お前らミートソーススパゲティーがどれだけ素晴らしいかわかってるか!? ミートソーススパゲティーは最高なんだよ。ミートソーススパゲティーはなあ、神様なんだよオラァァァーーー!! (8888) 8888
「スパゲたん……」
「ああああ! なんて素晴らしいッ! 素晴らしすぎるッ! 発狂してェエエエエエ!!!」
「うっふ♡」
「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!! うぉぉぉぉぉぉ!」
「はぁはぁ、はぁはぁ……えへへへへへ」
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!」
「あぁ……」
「俺とスパゲたんの初めては、あれだったなぁ……」
▽
「中三の時だったぁぁぁ!」
「五年前だぁぁぁぁぁぁぁ!」
叫ぶたい! 叫びたくなった! 咆哮を!
「うおおおおおおおお! ゲホッゲホッ」
「ぎゃやややや! おりゃあああ!」
テンションが上がっちまったぜ。
中三の時だった。
俺はおとっつぁんと、イタリアのレストランに行ったんだ。
「ウェイトレスさん美人だなぁ……」
ウェイトレスさんに見惚れているおとっつぁんを殴る。
「痛ッ!」
「おとっつぁん、おかんが怒るよ」
「あぁ、すまんすまん」
そういえば……。
「ねぇ、イタリアの料理って何があるんだっけ」
「あ? 知らねぇな……。ナポリタンじゃねぇの?」
「お客様、それは日本発祥の料理です」
「ウェイトレスさんありがとう!」
「あ、そうか」
「おとっつぁん何考えてんの」
「お前だってイタリアに何の料理があんのか知らねぇじゃねぇか!」
「「あぁ?」」
「早く注文をお願いします」
「当店のおすすめの料理で」
▽
違う、スパゲたんとの初めてはあれじゃないんだ。
「あれはポロネーゼ」
「くそぉぉ! 俺は浮気しねぇぇぇぇぞ!」
「いや、正しくは不倫だ! 俺たちは結婚しているんだぁ!」
「ミートソーススパゲティーとポロネーゼは違う!」
「俺はスパゲたんしか愛しねぇぇぇ!」
詳しくは、ミートソース=スパゲティー。これが正式名称だ!
「あぁぁ! なんと美しい!」
「スパゲたん! 愛してる、愛してる、愛してる、愛してるぞおおおおおお!」
▽
俺が初めてポルネーゼを食べた一週間後のことだった。
「ちっ、なんなんだよあのクソまずいポルネーゼは!」
「ポロネーゼな」
「おとっつぁんが言うな!」
「すまん……」
何なんだよ、あれ。
「あの味の薄いパスタの麺は何なんだ?」
そして酸っぱい! 酸っぱすぎるあのトマトソースみたいなやつ。
あれは食えねぇだろ!
▽
「あはははは! ユウキ君おもしろいね」
「何が?」
「食べ方だよ笑 自分で気づいてないの?」
「いや、麺だけを食べて、ソースを最後に食べるだろ? 合ってるじゃん」
「スパゲティーはね、ソースと麺を混ぜて食べるの!」
「へー」
「今度、私が作ってあげようか? ミートソーススパゲティーになっちゃうと思うけど」
▽
そう。これが俺とスパゲたんの、
「出会いだったんだぜえええええ!」
「フゥー!」
当時の俺の彼女だった、カリンが作ったミートソーススパゲティーは最高だ。
「レヴェルの高い、合格点を! ゲホッゲホッ、か、超えてくるようなスパゲたん! オールウェイズ出してくれる!」
▽
「はい、どうぞ」
「美味しいの? これ」
「美味しい、けど……」
「俺が食べたポルネーゼは不味かったな」
「私が作るミートソーススパゲティーは美味しくないって言うの? ひど!」
「まぁまぁ、食べてあげようぜ。ついでに、ポロネーゼな?」
「「おとっつぁんは消えろ!!」」
「ふぅ……」
「混ぜるんだよね?」
「うん」
そして、俺はついに食べたんだ・・!
