1/140
001 雄鶏
はじめまして。新屋アオです。
彼の仕事は毎朝「コケコッコー」と鳴くことだった。
晴れた日には、真っ白に輝く朝日に向かって「コケコッコー」。
曇りの日には、見えない朝日に向かって「コケコッコー」。
雨の日には、雨音に負けないように「コケコッコー」。
雪の日には、震えながらも「コケコッコー」。
嵐の日だって、嵐を吹き飛ばす気概で「コケコッコー」。
この仕事を彼は誇りをもって続けていた。それは彼が鶏冠をピンと立てて鳴く姿を見れば明らかだった。
毎朝、毎朝、毎朝、彼は「コケコッコー」と何年も鳴き続けた。
そして、鶏としての寿命が近づいてきたある日、彼の雇い主が彼のもとへとやってきた。
次の日、「コケコッコー」と鳴いているのは別の鶏だった。
以前の鶏は、締めてさばいて食べられたからである。