るクリスに託して、ハクバばティオンジとジエレントがイレイナから管理を任された。
ツルギに話を戻すが、アテメアやカリフィナを離れるに当たって帆船に偽装する必要は無いだろうと思い切って帆柱を取り外す事に成った。
帆船は帆柱の位置がその構造を決めると云って間違いない。
つまり元のツルギは帆柱が在ればこその構造で、正直不便な部分も多い。
なのでフィンリーはツルギの船体外殻だけを残して内部構造は一新する事にしたのだ。
元々帆柱は船の比較的前方に立ち、その後ろがマジェンジやスキロペッテの格納部分だったのだが、これは当初マジェンジの機能が万全で無かった為船体の重心位置に格納する方が運航に都合良かったからだ。
今はマジェンジもスキロペッテもヤクシ程度の大きさまでならどの部分に格納しても運航に問題は起きないし、上位互換のルイェンジなら大型外洋船でも大丈夫だ。
ルイェンジがマジェンジやスキロペッテより一回り小さい事もあり、格納部はツルギの前方に造られた。
甲板後方部分全体に上部構造物が建ち、艫寄りが2層構造でその2階部分は操舵室だ。
1層目2層目の上部は上甲板で前部甲板から外部階段で登る事が出来、1層目の上甲板から操舵室へ入る事が出来る。
四方が大きなガラス窓の操舵室内部にも1層目へ降りる階段がある。
この1層目は続きの居間と食堂で収納可能な引き戸を開くとある程度の晩餐会にも対応可能だ。
手前の食堂から階段を降りると通路が船体の中心を艫から舳先方向へ延びており階段を降りた左手が船首方向で、向いには船底の物置に降りる階段室の扉がある。