「ぐあああああ! ぐあああああ! ぐあああああああああ!」
あの頃の、スパゲたんとの、初めては、今でも忘れられねぇ!
叫びてぇ!
「おおおおおおおおおおおりゃあああ!」
ミートソーススパゲティーが、口の中に入ったんだ。
世界が変わった。
「あ、あ、あああああ」
「ユウキ君大丈夫!? 熱かったの?」
「おぉ、ぃし」
「え?」
「美味しい!」
何これ、美味しすぎるんだが!?
麺の、あの独特な風味と、ミートソースの酸っぱさと、少し感じる甘さ。
絶妙なバランスが、俺の口の中に!
あぁ、エクスタシー!
少し感じる肉の食感も、ちょうど良くて。
「チーズ入れて食べたほうが良いんだよな?」
「うん」
「あああ!」
「ユウキ君大丈夫!? チーズ苦手だったの?」
「いんや」
手を出して、彼女を制する。
「二回目の心配は無用だ」
あの、チーズがこんなに美味かったとは!
食感もちょうど良い
あぁ、ソースとスパゲティーのデュエットが今、始まる。
この世に、こんな、美味しくて、美味くて、綺麗で、美しくて、可愛いらしくて、美人さんな、もふもふで、形が整っていて、そして、官能的で!
「ああ!」
「ブラヴァー!」
すげええええええええ。
愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛
Ilove you!!! スパゲたああんん!!!!!
「ヒック、ひ、ひ、ひ」
「ユウキ君……怖い。どしたの。心の声が全部漏れてるよ。怖い・・」
「いや、本当に美味しかったよ! ありがとう! カリンのことが好きだよ!」
俺は思いっきり彼女を抱きしめた。
「カリン! 君のことが大好きなんだ! 俺のために毎日ミートソーススパゲティーを作ってくれ!」
「私も、大好きだよ」
「あれ、さっきまで引いてたのに、もう大丈夫なんだね」
「お前が言うなよ!」
「痛ぇぇーー!殴らないでくれよぉ」
「若い子って、いいなぁ……」
「「おとっつぁんは消えろ!」」
▽
あの日から二ヶ月が経った。
「はぁはぁ、はぁ、はぁ、」
(もぐもぐ、もぐもぐもぐ)
俺はあれから、ミートソーススパゲティー以外のものを食べてない。
好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き
スパゲたん。す・き♡
「愛してる!」
「ねぇ、ユウキ君は私のこと好きなの?」
「んー? 突然なーにを言い出すんだい? もちろんさ。俺はカリンのことが大好きだよ」
「私のこと、どう思ってる?」」
「レベルの高い合格点をか、超えてくるミートソーススパゲティーを作ってくれr、痛えっ!」
「私! と! スパゲティー!」
「どっちの方が好きなの?」
「あ、あぁ……それは、どっちも大好きだよ!」
「馬鹿が! 二カ月前から心の声ただ漏れなんだよ! どっちも同じくらい好きってこと? は?」
「だってそりゃスパゲたんは、痛ッ!」
俺の頭はカリンの手によって、スパゲたんの皿に激突した。
「あ……ごめん! 手加減してなかった!」
「スパゲたんは美味しいな……えへへ」
「うわ・・顔ソースだらけなのに喜んでる・・」
「引くわぁ」
「カリンさんや、なんで虫を見ているような目で、俺を見るんだい?」
スパゲたんは美味しいのにな……。
「もういい! 嫌い! この変態が! 別れて!」
頭が真っ白になった。
「ごめん! 俺が悪かった! だから!毎日ミートソーススパゲティーを作ってくれ! 俺にはそれがないと生きられないんだ!」
「この状態でもスパゲティーのことを考えるの?!」
「あ…………」
「信じてたのに! 二度と私の目の前に現れるなこのクソ野郎!」
「せめて、スパゲたんのレシピを……。俺に、ご慈悲をくだしゃぃ……」
レシピを、顔に叩きつけられた。
▽
「はぁ……」
「カリンの作るスパゲたんが一番、美味しいんだよな……」
レシピ通りに、ミートソーススパゲティーを作った。
世界はまた、変わる。
「エクスタシィィィィ! スパゲたぁぁぁぁぁん!」
「うおおおおおおおおおおおお!」
▽
「はぁ、はぁ、はぁ」
「あーーーーーーーーー!」
「ス・パ・ゲ・た・ん・♡」
「嬉しすぎて叫びたい気分ですわ! あああああああああああああ!」
「俺の胃袋が覚えているんだ! この味を!」
そして、気づいた。
「同じスパゲたんなのに、少しだけ味が変わってる!」
「うおおおおおおおおお!」
失恋したあとのスパゲたんは、味が違うんだな。
「じゃあもしかして、テストが終わったあとのスパゲたんも!?」
授業が終わったあとのスパゲたんとか、授業が始まる前のスパゲたんとか、運動をしたあとのスパゲたんとか!
