#7 妹とお出掛け
青空が澄み渡り、美味しい空気が流れていく。どこまでも続く空が、私たちを歓迎している気がする。
そこで私たちは二人、手を繋いで歩く。
優しいお母さんと、その子供のように。
仲の良い歳の離れた姉妹が、二人でお喋りし笑いながら歩幅を揃えて歩くように。
初恋の恋人と、心も近くに在りたくて、二人して緊張する手をどちらともなく、そっと包み合うように。
……心臓が風船みたいに破裂しそうだ。
ただ手を繋いでいるだけなのに、私の軟弱な心臓はこれだけで音を上げる。
すぐ傍で同じ状況のはずの妹は、楽しそうに鼻歌まで歌っているというのに。
呑気だけど、そんなところもまた、可愛いなぁ……。
まぁ、いいさ。
妹の笑顔が見れるならなんだっていい。
「もう、お姉ちゃん聞いてる? ほらあっち行こ!」
「ふふっ、分かったわよ。鈴音」
私をグイッと引っ張りながら、「にししっ」と、まるで嬉しさが堪え切れずに思わず出てしまったような感じで笑う妹に、どれほどこのお出掛けが楽しみだったのかが伝わってくる。
私は心の底から満たされて、微笑みながら、妹にされるがままついて行った。
お洒落な喫茶店で談笑し、美味しい紅茶を飲みながら、それぞれ頼んだケーキを食べさせ合う。
「お姉ちゃん! コッチも美味しいよ、ほら!」
「鈴音、さっきから食べさせてくれるのは良いけれど、自分の分が無くなるわよ?」
「いいの! お姉ちゃんが良ければ、なんだって良いもん!」
「まったくもう、鈴音は。ほら、口元にクリーム付いてるわよ」
「あ……ありがと、お姉ちゃ…ん!?」
「ん? どうしたの?」
「う、うんん、私の口に付いたクリーム、食べちゃうんだなーって……」
「当たり前でしょ? せっかく鈴音の口に付いたものなんだから」
「うぇ!? も、もう!! ……………お姉ちゃんはずるいよ(ボソッ)」
「ん、なにか言った? 鈴音?」
「う、ううん! なんでも無い!」
「ふふっ、おかしな子ね、鈴音は」
そこそこ大きなゲームセンターで、どっちの方が先に景品を取れるか勝負したり、多種多様なゲームを二人で協力してやってみる。
「お姉ちゃん、ただいまー戻ったよ!」
「お帰り、鈴音」
「それにしても、あとちょっとだったのにねー」
「確かに、一定の位置に着いたら急にアームが弱くなるのは少し妙ね」
「でしょ? あーあ、あのぬいぐるみ欲しかったなぁ……」
「ふふっ、ほら鈴音。これ」
「えっ! お姉ちゃんさっきの取ってくれてたの!?」
「もちろんよ。鈴音が欲しがっていたんだから、取らないにはいかないじゃない?」
「ありがとう! お姉ちゃん! 大事にするね!」
「ちょっと! 鈴音! こんな所で抱き着いちゃ……ほら、他の人が見てるわよ?」
「いいの! お姉ちゃんに、私の最大限の感謝のしるしを伝えないといけないから!」
「……そうね。鈴音」
「お、お姉ちゃ……ッ! そんなに強く抱き締めたら胸が……!!」
「ありがとう鈴音」
「え、う、ううん……私こそありがとう。……………………すき(ボソッ)」
お洒落な服屋さんに入って、お互いに可愛いと思う服装にコーディネートする。さすがに下着は、お互いに顔が真っ赤っかになってしまったので断念した。
「うん、お姉ちゃん可愛いよ!」
「そ、そう? これはちょっと肌が出すぎじゃないかしら……?」
「ううん! 最近はコレくらいだって!」
「うーん、なら買ってみようかしら」
「あっ……で、でも! もうちょっと違うやつも良いかも!」
「どうしたの? 鈴音?」
「いや、やっぱりちょっと露出多めかなって。………………お姉ちゃんの肌を他の人に見せたく無いし(ボソッ)」
「そう? ほら! なら次は鈴音の番よ!」
「う、うん。分かったー」
……………
「お姉ちゃん、着替え終わったけど……どう?」
「うん、凄く可愛いと思うわ。(ヤバい、襲いそう)」
「………ね。お姉ちゃん、ちょっとコッチ来て」
「ど、どうしたの? (近過ぎて、目が焼ける! そして良い匂いまでする!)」
「ギュッてしたら、お姉ちゃんドキドキする?」
「うぇ!? え、ええ……勿論するわよ (ヤメテ! お願いだから早く離れて! 本気で襲っちゃうから!)」
「……あ、ほんとだ。お姉ちゃん、すっごくドキドキしてる……」
「あ、当たり前でしょ、大好きな鈴音のことなんだから (あっ、鼻血でる)」
「えへへ……じゃあ、着替えてくるね、お姉ちゃん」
「わ、分かったわ。それじゃ、この服買う? 買うならレジに通しちゃうけど (あーっ、身体が熱い!)」
「絶対買う! よろしくね、お姉ちゃん。………………コレで襲えば、もしかしたらッ(ボソッ)」
「分かったわ。直ぐ側で待ってるわね (ずっと妹の側に居たいけど)」
「うん、直ぐに終わらせるから (ずっとお姉ちゃんには側に居て欲しいけど)」
そんなこんなで、他にも色々な場所へ行って、公園でのんびりして、綺麗な風景を見て、私たちの優雅で最高な一日は瞬く間に過ぎて行った。
「今日楽しかったね、お姉ちゃん」
「本当にね。また行きましょうね」
「もちろんだよ!」
「ふふっ、にしても、食べ歩きしてた時のあの鈴音の顔ったら……ぷっ」
「あーッ、それは言っちゃダメって言ってたのに!」
「良いじゃない。慌てる鈴音もとっても可愛いかったんだから」
「もう……そんなお姉ちゃんには抱き付きの刑だ! ぎゅー!!」
「ふふっ、まったくもう、鈴音は甘えん坊さんね」
「………お姉ちゃんが大好きだからだもん」
「私もよ」
「………………ね、お姉ちゃん。今日は一緒に寝ていいかな?」
「そう……ね、今日は特別よ?」
「やった! 今日はお姉ちゃんに抱き着いて寝るぅ!」
「ほどほどにね」
その後、帰り道をお喋りをしながら、肩が触れるくらいの距離で帰った。
繋がる手。
ときどき触れる肩。
優しい香り。
夕焼けに照らされた横顔。
そして何より、妹の存在。
私はその日の夜、愛しの妹に抱き着かれて、興奮して眠った。
良い、もとい、エロい夢が見れたのは言うまでも無いことだ。