社畜でオタクな老人は転生でテンプレ人生を謳歌する・・のか?
初めて小説を書きます。読んで楽しんでいただければ何よりです。
「あんぎゃぁ、あんぎゃあ」
……煩いなぁ。
赤ん坊の泣き声? が耳障りで目が覚めたみたいだけど、頭の中が靄に満たされたようで意識ははっきりしない。
眼は……開いているよな。
でも何だかぼんやりしてはっきりと目に映る物は無い。体を動かそうとしても上手くいかなくてもどかしい。
何か薬でも飲まされたんだろうか。
「&%#*$¥/・@~」
誰かの声が聞こえたけどまるで意味が分からない。
ぼんやりした視野の隅から影が差してきた。
輪郭は人影みたいだけどぼんやりしたまま……と、突然クッキリ浮かび上がる物が!
『あっ、ステータスウィンドウ』
びっくりした。
と、同時に煩かった赤ん坊の泣き声がピタリと止む。
『ええぇっ、泣いていたのは私だったのか?』
ここでやっとさっきまでの出来事を思い出したのです。
私は65歳の誕生日を明日に控えた会社員、斧篠聡。
業務は全て完了し明日の退社挨拶を残すばかりで、今は整理した仕事場の私物を抱えた帰り道。
長年勤め上げた仕事を卒業した後に何か新しい生き方が待っているようで、私はとても前向きで明るい気持ちだった。
駅前の交差点で信号待ちをしていると私の横を玩具が転がって行き、それを追って幼児が道路へ飛び出そうとしている。
『止めなければ』そう思うが年のせいで体は思うように動かず、焦って前のめりになるばかり。
「危ない!」
そこへ大声が聞こえてドンと突き飛ばされた。
大柄な若い男性が幼児を抱きとめているのが視界を横切る。
私の体は男性から受けた衝撃と抱えた荷物の重さに耐えられず突き当たられた勢いそのままに道路へと飛び出していく。
激しいタイヤのスリップ音とクラクションが鳴り響いて大型トラックがスローモーションのように迫って来る……ところで意識が途切れた。
気付くと私は真っ白な空間に居た。
体の感覚が無いからきっとあのまま死んだのだろう。
死んだ筈なのに意識があるのは不思議だけれど、そんな事は重要ではない。
私は今ここで人生を終えた自分が残念でしかたなかった。
『あぁ、もっと違う生き方は出来なかったんだろうか?』とよぎる思いに
『やり直してみたいかい?』と脳裏に声が響いた。
あれ、真っ白な空間で頭に浮かぶ声……まるきりテンプレなんですけど。
「人にはこの空間を認識する能力が無いから、何もない真っ白に見えているだけだよ」
「ひょっとして貴方は神様ですか」
「テンプレかどうかは別にして、今君が思い描いている神でも管理者でも同じような物だね。それ程、君達と我等の認識には差がある」
仰せご尤もです。
「ところでやり直しと言いますと……」
「うん、まったく違う人生になるけれど、やり直す事はできるよ。どうだい?」
「生まれ変わってもそれが自分だと分からなければ意味が無いと思うのですが」
「斧篠聡の記憶を持ったまま生まれ変わる事が出来るとすれば?」
「いわゆる転生ですね。本当ならばとてもありがたいので是非ともお願いしたいです。しかし、何故私は転生させていただけるのでしょうか」
「それにはまずこの世界の仕組みから説明が必要かな。この世界はある特定の人間が与えられた役割を果たす事でバランスが取られ維持されているのだよ」
「その特定の人間が私だと」
「大勢いる中の一人だけどね」
「私の役割りはいったい何だったのでしょうか」
「それは機密事項で教えられない。けれどその役割を果たす結果が君の人生に与えた影響は教えてもいいかな」
「教えてください」
「君は個人的に関わりを深めた周りの人が不幸になってしまう特異点となっていた」
それは酷い……でも、心当たりが有り過ぎる。
「これは事実だから。この場でこれまでの事を回想するのは止そうね。僕は知っているし、切りが無くて時間が無駄になるからさ」
「はい、確かに」
「実は明日の誕生日を機にその役割を終えて、特異点からも解放された余生をずっと長く過ごしてもらう筈だったんだ」
神様は一息置いて言葉を続けた。
「ところが別の世界で調整の失敗があってね、そのとばっちりで君が急死してしまった。失敗した本人がお詫び出来れば良いのだけれど次元が違うのでこの世界に干渉すると余計に悪い影響が出る。それで代わりに僕がこうしていると云う訳だ」
「なるほど、事情は分かったような気がします。あのぅ、ずうずうしいのですが。お詫びという事でしたらテンプレな転生に付き物の祝福とかはいただけるのでしょうか?」
「ある程度、僕ができる範囲であればね。希望はあるのかい」
「うわぁ、ありがたいです。そうですね。レベルというか自分や近くの人の力や能力、物の性能や機能が分かるって云うのはどうでしょう」
「内容に限度はあるが可能だと思う。どんな形がいいのかな」
「そうですね、出来ればRPGのステータスウィンドウみたいなのが馴染み易いです」
「RPG……ちょっと君の記憶を覗くよ。ふぅん、なるほどこんな感じか。大丈夫だ。それと転生先を準備するのだけれど、君はどんな世界がいい?」
深く関わり持った人がことごとく不幸になって行く事を現実として受け止めざるを得なくなった私は、人付き合いを極力避けて生きてきた。
仕事以外の時間はほとんど一人きりだった。
それで雑誌TVやネット環境から様々な情報を見聞きする事、そしてRPGやネット小説で自分とは違う人生を経験する事、それらに有り余る一人の時間を費やした。
そしてそれこそが私の生き甲斐だった。
だからここは即答なのだ。
「剣と魔法の世界でお願いします。ある程度の才能もいただければありがたいです」
「了解した。こちらの準備が整うまでかなり時間が必要だから待て……と云っても意識が無くなるから、気が付くのは転生した後だけどね」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
『真っ白な空間も神様もよくある転生物の小説と変わらなかったし、テンプレで無双とかハーレムとかあったりするのかなぁ』そんな事を考えていたらまた意識が飛んだのだっだ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。