味が違うんだ!
「ちがううんんだあああああああ!」
俺の、スパゲたんの味探しの旅は、ここから始まった。
▽
「ねぇ、あの人カッコよくない!?」
「きゃああ! カッコいい!」
「身長高いし、イケメン!」
「スパゲたん! うぉぉぉぉ!」
「うめぇ! スパゲたんうめぇな!」
「大好きだあ! 愛してるよ、スパゲたん。あぁ♡」
「あ……カッコよくない、かも」
「普通、だよね」
「身長が同じくらいの人、他にもいるし」
「食ってみな、飛ぶぞ! 美味しいぜ! うふふ」
「「「「「ぎゃあああああ! あっち行って!」」」」」
▽
「最高の味だぜえええええ!」
「交通事故に遭った後に食べるスパゲたんとか、特に美味しかったな」
「末期だ・・こいつ。みんなぜっったい関わるなよ」
誰かが俺について話しているけど、そんなことなんて気にしない。
俺はスパゲたんのことが好きだ。愛してる!
「愛してるぅぅぅぅ!」
ん?スパゲたん教?
「作らねぇよ。」
「俺だけの、スパゲたん、だもんな♡」
「スパゲたあああんんん!」
「はぁとはぁと」
「ラララ〜♪」
「くそぉ」
そんなことを考えてたら、叫びたくなっちまったじゃねぇか。
「叫ぶか、どっか、広いとこで」
「スパゲたん♪ スパゲたん♪ スパゲスパゲたんたん♪ スパゲたーん!」
スキップしながら、俺が住んでいるアパートの屋上に行く。
「ママ、あの兄さん怖いよぉ、いつもニヤニヤしてて」
「見ないで! そっとしといてあげるの。早くあっちに行きましょ」
「着いたぜええええええええ!」
準備体操をするんだ、体を柔らかくして。
「そしたら思いっきり叫ぶぞ!」
「スパゲたあああああんんん、ってなああ!」
「俺の叫びはこんなもんじゃねえええんだ!」
「え……」
突然、目を奪われる。
目の前に、女神が現れた……。
どこか、妖艶な雰囲気で。その女性の手には、スパゲたんがあって……。
「も、もしかして、ミートソース=スパゲティーの神様なんですか!?」
「おいで」
その女性の容姿は、俺がいつしか夢で見ていた、スパゲたんの神様と同じものだった。
「スパゲ様ぁ!」
「え、ちょっと待ってください! どこへ行かれるんですか!? 俺にはまだ、聞きたいことがたくさんあります!」
「…………」
「待って、行かないでください! 俺はまだ、ここにいるんです! あなたに全てを捧げようとする、一人の男が!」
俺は追いかける。
「ちょっと待ってください! 俺にはまだ! あっ! え」
足元の方を見てみると、そこは、地面という地面がなくて……。
自由落下。
「スパゲたあぁぁぁぁぁんんんん! うわああああぁぁんんん!」